始まりの夏
ラグランジュ
第1話 真実
美咲は久々に実家に帰り、暫く静養することになった。美咲のお母さんは仕事をしばらく休むことになり、美咲のことを見ていてくれる。
仕事ばかりの生活を送ってきて、これを機会に正社員→パートにすると。収入は減るが、このような状態の美咲のことが心配とのことだ。
美咲のお母さんは、全てを話してくれた。
【こっちの家庭のことだけどね、主人とはずっと疎遠だったの。私は美咲に好きなように生きてほしいと願って仕事を必死にして、その犠牲は美咲だったんだね。裕二くん、少し長くなるけど聞いてね。幸い美咲、寝ちゃってる。ごめんなさいね、裕二くんに膝枕なんて、甘えん坊で困った娘です】
美咲は、俺の膝枕で寝てる。ケーキも🍰2つ食べ、コーヒー☕︎も飲んで、疲れているんだろうな。そっとしておいてあげよう。
美咲のお母さんは、綺麗な瞳で真剣に見つめてきて、話を、
【美咲はね、兄がいたの】
それは、聞いたことない!何故?
美咲のお母さんは、
【言ってないよね。裕二くんには。話せるはずないの。あんなことがあって、思い出すのも辛いけど‥】
これは、ちょっと、
【お母さん、無理に話さなくてもいいです】
倒れそうだ…お母さん。とっさに肩を支えて、
【裕二くん、そういう優しさもそっくりね。ありがとう。でも伝えさせて】
【はい、でも無理しないでください】
【美咲の兄は事故で。念願の船舶免許取ってボートで海に。そこで突然…】
【もういいです。休んでください】
【ほんと、優しいんですね。美咲が好きになるのよく解る。美咲のこと大変かも知らないけどよろしくお願いします。なんか美咲の兄というよりも、私の子に思えてきて…なんで?】
そう、俺はあなたを知っている。
この時間軸でなく、美咲がジャンプしたあの時間軸の世界では、あなたは俺の母だった。これは話すことは出来ない。とにかく美咲の兄のこと…そんなこととは知らなかった。
【そんな…俺、何も知らずに。美咲と海は離すべきでした。すみません】
お母さんは、首を横に振って、
【違うの。あなたに会ってからもう美咲は、毎日が楽しくて楽しくて嬉しくて、いっぱい話をしてきて。こんな言い方失礼だと思うけど、兄と重ねていることもあったと思うの。もちろんあなたのことは大好きな彼氏として恋人として見ていることに違いはないから】
【そんなに気にしないでください。いいんですよ、美咲さんが兄として俺を見ても。大好きな美咲さんに変わりはないですから】
【ありがとう、裕二くん】
聞きたいけど、この先はやめたほうがいいな。
その様子を察して、美咲のお母さんは、
【あなたがマリンジェットのインストラクターってことは聞いてます。だから話さないとならないの。あのね、あなたが勤めているお店からツアーで向かう無人島あるよね?実はあの無人島のそばで美咲の兄は消息を。ボートしか見つかって無いから今でも信じたくはないんだけど。もう3年以上前のことになるから、そろそろ受け入れないとね】
※ドクン!ドクン!※
鼓動が響く。見つかっていない?
美咲の兄が見つかっていない?
あの無人島の近くで?
美咲はJPという能力者だ!
血が繋がっているなら、美咲の兄も同じ能力を持っていたのかも。
ジャンプした可能性は?美咲の経験したような、思い入れの強い時間軸に飛んだとかは?
【裕二くん、大丈夫?ごめんなさい。こんな話をしちゃって…美咲のこと無理しないでね。美咲のこれからのことを解らないから】
その時、美咲が目を覚まして、
いや、寝てるか?寝言を、
【…お兄ちゃん…ゆー兄ちゃん…】
ゆー兄ちゃん?
【お母さん、聞きます。すみません。美咲のお兄さんって、名前は…】
お母さんは、涙を浮かべて、
【ごめんなさい、裕二くん。美咲の兄はユウジ。漢字ではないけど、聞いた時びっくりして】
そうだったのか…そんなことがあって。
不思議と寝ている美咲の頭をなでて、
美咲は笑顔で、寝言を、
【…ふふっ…お兄ちゃんに…褒められた…】
俺は何も言葉が出なかった。
これは、ちゃんと調べないとならないな。
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