世界最高のソロプレイヤー、最強ギルドを結成する
あっつー
序章
プロローグ➀
フルダイブ型VRMMO(Virtual Reality Massively Multiplayer Online Game)「Creature Hunters」は、20XX年に日本の有名ゲームメーカー「KAPCOW」が満を持して発売した超大作である。
プレイヤーは、「クリーチャー」と呼ばれる架空の怪物が蔓延る世界で「ハンター」となり、特定のクリーチャーの討伐・捕獲・撃退やアイテムの運搬・採取などの様々なクエストに挑戦する。自分の背丈よりも巨大な武器を振り回すこともあれば、小回りの利く武器で狩猟対象を翻弄しながら、多種多様なクリーチャーを狩り、クエストを達成していく。
「ゲームクリア」となる具体的な最終目標は特に用意されておらず、クエストの成功報酬や狩猟したクリーチャーから素材などを得て、自分の武器や装備を強化していく。そして、より狩猟難度の高いクリーチャーと戦うことが主な目的となる。クリーチャーの数は、大型・小型を合わせると、数万体にのぼり、全てのクリーチャーを狩猟したプレイヤーには、公式から特別称号が与えられる。
クエストの難易度によって得られる数値も変わってくるが、プレイヤーはクエストをクリアすることで、ハンターポイントを獲得できる。そして、一定の基準を超えると、「ハンターランク(HR)」が1つ上がり、挑戦できるクエストが増えていく。スタートはHR1で、上限はHR9999となっている。
いわゆる「職業」と呼ばれるような区別は設定されておらず、所持品の中から自由に持ち替えられる武器によって、操作方法や攻略方法が大きく変化する。クリーチャーによっては、特定の武器攻撃しか効かないこともあり、あらゆる武器を使いこなせることが、HRを上げるうえで必要不可欠となる。
クリーチャーの体力や状態異常などは常に可視化されているが、プレイヤー単独の攻撃力がそこまで高い設定ではないため、ギルド(最低2人以上)を創設またはギルドに所属することで、大勢のプレイヤーで狩猟難度の高いクリーチャーを倒すのが公式公認のセオリーである。ただ、ごく一部のプレイヤーは、ソロで狩猟することを好み、ソロプレイヤーとしてゲームを楽しむ。しかし、ソロでの狩猟は一気に難易度が上昇するため、HRの限界は100ぐらいまでと言われている。もちろん、例外はいるが・・・。
装備は防具と装着品に分かれており、それぞれにスキルポイントと呼ばれる特殊な補助効果を発生させるための累積値が設定されている。その合計が一定値を超えたスキルのみ発動し、いくつかのスキルをうまく活用しながら、様々なクリーチャーを狩っていく。当然、ソロプレイヤーはこのスキルを重視した戦闘スタイルとなる。
もちろん、これら以外にも様々なやり込み要素がある。そのため、「Creature Hunters」は日本中で大ヒットし、フルダイブ型VRMMO史上における最高売上及び最高販売数を記録した。
しかし、それも10年以上も前の話である・・・。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
1台のパソコンの光が、薄暗いオフィスの中に乱反射している。そのパソコンの前には、猫背でカタカタとキーボードを叩いている男が一人。
「・・・おっと、もうこんな時間か。終電に間に合わなくなる。」
俺の名前は伊藤晋也、今年で26歳を迎える。地元の国立大学を卒業したが、就職活動に失敗し、有名なブラック企業に就職することになった。すぐにでも辞めてやろうと思ったが、なかなか辞める勇気が出ず、ズルズルとここまで来た感じだ。仕事に関しても、あまり断ることが得意ではないため、自分でも無理だと分かっていながら、多くの業務を引き受けてしまう。そのせいで、今日で残業10日目。この前は、休みなしの30連勤だった。
・・・はぁ、この癖をどうにか直したい。
俺はテキパキと帰る支度をし、会社をあとにした。そして、何とか終電に間に合い、いつも通りスマホで色々なニュースを見ていると、衝撃の記事のタイトルを見つけた。
〔「Creature Hunters」本日サービス終了 一時代を築いたVRMMOがついに・・・〕
・・・嘘だろ!!
俺はすぐにその記事を開いて、内容を確認した。すると、実際に公式からサービス終了の声明が出ていることが分かった。そして、サービス終了日時は、まさかの今日の深夜0時。つまり、日付が変わる瞬間だ。
・・・クソ!仕事に時間を取られ過ぎた!!
サービス終了の声明は半年前に出されていたが、仕事に忙殺されていた俺はそのニュースを全く知らなかった。俺は電車を降りた後、急いで自宅に向かい、押し入れの中に眠っていた、VRMMO専用の機械一式を取り出した。
「懐かしいな・・・。」
中学1年生の頃、小学生の頃から溜めていたお小遣いとお年玉を使い、VRMMO専用の機械と「Creature Hunters」のソフトを購入した。その後、就職するまでの約10年の間、学校と食事と睡眠以外のほとんどの時間をこのゲームに費やした。もちろん、就職活動の失敗もこれが大きな原因である。ある意味、理想的なゲーム廃人だったと思う。
「最後にやってみるか。」
俺は、青春が詰まったあの仮想世界にもう一度行こうと思い、ヘッドギアを装着して「Creature Hunters」を起動させた。サービス終了まであまり時間がないため、クエストに行くのは無理かもしれないが、たくさんの思い出を回顧することができるだろう。
・・・久しぶりの感覚だな。
俺は、リラックスした状態で目を閉じた。そして、「Connected」と聞こえたため、ゆっくりと両目を開いた。
・・・本当に懐かしい・・・。
眼前には、かつて何万時間とプレイした絶景が広がっていた。
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