第3話 機動装甲騎

「かんぱーい!」


夜 ギルドは夕闇に染まる頃、酒場となり冒険者たちは飲食を楽しめるようになっている。 あちらこちらで酒をあおり、給仕さん達にセクハラをしてはっ倒されている。




ちなみに受付嬢さん達が給仕をしている。いつもの受付嬢の制服ではなく給仕の制服 レストランのアルバイトが着てそうな制服を着ている。 ミニスカートや胸元を大きく開けていたりそれぞれの個性がでている


…こうして見ると様々な種族がいるんだなぁ…耳が尖ったエルフ 身長が小さいドワーフ 鱗に覆われているリザードマン 獣耳の獣人…のおっさん




オレ達も食事をしている。ミタマが酒を一気飲みしている。 さらにもう一杯追加で注文している。




「おねーさん!焼酎ちょうだい! あとたこわさと焼き鳥もねー!」


オヤジかこいつは。




「でっなんの話だっけ?」


頬を赤らめ上機嫌のミタマ


「いやだから もう少しまともな武器くれよ 例えばそう 銃とか」


ここは地球より遥に進んだ文明の世界なのだ そもそも近接武器一本でやっていこうというのが無謀だよ




「えー? うーん精神力をくらって撃ちだす奴とかかなぁ?あっでもあれって左腕に仕込むやつだから一回切り落として義手にしなきゃだけど」


「いやだよ!」




「あるいは…弓?魂削りながら必殺と書いて必ず殺す弓とか?」




「もっとまともなのねーのかよ! 呪いの武器ばっかじゃねーか!」


「もういいよ ここにだって武器屋はあるだろうし、適当に銃とか選べば…」




「わがまま言うわねぇ 大体神から与えられる神器やスキル、才能は一人一個ってのが天界規定なんだからね まぁ バレなきゃいいんだけど」


結構緩いな天界規定


「めんどくさい規定よねぇ 誰がそんなもん作ったんだか……私だった あははは!」


規定や決まり事を決められるってそれって凄い事では?…もしかしてミタマは凄い神様なのか?




「そうだ!どうせだったら機動装甲騎がいいな!」


機動装甲騎 全長15~18メートルにもなる人が乗るロボット 宇宙戦艦からレーザーやらミサイルが発射されて戦う戦場で、制宇権を奪うために大活躍している。




ああいうのに乗るのが男の子の夢だよな!


この星は田舎で戦場で戦うような機動装甲騎は見ないが 工事用の奴は見たことがある。






オレは右手につけてあるブレスレット型端末を操作する この端末はギルドに登録した時に支給されたもので個人情報やらその他ネットワークに接続して情報を引き出すことも通信機能もついてる優れものだ。 こういうのは田舎の星でも地球を超えたテクノロジーだよなぁ




機動装甲騎の画像がホログラムとして目の前に出てくる。あーやっぱかっこいいわぁ。


…がっその値段は飛び出るように高い!


だよなぁ そうだよなぁ。




今だボロアパートで六畳の部屋を借りているオレ達には無縁な代物だった。


「おねーさん! オレにもビールちょうだい!」


やけ酒というのをしてみようとした。


「あんた未成年が…」


「おっと知らないのか?選挙権は日本では18歳からだ。つまり先日誕生日を迎えたオレは大人扱なのだ!」


「えっそうなの?」


ちょろい 選挙権があっても18歳の飲酒は日本ではダメです。


あーでも機動装甲騎欲しいなぁ…




「ねーねーそろそろドラゴンでも倒しに行かない? こうばーっと倒してがーんとレベル上げましょうよ」


おっとコイツはなにを言っているのだろう?


「オレが倒せるわけねーだろ 逆に食われちまうよ」


「うーんうーん何か方法はないかしら?」


両手を頭にのせてうーんうーんとうなるミタマ


「そうだ!私がぎりぎりまでしばき倒すから止めはあんたがすればいいのよ!」


「それだ!!」


普通、そんなのは卑怯だとかチートダメ絶対とか物語の主人公は言うのだろうがオレは違う!


楽な道があるならそっちに行くのだ!




 




「あっでもドラゴン討伐なんてそうそう依頼なんてないんじゃないのか?」


「ありますよ」


突然オレ達に話しかける人影があった。


見ると、燃えるような長い赤毛の女が立っていた。


お嬢様といった雰囲気がある。こんな場所に似つかわしくないな。それが第一印象だった。


スタイルもいい。宝石のような緑色の大きい瞳がオレを見ている。


ぷっくりとしたピンク色の唇に 大きい胸に丸みを帯びたお尻、それでいて腰はきゅっとしまっている。年頃はオレより二つ三つ上だろうか…。






オレ以外にもじろじろと舐めるような視線で彼女を見ている冒険者たち。


そんな視線に気づいてるのかいないのか かまわず彼女はオレ達に名乗った


「失礼、私はアイリス・エル・クラエスト。親しい者はアリスと呼んでいます。」


ざわっ 彼女が名乗った時、なにかざわついたような感じがした。 なんだ?




「私はこの星を帝国から預かる領主の娘ですが…見分を広めるため冒険者登録もしているのですよ」




つまりお貴族様という奴だ。 そんな人が一体オレに何の用だろう?


「私は天之御霊乃大御神 長いのでミタマとお呼びください。」


立ち上がり、カーテシーという挨拶をするミタマ 妙に様になってる。おぉ こんな事もできるんだな。


「あっオレは八神一真ともうしまひゅ。」


「…」


「…」


かんだ …


「それで?こんな田舎星の田舎貴族が私たちに何の用?」


おまえっ!10秒ともたねーのかよ! 忘れてたがべろんべろんに酔っぱらってたな


「すいません!後できつくしかっておきますから!」


ミタマの頭を掴んで何度も謝らせる。


「いっいえ ここでは冒険者アリスと接してください。」


こほんっと咳払いをしてアリスは続ける




「先ほどのドラゴンの討伐ですが、 あります。というよりうちの家で討伐依頼を出しているのですが…依頼を受けてくれる人がいなくて…どうしようか父も困っていたのです。」


「私設軍も出す案もあったのですが、今帝国は魔王軍との戦争の真っ最中 当家からも軍を派兵していてそんな余裕もないのです。」


この星を含む王国や亜人の国はほぼ全てが帝国の属国か同盟国で魔王の一人と戦争中、旗色はかなり悪いらしい。




「あなたがドラゴン討伐を受けてくれるのであればぜひ私もパーティとして同行させて欲しいのです!!こんな機会めったにありませんから!」


「あーでも残念ながらオレの冒険者ランクでは受けられないでしょ ドラゴンといえばSランククラスが受ける依頼と聞いていますし…」




さっきまミタマの作戦で乗り気だったが この人が付いてくるなら話は別だよ。


ミタマがほとんどしばいた後でオレがとどめだけ差すの見られるなんて…さすがに恥ずかしすぎる!!!


「確かにランクはある程度の基準になるでしょう。しかしそれが全てではありません。低ランクでも強者がいると聞いたことがありますし…それにあなたは勇者の称号を持っていますね」




「私は鑑定の魔法も持っていますから…それに低ランクの事もなんとかしましょう。私これでも貴族ですから!」




権力万歳。


くそ 逃げられねぇ!




オレはしぶしぶアリスの提案を受けたのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る