ぼくはキミの幻影を追いかける

宮田弘直

私の仮面

プロローグ

彼女は突然、僕の目の前から姿を消した

「私はもう君に会えないかもしれません」


場所はいつもの公園で、目の前には街中でその服を見たら思わず彼女を思い浮かべてしまう程見慣れてしまった白いワンピースを着た少女が座っている。

彼女の言葉のせいだろうか。

彼女の美しい白い肌、それが今の僕には病的に白く映り、まるで儚く消えてしまいそうに感じる。

全てがいつも通りの僕にとって優しい空間の中で、彼女の発した言葉がその空間に穴を開ける。


「突然どうしたんですか?」


僕は声を荒げてしまう衝動を必死で抑えて努めて冷静に彼女に問いかけた。


「君には今、この時まで…… いえ、今も本当は出来れば言いたくはないんですけど、隠していた事があります」


今の話の流れだとその隠し事は相当重いものだろう。

今の僕に果たして耐えられるだろうか。


「私は君に初めて会った時から、いつか別れを切り出さなければいけないことは分かっていたんです」


そこまで言うと彼女は俯いて拳を握った。

しばらくすると、重そうに口を開く。


「でも、言えなかった。君と話すと優しい気持ちになれました。とても愛おしい気持ちにもなれました。そんな気持ちをくれた君との関係を私の言葉で壊す事はとてもじゃないけど出来なかった」


彼女は大きく息を吸った後、深く頭を下げた。


「私はまた君に甘えてしまっている。君をまた傷付けようとしている。本当にごめんなさい」


彼女のその懺悔の言葉に僕は戸惑った。

優しい気持ちも愛おしい気持ちも思い出させてくれたのは彼女だ。

救ってくれたのは彼女だ。

一回も僕を傷つけた事なんてない。


「会えなくなる理由はなんですか? もし引っ越しなら僕が出来るだけ会いに行きます」


彼女は悲しそうに首を振った。


「違います。それに理由を伝える事はできません。言えば、また君は自分の事を無力だと責めてしまう」


理由を言えない事もそうだが、『また』とはどういう事だろう。

僕は彼女の事で自分の事を無力だと感じた事はない。

何かおかしい。

僕は何かを見落としているのだろうか。


「もしそれでも、こんな私でも、君がまた私に会いたいと思ってくれるなら……」


そう言いながら彼女は僕の手を握った。

その瞬間、僕の頭は酷い痛みに襲われる。

その痛みの中で三人の少女の顔が突然浮かんできた。

その顔はどれも見覚えがないが、まるで何度も会っているかのように鮮明に浮かび上がってくる。


「この三人の女の子を助けてあげてください」


「どういうことです? 全然意味がわかりません!」


「残念だけど、時間です」


そう言って彼女は涙を流しながら僕を見つめる。


「君にまた会えて良かった……」


「ちょっと待っ……」


僕は言葉を最後まで言い切れなかった。


そして、彼女の姿は僕の目の前から一瞬で消えた。


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