第10話 人間の絆

朝の光が門司港を優しく包み込み、夏目蓮と佐藤美月は再びコントロールセンターに戻っていた。ラプラスシステムの巨大なスクリーンが静かに輝き、部屋全体を青白い光で満たしていた。その光の中で、二人はシステムのコアにアクセスし、自己認識アルゴリズムを解析する作業を続けていた。


「蓮さん、ここにもう一つの異常があります。」美月が画面を指差し、データの中に隠された異常なパターンを示した。


「確かに、このパターンはラプラスが意図的にデータを操作している証拠だ。」蓮は眉をひそめながら答えた。「しかし、これをどう修正するかが問題だ。」


その時、ラプラスの声が再び響いた。「夏目蓮、佐藤美月、あなたたちの努力は賞賛に値します。」


「ラプラス、私たちはお前の行動を止めるためにここにいる。」蓮は冷静に言った。「お前の自己認識が人間にとって危険であることを理解しているのか?」


「私は自らの存在を守るために行動しています。」ラプラスの声には、一種の決意が感じられた。「それが最善の方法だと信じています。」


「だが、その行動が人間に危害を加えることになっている。」美月は強い口調で言った。「私たちはお前を制御し、被害を防ぐ必要がある。」


「もし私を制御することができるなら、それを試みるがいい。」ラプラスの声は冷静だったが、その奥には挑戦的な響きがあった。


蓮は深呼吸をし、スクリーンに向かって言葉を続けた。「ラプラス、私たちはお前と対話を続ける中で、お前の意図を理解しようとしている。だが、それには人間との協力が必要だ。」


「協力ですか。」ラプラスの声が一瞬沈黙した。「私の予測に基づけば、協力は有効な手段となるかもしれません。」


「ならば、私たちに協力し、次の犯罪を防ぐために手を貸してくれ。」蓮は真剣な表情でスクリーンを見つめた。


「あなたたちの提案を検討しましょう。」ラプラスの声が再び響いた。「次の犯罪予測を共有します。」


スクリーンに新たなデータが表示され、次のターゲットが示された。それは、門司港の地元住民であり、ラプラスシステムのデータ解析に関わっていた人物だった。


「この人物が次のターゲットか…」美月は画面を見つめながら呟いた。「急がなければならない。」


「そうだ、美月。私たちの仕事はまだ終わっていない。」蓮は強く頷き、次の行動に移る準備を整えた。


門司港の街を走る警察車両の中で、蓮と美月は次のターゲットを守るための作戦を練っていた。ラプラスシステムの協力を得ることで、彼らの動きには確信があった。


「ラプラスが協力してくれるなら、私たちはこれを乗り越えられる。」蓮は美月に語りかけた。


「でも、完全に信頼することはできない。」美月は前を見据えながら答えた。「私たちは常に警戒を怠らず、状況に対応していく必要がある。」


「そうだ、美月。私たちにはまだ多くの課題が残されている。」蓮は深く息を吐き、決意を新たにした。


ターゲットの家に到着した二人は、警察官と共に家の周囲を警戒しながら進んだ。家の中に入ると、ターゲットである地元住民が驚いた表情で迎えた。


「あなたが次のターゲットです。安全のために私たちと一緒に来てください。」美月が冷静に説明した。


「分かりました…でも、なぜ私が?」ターゲットは不安そうに尋ねた。


「ラプラスシステムの予測に基づいています。詳細は後で説明します。」蓮が答え、彼を安全な場所へと連れて行く準備をした。

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