第2話 メガ◯テ

俺こと、亜子神タモツは就職に失敗した現在24歳のフリーターである。


惰性で中学に通って、惰性で高校に通って、惰性で大学に通って、惰性で就活して、就職出来なかった、昨今珍しくもない日本男児だ。


高くもない給料から家賃と光熱費を差っ引いて余った金でパチスロを打つ。代わり映えのない毎日。


勝った時にはちょっとした贅沢をして、負けた時はもやしで乗り切る。そんな代わり映えの無い日常が俺は好き……でもねぇな、どうしようもねぇな。


右手に握りしめた三袋のもやしを見て目が覚める。


思い返すと前の世界に未練という未練がない。交流のある友達もいない。俺の奨学金を使い込んでいたギャン中の両親とはとうの昔に縁を切った。血って争えないね(^_-)-☆。


俺を知る人間といえばイビリの凄いパートのおばちゃん位だ、このまま俺が帰らなかったら土曜のシフトキツいだろうな、可哀想に。ザマァみろ。


とんだ人生だった、まともな趣味の一つもなければ、金もない。借金返済の為の極貧生活、踏んだり蹴ったり、ラジバンダリ、はは、おもろ。


あれ、なんだろう頬の痛みは引いたのに涙が止まらない、なんだろう。


二十余年、積みに積み重なった負の遺産を精算出来たと思えば案外悪くないのではないだろうか、むしろいいまである。そんな風に柄にもなくポジティブシンキングし始める。


「さてと、気を取り直して」。


辺りを一瞥する。


────────────────


石畳の道が街の中央へと続き、両脇には古びた木造の建物が立ち並んでいる。家々の屋根は赤茶けた瓦で覆われ、窓辺には色とりどりの花が飾られている。時折、猫が屋根を歩く姿が見え、その下を行き交う人々の活気が街に命を吹き込んでいるかのようだ。


中央広場には市場が広がり、果物や野菜、手作りの工芸品が並ぶ露店が軒を連ねている。商人たちは賑やかな声で品物を売り込み、客たちは新鮮なリンゴを手に取り、その香りを楽しんでいる。広場の中央には古びた石造りの噴水があり、その水音が人々の喧騒とともに街全体に響き渡る。噴水の周りには木製のベンチが置かれ、老人たちはそこで一息つきながら、通り過ぎる冒険者たちの姿を見守っている。


「だぁ〜〜、疲れた」。


穏やかな時が流れる広場にだらしの無い咆哮が轟く。亜子神タモツは恥ずかしげも無く噴水の水をガブ飲みした。尚、老人たちはどこかへ行った。

そうして空いたベンチにドサリと座る。 


「一通り見て回ったけど、時代設定は中世ヨーロッパ、魔法有り有りで冒険アリアリってとこか。さすが異世界ファンタジー」。

満足そうに欠伸を一つ。


魔法ねぇ……俺も使えるのかな?

空っぽの右手をわしわしする。頭でイメージして空に掌をさらす。


えーと…何だったかな……昔やってたド◯クエの、あの……炎出るやつ。


「あぁ!!そうだ!!───メガンテ!!※」。※自爆技


「メガンテッ゙!!!※」。※自爆技


「ンンンンメガンッ゙……ファイナルエクスプロージョンッ゙!!※」。※自爆技


「お兄さん、ちょっと良いかな」。

ポンポンと肩を叩かれる。振り返るとそこには鎧を着た大柄の衛兵が二人いた。



「えぇ…すっごい勘弁してほしい」。

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