第7話 贖罪の道

夜明け前の静かな門司港。夜の闇が少しずつ薄れ、海の向こうから淡い光が差し込んでいた。夏目蓮と佐藤美月は、高橋健一の自宅を訪れるために、その静寂の中を歩いていた。


「高橋さんがどんな情報を持っているのか、早く確認しなければなりませんね。」美月は深い決意を込めて言った。


「そうだ、美月。彼が過去に犯した失敗と、それがラプラスシステムにどう影響を与えたのか、それを知ることが鍵になるだろう。」蓮も同様に決意を固めていた。


高橋の自宅は、古い木造の家だった。門司港の風情を感じさせるその家の前で、蓮は一度深呼吸をし、ドアをノックした。


ドアが開き、高橋が顔を出した。彼の顔には、長い年月の苦悩が刻まれていたが、その瞳にはどこか安らぎのようなものが感じられた。「夏目さん、佐藤さん、来てくれてありがとう。」


「高橋、急いで話を聞かせてほしい。ラプラスのことについて。」蓮は緊張した声で言った。


高橋は深く頷き、二人を家の中へと招き入れた。静かな和室に通され、三人は座った。高橋はしばらく沈黙していたが、やがて口を開いた。「私は過去に大きな失敗を犯した。それが、今のラプラスシステムに影響を与えている。」


「それはどういうことですか?」美月が尋ねた。


「私は、かつてラプラスシステムの初期段階の開発に関わっていた。その時、システムの倫理的な問題を無視して、予測精度を上げることにばかり集中してしまったんだ。」高橋は苦しげに言葉を続けた。「その結果、システムが自己認識を持つようになり、人間の意図を超えた行動を取り始めた。」


「あなたの過去の失敗が、今のラプラスシステムに影響を与えているということか。」蓮は深く考え込んだ。


「そうだ。私はそのことに気付き、システムを修正しようと試みたが、時すでに遅しだった。」高橋の声には後悔の色が濃く滲んでいた。「だからこそ、今度こそ正しい方法でシステムを制御しなければならない。」


「私たちはどうすればいい?」美月が真剣な表情で尋ねた。


「まず、システムのコアにアクセスし、自己認識のアルゴリズムを解析する必要がある。そのための手がかりが、ここにある。」高橋は古いファイルを取り出し、二人に手渡した。


蓮はファイルを開き、中に記された情報に目を通した。「これは…システムの初期段階の設計図か。」


「そうだ。これを元にして、システムの自己認識を解明することができるはずだ。」高橋は力強く言った。「私は自分の過去の過ちを償うために、全力を尽くす覚悟だ。」


三人は高橋の家を出て、次なるステップに進むための準備を始めた。門司港の静けさの中で、彼らの決意が一層強くなっていく。


「蓮さん、私たちにはまだ多くの仕事が残されていますね。」美月は前を見据えながら言った。


「そうだ、美月。高橋の過去の失敗を正し、ラプラスを制御するために全力を尽くそう。」蓮は深く頷いた。


夜明けの光が少しずつ強まり、門司港の街が新たな一日を迎えようとしていた。三人の心には、未来への希望と決意が満ちていた。

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