年上彼女のチートすぎる想い人
世芳らん
第1話 不測の事態!悲劇の出逢い!?
「くそ、チートすぎるだろ!!」
ゲーム終了を告げる画面表示を見ながら唸る。あのボスキャラ、今まで出逢った中で史上最強すぎる。これで何回目だよ!
心の中で叫んでいると
「楓!何してるの、遅刻するでしょ!」
下の部屋から母親の金切り声が聞こえてきたので、慌てて時計をみるとすでに八時前。
「うわっ、やっば!」
リュックを背負って玄関を飛び出す。最初から全力で自転車を漕ぎまくる。
高校に通い始めてから、今までと違う環境に勉強にうんざりして、登校する時間ぎりぎりまでは大好きなゲームをするというのが日課だ。ただし、こんなぎりぎりの登校は未だかつてない。遅刻は決定。と先を急いでいる俺は、交差点をよく見もせずに飛び出した。
そして右側方からきた赤い軽自動車にぶつかった。
相手はかなり減速していたのかほぼ停まっていて、軽く車のボディーに当たっただけ。それでも横から当たったので自転車は横倒しになり、俺は横向きに転倒した。
慌てたのは相手だ。車の運転席から降りてくるなり、青い顔をして
「大丈夫?」
尋ねてくる。
「だ、大丈夫です!」
頭の中にあるのは
(まずい!)
ただその単語のみ。
軽く当たったにしろ交通事故。しかも自分の飛び出しが原因ときている。自転車も交通車両。これはただならぬ事件に巻き込まれる可能性大。
俺の頭はある答えを弾き出した。
(逃げろ!)
運良く体には傷一つない。相手にしたってこんなこと公にしたくないはず。
俺はすぐさま体勢を建て直すと、目的地目指し自転車に跨がった。
「え、ちょっと君」
「大丈夫なんで」
その時見た顔はすっとした眉に、きりりとした目元、歪んだぷくっとした唇。何かキツそうな女性だな、という印象だけ。
逃げるようにその場を立ち去った。
その日囃し立てる友人に、ゲームをして遅刻したこと以外、俺は決して口を開かなかった。
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