第24話
「だからってなんで私なの?シェフのこと好きなの知ってるよね」
この男はデリカシーというものを知らないのか。
「知ってるよ?でも元カノと会ってただけでより戻すとかじゃないんだからさぁ。そんな怒らなくても」
「別に怒ってない」
心の中で自分を納得させようとする。
怒ってない。別に怒ってない…。
「じゃあなんか機嫌悪い?」
「いつも通りだけど?」
「ならいいけど…」
どうしてこんなに不安なんだろう…。
シェフが私に内緒で元カノに会ってただけで…
結構揉めてたらしいけど…
不安になる要素は揃ってるか、。
もういい。
考えたってどうしようもないんだから。
「忙しいんだから、喋ってないで働こうよ」
とりあえず今は、律の口を塞ぐことだけに集中しよう。
「今休憩中じゃん」
「じゃあ喋ってないで休憩しなよ」
少し冷たく返す。
「やっぱり機嫌悪いじゃん」
誰のせいだと思ってるんだか。
シェフに元カノ…。
そりゃ、あんなにかっこいいんだから、元カノぐらい沢山いるでしょ。
何ショック受けてんだ。
まぁ、仕事が手につくはずもなく…。
皿は落とすわメニューは間違えるわ、失敗ばっかり。
仕事終わり、シェフがいつも車で家まで送ってくれる。
私にだけ。彼女の特権だ。
なんて、いつもは嬉しくて仕事の疲れも吹っ飛ぶのに。
今日は…。
元カノにもこんなに優しくしてたんだって思ったら嫉妬して、腹が立って、余計に疲れる。
「何かあったのか?」
シェフの声に、心臓がドキッとする。
「え…?」
どうして気づくんだろう。
「今日一日様子がおかしかったから」
「それは…」
シェフが私に何も言わずに元カノに会ってるって知って、嫉妬と不安でおかしくなりそう…なんて言えるわけないし。
「あ、もしかして体調悪いか?」
シェフの優しい声に、少しだけ心が軽くなる。
「い、いえ元気です」
まだモヤモヤしてるけど、無理に笑顔を作った。
「じゃあ何か悩み事でも?」
「…シェフこそ、最近何かありましたか?」
勇気を出して問いかける。
「何かって?」
「えーっと、例えば人に会ったとか」
声が震えてるのが自分でも分かる。
「いや、なかったけど」
元カノに会ったこと隠すんだ…。
「…そうですか、」
心の中で疑念が広がる。
「なんで?」
「いや、なんでもないです。」
どうして嘘を…。
何も無いなら言えるはずなのに。
「なんか怒ってる?」
どうしてこんなに気づかれるんだろう。
「…別に」
無理に平静を装う。
「じゃあ拗ねてんのか?」
私は何も答えなかった。
「図星だな」
「それはシェフが、」
言葉が詰まる。言えない。言ってしまったら…。
「俺が?」
言葉にするのが怖い。
シェフの反応が怖い。
「やっぱり言いません」
どうしてこんなに不安なんだろう…。
嘘をつかれてシェフが分からなくなってしまった。
シェフが私のことを好きになる確率 @hayama_25
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