第3話 成人の儀

あれから何時間経ったのだろう。

目が覚めると僕は馬車の中にいた。

周りを見渡すと、馬車の中には父と母、ジェナとサリーが僕を囲むように座っている。


「あ、お兄ちゃん!おはよう!」


「,,,うん、おはようジェナ。」


「やっと起きたのか。我が愛しの息子よ」


「その愛しの息子に、なんの戸惑いも無く眠りの魔術をかけた人がよく言うよ,,,」


そんな話をしながら僕はまた魔力を身に纏おうとする。

しかし、体内の魔力が霧散していくのを感じる。


「身体強化をしようとしても無駄よ?私が『アンチマジック』をかけましたから。」


母が僕にトドメの言葉を言い放つ。

しかし諦めるにはまだ早い。なにか打開策は,,,


「坊っちゃま、もう諦めてください。身体強化の使えない坊っちゃまなど私の手にかかれば3秒でサイコロステーキです。」


「クソ!この悪魔共が!必ずお前らを呪ってやる!」


「え?ジェナお兄ちゃんに呪われちゃうの?」


その時、ジェナは瞳に涙を浮かべ今にも泣きそうになる。


「ち、ちがうよ。今のはジェナに言ったんじゃないんだ。

お兄ちゃんがジェナを呪うわけないだろ。」


「,,,ほんとに?」


「ホントだよ。だから泣き止んで。」


「うん!」


こうして僕の逃げ道が塞がれたまま教会に着いてしまった。


「うわぁ〜、キレイ〜」


はぁ。ジェナがはしゃいでいると場が和むなぁ〜。

僕らだけじゃなく、教会入口で待っている司祭様たちもみんな笑顔になっている。

そんな中父が1番前にいる司祭様と握手を交わす


「本日はうちの息子のためにこの様な場所を設けて下さりありがとうございます。」


「いえいえ、こちらこそ。ドイメーン公爵様のご子息の成人の義を行えるなど光栄です。昨日は参加者を決める者達で殴り合いの乱闘が起きたくらいですので。」


え、なんか知らない内に僕のことで争われてる。

ウチみたいな家ごときにそこまでするか?


「とはいえ、全員力はあまりありませんので怪我人は少ないですし、神官ですので自分の怪我は回復魔法で治せますのでそこまで被害は出ませんでした。」


こんな世間話をした後僕達は教会の大聖堂まで案内された。

大聖堂にはたくさんの神官が左右に別れて並んでいる。

その真ん中を通り抜け、奥にいる司祭様の前で片膝をつき両手を顔の前で合わせる。


「ただ今より、ルイダ=ドイメーン様の成人の義を行う。」


それから約5分間司祭様が長々と話を続ける。そろそろ足が痺れ始めたところで神官様の話がそろそろ終わる。


「それではルイダ=ドイメーンよ、目を瞑り、そなたが欲するスキルを思い浮かべながら祈りを。」


うーん、欲するスキルか。やっぱり昔本で見た『怠惰』かなぁ。だらければだらけるだけ能力が上がるから、それを理由に一日中だらけられる。ん?


そこで僕は目を瞑っていても分かるぐらいに周りが明るいことに気が付く。そして僕が目を開くと見覚えのある白一色の何も無い空間にいることに気がつく。


「やっほー。ボクは神。実は,,,」


この青年も見覚えがある。


「あれ?君とはどこかで会ったことがある気が,,,」


え?なんで知ってるかって?


「あぁ!思い出した!」


それは僕が


「久しぶりだね。転生者君。」


転生者だからだ。

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