第4話


顔面に生臭い鮮血を流しながら、服は破れ、血が見えている。

「あの、怪我大丈夫ですか」

見てるだけで痛そう。言った途端、男と目線が合った。

「……あぁ。少し包丁が掠れただけだ」


「それなら良かったです。それにしてもあのバケモンは何なんでしょうね、一瞬で終末都市ですよ」

「この状況だと、自宅に戻ることも困難だな。これから長い期間、救助が来るまで避難生活が続きそうだ」


男は、瓦礫に腰を掛け、深くため息を吐いた。


「そうですね。自分結構近いから良いんですけど」

近いと言っても、ここから電車で三十分程度。だが、男は雰囲気からして沖縄とか北海道などの遠い県に自宅がありそうだ。


「そうか……俺は徳島から出張で東京に来たんだが、毎日東京都を見れるとは、羨ましい。そのこともあって、俺は救助が来るまで、食料が足りるかどうかが問題なんだが、生憎このリュックサックにはカップラーメンが三個しか入っていない。少なくとも明後日には食料が尽きる。それからは、食えそうな化け物を狩る必要がありそうだ」


「いや、そこら辺の商品は盗み放題なんで、それで食糧不足は回避ですw防犯カメラも作動してないと思います」

「はははっ………あんた、窃盗をすれば、化け物を狩らなくて済むのか。この状況じゃあ、警備も浅いからな」


「それ以外に、生き残るすべは無いと思います。神戸牛も食べ放題ですね」

「あぁ。俺はこれから、取り敢えず徳島の自宅まで歩こうと思う。武器も、食料も、道中で購入する予定だ」

約633kmを徒歩とは、無謀のように思えるが、この男は、バキバキの筋肉に覆われた身体を持っている。

「で、海はどうするんですか……?」

「明石海峡で繋がっている」

「知らなかった……でも化け物に壊されてそうですよね」

「ははっ……それだったら泳いで渡るしかなさそうだな。かなりの、長旅になりそうだ」

「そ、そうですか……それって、人間の業ではありませんよww」


「そうか。まあいい、あんたにこれをやるよ」

男はそう言って、黒のトランシーバーを俺に渡した。

真ん中には、数字の表示された画面がある。それと、思ったよりも太いアンテナだ。

「これは、簡易業務用無線機。少なくとも5km以内なら離れていても通話が可能だ。俺達以外、近くに生存者は残っていないかもしれないからな。」

俺は深く頷き、動くはずのないバケモノの屍を睨みつける。

「日常を。畜生」

俺は中指を立て、俺は決意した。バケモノを鏖殺してやる、と

「まあいい、また何かあったら連絡してくれ」

俺はコクリと頷き……

「それではまた。何処かで会いましょう」

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