第2話 砂ミミズに追われています

見渡す限り砂漠と岩。




太陽の日差しは強く肌を刺す こんな場所出来ればいたくない。 そんな場所をオレはひたすら走っていた。




日差しから身を守るためのフードを被っていたが全速力で走っているので顔があらわになり熱風と強い光が肌を焼く。だがそんな事にかまっていられない


ゴゴゴゴゴゴッ


地鳴りがオレのすぐ後をついてくるように迫ってくる


砂塵を巻き起こしながら ソイツは現れる 地中を住処にしているため、目は退化しているのか小さく 巨大な口がら鋭利な牙を覗かせる


「無理!こんなの倒せるわけないだろぉおおおお!」


数メートルもある巨体をうならせて今にもオレを丸のみしようと近づいてくる。






「招雷」


凄まじい音と共に閃光がサンドワームを貫いた 黒こげになって辺りに異臭を放ちそのまま動かなくなった。


「なさけないわねぇ そんなミミズぐらいで経験値積まないとレベル上がらないわよぉ」


右手の人差し指から小さな煙を出しながらミタマは呆れながら言った。




「おまっふざけるなよ レベル15のオレにあんな化物倒せるか!」


「その神器使えば簡単じゃない」


ミタマの言う神器とはオレの腰に差してある 豪華な宝飾がされている美しい刀。


名を天羽々斬あまのはばきり


日本神話にも出てくる神剣らしい。オレは神話の事はよくわからないが…。


「そうだぞ主よ 我を使えば古今無双の達人になれるものを…」


天羽々斬剣は意思を持ち、話す事ができる…


「絶対いやだ もうお前を使う事はしないからな」


オレはこの刀を使うのを嫌がった


「まぁ 失礼しちゃうわね あなた」


刀を治める鞘までも意思を持っている… きもちわりぃ






なぜ…オレがこの刀を使うのをためらうのか…それは一週間前にさかのぼる…




この星に降り立った時、最初に訪れた街でオレは冒険者登録を済ませに冒険者ギルドを訪れた。


必要な事だとミタマが言うのでその指示に従ったんだけど…




ちなみに地球にいた時のボロボロの服はすでに捨ててあり、ミタマが魔法陣から出したジーパン 黒のシャツを着ていた 便利だな


「ようこそ冒険者ギルドへ 冒険者の登録ですか?」


受付のお姉さんはとても利発そうで藍色の髪を後ろでまとめていて 眼鏡をかけていた…オレはその美しさもさることながら、けしからん胸元に釘付けとなった。 




「ちょっと一真 ちょっとぐらい大きいからって凝視しすぎなんだけど 女ってね そういう視線に気づいてるんだからね 気づいてるけど気づかないふりしてあげてるんだからね! あまりにも露骨に見てるとおまわりさん呼ばれちゃうわよ」






ミタマがジト目で言った。




「みみみみ見てねーし!」


しどろもどろしているオレを見て受付嬢さんは苦笑した


「では冒険者登録する前に鑑定させていただきますね。」


そういうと眼鏡をくいっと上げる 受付嬢さんが言うにはその眼鏡には人を鑑定する魔法が付与されているらしく 冒険者カードを作るに際、とても役にたつのだそうだ




レベル2


体力B


俊敏力C


魔力C


知力B


幸運B


種族 人間


名前 八神一真


性別 男


年齢 17歳


「はい登録終わりました これが一真さんの冒険者カードです ランクは最下位のランクD C、B、A、S、SSと上がっていき最上位はSSSです。」


「私たち人種族や亜人は女神様の加護を受けています。それがステータスやレベルというシステムになって表れているんです 魔物を倒したり経験を積めばレベルは上がりより女神様の加護を受けれるでしょう」


「女神…」


「ねぇ まだぁ?」


この後ろにいる奴の加護ねぇ 受付嬢さんの説明は続く


「受けられる依頼は二つ上のランクまでです。」


カードを受けとるとこれから冒険者としてオレの人生が始まるのだとワクワクした


「…あれ?一真さんてもしかして勇者の称号をお持ちなのですか?」


眼鏡で確認した受付嬢さんは驚きながら言う。




「ふふ…わかりますか? そうオレこそ勇者として」


「あー またなんですね」


ため息をつく受付嬢さん


あれ?何か反応が… 冒険者ギルドにいた他の冒険者も呆れながらこっちを見ている おやおや??




「最近多いんですよ…勇者の称号を持った方 それでいて なにもせず他人の家から特権とか言って物を盗んだり、魔王軍との戦いでも迷惑かけたり 引きこもったり 危ない研究ばっかりしたり なにげに凄い才能をもったり伝説級の武器や魔道具持ってたりするんだけど味方も巻き込んだり正直迷惑なんですよねぇ」


 


「あの…ちょっとすいません」


オレはミコトを隅に追いやりひそひそ話を始めた


「なによ?」


「おい …お前どういう事だ?勇者ってオレだけじゃないのかよ?」


「はっ?そんな事一言も言ってないんですけど」


「…」


「…」


こいつぅ ひっぱたいてやろうか


「お前ふざけんなよ! 普通勇者ってのは一人じゃないのかよ! 勇者に選ばれて多少は喜んでたオレの純情返せよ!」




「しょうがないじゃない!皆死んじゃうか 逃げちゃうか宇宙海賊になっちゃうんだもん だったら数撃ちゃ当たるかなぁーて」




「……ちなみに オレで何人目よ?」


「…ざっと千人目?」


「さようなら」


「ちょっと待ってお願いだから 一生のお願いだから!」


オレの袖をつかみ泣きながらすがってくる


こいつはほんとに…




「あのぉ~」


見ろ 受付嬢さんが困ってるじゃないか




「あっじゃあ これお願いね」


いつの間にかミタマは依頼掲示板から張り紙を一枚取ってきていた


それを見た受付嬢さんが困惑する。




「八神さんでは今のこのご依頼は無理ではないかと…」


見るとレッドベアの討伐


推奨レベル60 …うん無理


だがミタマは受付嬢さんにつめより


「大丈夫…一真さんは大丈夫 この依頼を受けられる」


すると受付嬢さんはとろ~んとした顔をして


「はい…承りました」


承認のハンコを押してもらい


「はい それじゃー行きましょう!」


「おい さっきの催眠術みたいなの後でオレにも教えろ」






オレ達は街外れの街道に来ていた レッドベア 人食い大熊がこの辺りを縄張りにしているらしく、討伐依頼が出ている…のだが これやっぱり無理だろ 


「なぁーミタマ この依頼やっぱり断ろうぜ 今のオレ達じゃ…」


「はいこれ」


ミタマは右手を差し出すと魔法陣が現れ、そこから一本の刀を取り出し、オレに渡す


「神剣 天羽々斬 持つ者を最強の達人にする刀よ。これを持てば猿でも最強の猿になるわね」


「おぉ…」ずっしりとした重さ 豪華な模様が刻まれている




「よろしく頼むぞ主よ」


「この刀しゃべるのか」


ゲームでもよくあるなぁ いい相棒になるといいけどな


「新しい主ってこの子?あんまりぱっとしないわねぇ」


……鞘までしゃべるのかよ しかも女声


「まぁいいではないか妻よ」


妻かよ!




がさがさ 突っ込もうとした時 街道の茂みから音が聞こえた






「ぐおおおおおおっ!」


赤毛の三メートルはある熊が目を血走りながら向かってきた。


「我を抜け!」


天羽々斬を言われるがまま抜く その瞬間、レッドベアは五体がバラバラになって絶命した


断末魔も上げることもなく


オレがやったのか…身体が勝手に動いた…凄まじい速さでレッドベアに接近して切った感触すら感じる事もない切れ味


これが…神剣…


「主よ 我を鞘に納めてくれまいか」


「あっあぁ」


オレは神剣を鞘に納める


「あっあぁぁあん♡」


「んっ?」




鞘から何やら声が漏れる


「もう! もう少し優しく収めて欲しいわ そこはデリケートな所なのよ これだから童貞は」


「まぁそう言うな妻よ 誰にでも初めてはある」


「主よ できればもう一回抜き差ししてくれまいか?」


絶体嫌です。




「がっ!」


突如凄まじい痛みが全身を駆け巡る! あちこちの骨が砕ける音 口から血を吹き出しオレはその場に倒れる。


「ひゅーひゅー」息も絶え絶えになる


なに…何が起きた?




「あーやっぱり まだ無理だったかぁ」


ミタマが頭をぽりぽりかきながらオレに近づき 両の手で暖かい光をだしオレの身体を修復していく


「レベルが低すぎたのよねぇ 神剣の力に身体を耐えられなかったんでしょ まぁ 大丈夫と私が治してあげるから」




「冗談じゃねぇ!呪いの武器じゃねーか!こんなん返却だ クーリングオフだ!」


「なんですってー!」


この日オレはレベル15になりました。




そんな事があってオレはこの刀を使う事を拒否している。


「大体こんな魔物一撃で倒せるなら ミタマお前が魔王倒せばいいじゃないか」


「それが出来れば苦労しないわよ 天界規定でできないんだから!」


強い日差しが降り注ぎ 果てしなく続く青空の中でオレ達はぎゃぎゃーと喧嘩していた。


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