【ほっこり怪談】神社で出会った男の子

BB ミ・ラ・イ

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 私がその不思議な体験をしたのは、小学生の夏休みに田舎に住む祖父母の家に遊びに行った時のこと。祖父母の家は、実家から少し離れていたことで親の車で連れてきてもらい、親は一旦帰り私だけ預けられ、夏休み終わりにもう一度、迎えにきてもらうのが、毎年の流れだった。


 祖父母の家は山のふもとにあり、周りには田んぼと森が広がっている静かな場所だったけど、祖父の家には遊ぶものがなく、夏休みの間、私は毎日のように近くの神社で遊んでいた。その神社は小さな鳥居とやしろがあり、公園のような風ぐはなかったけど、その年の僕には探検するにはもってこいの場所ではあった。


 家からも近かったことで、一人で遊びにいっては神社の周りを探索したり、近くの林で虫取りをしていた。


 そんな日々が続いていたある日のこと。私はいつものように神社で遊んでいると、見慣れない男の子が声をかけてきた。彼は私と同じくらいの年齢で、短い髪をしていて、白いシャツと短パンを着ていた。彼がどこの子なんか、名前すらも知らなかったけれど、その年齢の能力なのかわからないが、まったく怖いと思うことはなく、すぐに仲良くなった。


 そして、せっかくだからと私は思い彼の名前を聞こうとしました。しかし、なんとなく聞くのが気まずくて、そのまま一緒に遊ぶことにしたのだった。


 その日は一日中、彼と一緒に鬼ごっこやかくれんぼをして遊び、疲れたら神社の境内に座っておしゃべりをした。彼はとても明るくて優しい子で、すぐに打ち解けましたことで、彼との楽しい時間はあっという間に過ぎていった。


 そんな私は、まだ祖父母の家にいることになっていたので、その子と同じ時間にまたここで遊ぶ約束をして、その場で別れお互い家に帰ることになった。


     ◆◇◆◇◆


 次の日、私は昨日と同じ時間に家を出て、同じ時間に神社に行きました。しかし、彼はどこにもいなかった。時間が早かったかと思いましたが、それから時間が経っても来ることはなく、私は少し心配になり、神社の境内をくまなく探しましたが、やっぱり彼の姿は見当たらなかった。その日は結局、彼は来なかった。私は、仕方なく一人で遊び、家に帰ることにした。


 そして、家に帰ると祖母が台所で夕食の準備をしていたので、祖母ならこの近くの子とか知っているかなと思い、彼のことを話してみることにした。


「ねえ、おばあちゃん。昨日ね、神社で男の子にあったんだけど、今日はいなかったの。この近くの子かな?」


 祖母は少し驚いた様子だった。


 「そうなのかい。変だねぇ、神社で遊んでいる子なんて、あまり見かけないけどね。その子の名前は聞いたのかい?」


 私は「名前は聞かなかったけど、でもね。すごく楽しかったんだ。それで、今日も約束してたんだけど、来なかったんだ」と答えた。


 祖母は「そう、楽しい友達ができてよかったね。でも、また会えるかどうかは分からないから、他の友達とも遊んでみたら?」と言ってきて私は少しがっかりしながらも、祖母の言うことに頷いた。


     ◆◇◆◇◆


 その後、何日かが過ぎても彼の姿を見ることはなかった。それでも、私はどうしても彼にもう一度会いたくて、毎日のように神社に通いました。しかし、彼は現れることはなかった。


 そんなある日。私は神社で遊んでいる時に神主さんと出会い、神主さんは優しい笑顔で私に話しかけてきた。


「こんにちは。いつもここで遊んでいるのかい?」


 私は「はい、夏休みの間、ここで遊んでいます。ところで、神主さん、ここで見かけた男の子を知りませんか?」と尋ねてみた。


 神主さんは首をかしげ、「この神社で遊んでいる子供はあまり見かけないけど、どんな子だったの?」と聞いてきた。


 私は彼の外見や一緒に遊んだことを詳しく話した。すると、神主さんはしばらく考え込んでから、「そうなんだ。でも、その子のことは知らないなぁ。昔は、この神社にはたくさんの子供たちが集まって遊んでいたけど、今では静かになってしまったんだよ」と言われた。


 また私は少し落胆したが、神主さんの話を聞いて、もしかしたら彼は昔ここで遊んでいた子供の幽霊なのかもしれないと思いました。しかし、それは考えすぎだと思い直し、再び彼に会える日を待ち続けることにしたのだった。


     ◆◇◆◇◆


 夏休みも終盤に差し掛かり、私は未だに彼に会うことができずにいた。そんな時だった。夏休み終盤ということで、両親が迎えにきたのだった。


 そして、両親にも私が経験したことを話すと、不思議に思った両親と一緒に、私は神社に行くことになった。


 神社に着くと、私は両親に詳しく彼のことを話した。母親は少し驚いた様子で、「その子のことをもっと詳しく教えてくれる?」と聞いてきた。


 私は彼との出会いや一緒に遊んだことを話したが、母親は静かに聞いてから、「それは不思議な話ね。でも、もしかしたらその子は昔この辺りに住んでいた子かもしれないわね」と言われた。


 父親も「そうだな、昔この辺りにはたくさんの子供たちがいたから、その中の一人かもしれない」と言った。両親の話を聞いて、私は少し安心しました。彼は幽霊ではなく、ただの昔の友達だったのかもしれない。幼かった私は、自分で妙な憶測をしてしまい、もし幽霊だったらと不安になっていたことで、両親からの一言が非常に胸に刺さったのだ。


     ◆◇◆◇◆


 それから夏休みが終わり、私は祖父母の家を後にし、自分の家に帰ることになった。学校が始まり、忙しい日々が続く中、彼のことは次第に忘れかけていた。しかし、秋の終わりに再び祖父母の家に行く機会があった。


 その時、祖母が古いアルバムを見せてくれた。アルバムには昔の写真がたくさんあり、ふと、ある一枚の写真が目に留まった。それは、祖父母の家の前で撮られたもので、そこには見覚えのある男の子が写っていたのだ。


 この子……


 そう思い驚いた私は、「この子、この子だよ。おばあちゃん、私が前に神社であった子、この子なの」そう言うと、祖母は少し驚いてはいたけど写真を見て、「ああ、この子は昔、ここに遊びに来ていた近所の子供だよ。彼はとても元気な子で、よくこの辺りで遊んでいたんだ。でも、もうずいぶん前のことだからね」と答えた。


 その瞬間、私の中で全てが繋がりました。私が神社で会った彼は、昔ここで遊んでいた子供だった。彼は幽霊ではなく、ただの昔の友達だったのだろう。


 たまたま、私が神社に行ったときに出会えて、用事か何かで帰ることになってしまったのだと思った。


 この出来事から、私は幽霊のように見えた存在が実際にはただの記憶や過去の友達であることを学び、彼との出会いは短かったけれど、忘れられない思い出となった。


 今でも時々、あの神社を訪れることがあるが、彼との思い出が蘇り、心が温かくなるのを感じる。幽霊のように見えた彼は、実際には私の心の中に生き続ける大切な友達だったのだと思うと、少し切ないが怖くはないと今の私も思っている。

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