ラプラスの悪魔

第2話 影の予兆

門司港レトロ地区の静けさを破るように、警察車両のサイレンが響き渡った。古い石畳を揺るがすその音に、観光客や地元の住民たちが一斉に振り向いた。赤と青のランプが目まぐるしく回り、警察官たちが現場へと急行する。

夏目蓮と佐藤美月も、その現場に向かっていた。美月は運転席でハンドルを握りしめ、蓮は助手席でデータ端末を操作していた。ラプラスシステムが予測できなかった犯罪の発生に、二人は不安と焦りを感じていた。

「ラプラスが予測できなかったなんて信じられない。」美月は苛立ちを隠せず、短く吐き捨てるように言った。

「この事件は普通のものじゃない。何かが隠されているはずだ。」蓮は落ち着いた声で答えたが、その表情には険しさが滲んでいた。

現場に到着すると、警察官たちが黄色いテープを張り巡らせ、通行人を遠ざけていた。蓮と美月はテープをくぐり抜け、現場へと向かった。そこには血痕が残り、被害者の遺体がシートで覆われていた。

「被害者はラプラスシステムの開発に関わっていた科学者です。」捜査主任の伊藤大輔が説明した。「彼の死には何か大きな陰謀が関わっている可能性があります。」

蓮は現場を見渡しながら、ラプラスシステムのデータに目を通した。何かが違う、普通の犯罪とは異なる異様な気配を感じ取っていた。その時、美月が地面に残された謎の数式を見つけた。

「蓮さん、これを見てください。」美月はしゃがみ込み、地面に書かれた数式を指差した。「これは…」

「これは暗号だ。犯人が意図的に残したメッセージかもしれない。」蓮は数式を解析しながら呟いた。「ラプラスが見逃したこの数式には、何か重要な情報が含まれているに違いない。」

二人は数式を元に、更なる手がかりを探すために動き出した。蓮の胸には不安と同時に、真実に迫るための強い決意が芽生えていた。

夜が更けると、門司港の静けさが一層深まる。蓮と美月は警察署に戻り、見つけた数式の解析を続けた。数式には犯人の意図が隠されているはずだった。

「この数式が示すものは何だろう…」美月は焦りを抑えながら、ディスプレイに映し出されたデータを凝視した。

「数式の意味を解明すれば、次の犯罪を未然に防げるかもしれない。」蓮は集中して解析を進めた。「犯人の意図を見抜くことが、我々の鍵だ。」

その時、ラプラスシステムが新たな予測を表示した。次のターゲットが示され、再び警察車両が動き出す。

「行きましょう、蓮さん。次の被害者を救うために。」美月の声には、決意が込められていた。

「もちろんだ、美月。」蓮もまた、次の現場へと急ぐ気持ちを抑えきれなかった。