短編:私は、彼女が、好きだった!!!

立花 優

第1話 記憶の復活

 今年のゴールデンウィークの後半、5月4日(土曜日)の午後、愛犬で今年で7歳になるチワワが、急に苦しみ出した。



 既に、この前のレントゲン検査で、膀胱内に二個の結石が確認されていたのだ。



 このワンコは、既に、今までに二回も、膀胱結石の手術をしていた。

 昨年の5月17日に、二度目の手術をしたばかりなのに。



 で、それが、午後のオシッコをした後、トイレ・シーツを見たら血尿が出ているし、その苦痛が半端じゃ無い。

 このワンコは、他人には全く慣れないが、この私を、御主人と認識しているのか、朝起きたら、最低でも30分、長い時は1時間半は、私の布団の上に来て、「撫でて」を催促しに来るので、私の愛着も、半端無いのである。



 ゴールデンウィーク中であり、近くには動物病院はあるにはあるが、ど田舎の動物病院で、レントゲンもエコー機器も無い。しかも、今日は祝日で休みときている。。



 隣の大きな市に、有名な動物病院があるが、電話で確認すると、午後4時からの診察開始であると言う。



 だが、このワンコは、既に、玄関前まで出ているのである。



「早く、病院へ連れて行って!」との、ワンコなりの必至のアピールだ。



 で、緊急治療費も余計に払う事にしても、その病院のある場所は県内でも交通事故多発地帯で有名な所なのだ。

 左半身がまともに動かないこの身障者の私の運転で、しかも気が動転しているので、とてもじゃ無いが怖くて行けそうにも無い。



 そこで、小型のタクシーを呼んで、当該、動物病院まで走った。



 午後2時、出発。



 午後2時半には、病院に滑り込みで辿り着いた。



 不思議なもので、動物病院に着くと、ワンコも安心したのか、少し、大人しくなったような気がした。



 あれ、ところでこの話は、女性の話では、と、ここまで読んで来て、不思議に思われた方も多いであろう。



 間違いなく、この物語りは、ある女性の話の「回想録」となる筈なのだ。



 だが、そのキッカケとなる、衝撃の出逢いが、直ぐ、その後にあったのである。



 何と、ワンコの診察を待っている間に、親子の二人連れが来院して来たのだが、その姿を見て、私と妻は、お互いに、顔を見合わせた程だ。



 多分、高校生ぐらいであろう女の子と、その母親が、小さな可愛い子犬を連れていたのだが、問題はその女子高校の姿や、美貌である。



 両足は完全に「真っ白」の生足(なまあし)で、ストッキングもルーズソックスも何も付けていない。しかもスカートは、膝上数十センチの超ミニスカートだ。



 風が吹けば、多分、真っ白い下着が、モロ丸見えである。

 思わず、「痴漢の気持ち」が、それとなく理解できた程だ。その超ミニスカートに猛烈に目が行ったのだ。

 それでも、何とか、「痴漢」だけは思い留まったが……。

 これまで、極、真面目に生きて来た事が、全て無に帰すのである。 

 なお、身長は、165センチ弱だろうか。

 顔も、タレントで言えば、新木優子(実写映画版『キングダム 大将軍の帰還』で、「摎(きょう)」役を演じる)似の、超絶美少女だった。



 いくら、人口十万人以上の都市とは言え、かような美少女は私の住んでいる北陸のど田舎では、まずは、存在しないだろう。



 ここがもし、東京の原宿や渋谷等なら、即、芸能プロダクションにスカウトされるであろう。

 つまり、それ程の、美貌やスタイルを、皆に、見せびらかせていた。

 と言って、彼女の顔の何処にも、奢(おご)った様子など微塵も感じられないのである。清純そのものであった。



 私は、フト、今から数十年前、人生最高のあの美人に出会った事を、思い出していた。



 だから、この物語りは、残念ながら、今の美少女の話では無いのだ。



 既に、高齢者の私に、その動物病院で見かけた美少女が、かっての記憶を思い起こさせるキッカケになっただけなのだ。



 では、私が、かって出会った、人生最高の美人とは、何処でどうして知り合い、そして、どのような結末になっていったのだろう……。



 私は、今になって、彼女との交際を、今一度、思い出してみたいのだ。



 そして、何故に、破局になったのか?



 その理由も原因も、今では、全てが理解できるのだが……時、既に遅しとは、この事だろう。



 しかし、この話だけは、死ぬまでにキチンと書き残さねばと、思うのである。



 何故なら、この私も、いつこの世とおさらばするのか、誰も分からないでは無いか?

 


 現に、私の実の弟は、十年も前に、子供二人残して亡くなっていたのだから……。


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