1335 由佳ちゃんがある決意に至るまで

 自身も観客の皆さんも、眞子の実力には満足気だったのにも拘わらず。

何故か3B-GUILDの面々からは、なんとも言えない視線が……


そしてその上で、由佳ちゃんから呼び出しを食らう眞子。


***


 ……(;´д`)トホホってな感じで。

折角、覚悟を決めて廊下に出たのに、由佳ちゃんは一言も口を開いてくれる様子はなく。

ただ黙って、私をジッと見てるだけで、特になにも言ってくれない。


いや、あの、もしもし。

そうやって黙ってられる方が、ある意味、拷問なんですけど。



「あの……」

「ハァ……あのさぁ、眞子ちゃん」

「あの、なんか、ごめんなさい」


まずは謝罪だよね。


幾ら私が精一杯頑張ったとは言え。

あれだけライブ中にハチャメチャな事をやってしまったんだから、時期リーダとしてはご立腹なのも解る。


なので、まずは謝るのが筋ってもんですからね。


此処は、人としての基本だよね。



「うん?なんで謝るの?私、怒ってないけど」

「怒ってないの?」

「怒ってないよ。眞子ちゃんに怒る必要なんか、なにもないんだけど」

「あぁ、そうなんだ」


あれ?

じゃあなんで、あんな怖い目をしてたんだろうね?


意味が解んないや。



「うん。……けどね」


ヤッパリ『けどね』が有るんですね。

怒ってなくても、なにか多大な不満は有る訳ですね。


でも、それは、本当に、しょうがない事なんですよ。

私、制御不能の『爆弾娘』なんで、これは不可抗力と言うものなんですよ。


嘘です。


はい、すみません。



「けど?けどなに?」

「あの、眞子ちゃんってさぁ。本当に、人前でダンスするのって、今日が初めてなの?」

「人前でダンス?うん。初めてだけど」

「あぁっそ。……あぁっと、念の為に、もぉ一回確認するけど。本当に初めて?」

「うん、本当に初めてだよ。なんで?」


それは矢張り、遠回しにダンスが下手糞だったって事を啓示する言葉ですね。


……だとしたら、余りにも見るも無惨なダンスだったから、注意しようって話なのかなぁ?


もしそうだったら、ちょっと調子に乗ってた分、凄く悲しい結末だね。



「そうなんだ。じゃあ、もぉ1つ質問」

「あぁ、うん、なに?」

「眞子ちゃんって、プレッシャーとかは感じないの?」

「無いけど」

「なんで?なんでないの?」

「いや『なんでないの?』って言われてもさぁ。下手糞は、頑張っても下手糞なんだから。そんなにプレッシャーが掛かる程、誰も見てないと思うんだよね」

「そう言う考えなんだ」

「そうだね。それにね。下手糞なら、せめて精一杯やって、その下手糞のレベルに留めなきゃいけないでしょ。だったら、プレッシャーなんて掛かってる暇は無いよ。……って言うかね。もっと正直に言えば。必至にやってたから、そんな事すら考える余裕が無かったよ」

「そう……なんだ」


ちょっと嘘ですね。


まぁそりゃあね。

必死にやってたのは嘘じゃないんだけど。

プレッシャーが掛からないのは、元からの性格の問題なんだよね。


それにステージに上がっちゃえば、もぉ後は『野と成れ山と成れ主義』なもんで。


でも、その結果として、迷惑を掛けたんじゃ世話ないよね。



「あの……そんなに酷かった?」

「酷い?なにが?」

「ダンス」

「いやいやいやいや、寧ろ、その逆だよ。なんであんなに上手いの?」


上手いとな?


気のせいです。



「えっ?うん?なにが?」

「いや、だから、ダンスが」

「誰の?」

「イヤ、だから、眞子ちゃんのダンスが」

「そうなの?」

「うん。かなり良い線いってたと思うけど」


おぉ……それは良かったです。

我武者羅にやってただけだから、テッキリ怒られるのかと思ったら、褒められちゃったよ。



「そうなんだ。あぁでも、3B-GUILDのダンスの振りは、前以て知ってたよ」

「なんで?なんで、眞子ちゃんが知ってるの?」

「えっ?だってさぁ。前から素直ちゃんにチケットを貰ってライブを観に来てたし。家で、ライブの映像も何回も観てるからね。振りだけなら憶えれるよ」

「はぁ?観ただけで、そんな簡単に憶えられるものなの?」

「うぅんっとね。ある程度だったらの話だけどね」


因みにですが『筋肉の動き』の研究材料としても、何回も見てましたよ。


お陰で『瞬発系』『バネの使い方』は、非常に参考に成りました。



「嘘でしょ」

「いや、あの、嘘は言ってないけど。……あぁ、でもでも、動きは真似出来ても、呼吸方法が解らなかったから、直ぐバテてたよ」

「でも、一応は出来るんだ」

「う~~~ん。まぁ出来るって言うのも、正確じゃないとは思うんだけどね。本当にモノマネ程度の代物だよ」

「そうなんだ。……でもさぁ。モノマネとは言え。そんなに簡単に出来るもんなの?」

「出来るよ。……なんて言ったってさぁ。子供がTV観て、踊りを覚える感覚だと思えば、これは、そんなに難しい事じゃないよ。要はね。気楽にやってるから出来るんじゃないかなぁ」


早い話、絶対やらなきゃイケナイ事じゃないから。

仕事として、誰かに強制されてやってる訳でもないから簡単に憶えれたって感じなんだろうね。


ホンで、その気楽さ故に、モノマネ程度になら簡単に憶えられるって話。


まさに子供の定理だね。



「そっか。それも、そう言う原理で成り立ってるんだ。でもさぁ、眞子ちゃん。『呼吸法が解らなくて、直ぐにバテた』って、さっき言ってたけど。今日バテてなかったんじゃないの?」

「あぁ、そこはね。今日、運命に呼吸方法を教えて貰ったからバテなかったんだと思うよ」

「えっ?今日教えて貰ったからって、直ぐに出来るの?」


いや……幾らなんでも、そんなに、直ぐには出来無いですよ。


一応、これでも苦労して、体に叩き込んだんですけどね。



「えぇっとね。そこも正確に言えば、出来てないんだけど。別の運動から、ダンスに近い呼吸方法を併用すれば。なんとなく出来た感じにはなるかなぁ」

「なにそれ?どういう事なの?」

「あぁっとねぇ。これは『複合原理』って奴なんだけど。何かと、何かを足して、それに近いものを独自に組み上げるの。そうするとね。なんとなく、それに必要なものに似たものが出来るんだよね。それを使えば、なにも解らないよりは、マッシな感じに見えるって話」


解る?


要するに『似て非なるもの』を、上手く使ってるだけの話。


……っで、それを実践で使えば、それなりに、なんでも出来る様に見えるし。

そこで見つかった弱点を補えば、もっと良いものに仕上がって行くって、私独自の理論でもあるんだけどね。


これがなんでも出来る様に見える原理でもあるんだけど、解りるかな?



「じゃあさぁ。私達以外のダンスも出来るって事?」

「うん。そこも真似程度ならね」

「やっぱり、そうなんだ。……ねぇねぇ、眞子ちゃん。例えば、それが【Fish-Queen】のダンスみたいな、派手な奴でも出来るの?」


……微妙。


なんと言っても美樹さん達はアクロバティックなダンスが中心の本格的なダンスユニットだから、ちょっと難しいかなぁ。


でも、簡単な所ぐらいなら出来なくもないかなぁ。



「出来るかって言われたら、出来無いけど。ヤッパリ、真似程度なら出来るよ」

「そこも出来るんだ。だったら、ちょっとだけ、やってみてくれる」

「えっ?此処で?此処でやるの?」

「あぁ、そっか。狭いかぁ」


いや、あの、凹まれても、困るんですけど。



「あぁっとねぇ。じゃあ、触り程度なら」

「やってくれるの?」

「まぁ、ちょっとだけなら」


そろそろ、素直ちゃんの卒業の挨拶が終わって、歌も一曲ぐらい終わってる筈の時間帯だからね。


流石にもぉ、集合時間の事を考えれば、ゴチャゴチャ言ってる時間もないからね。


由佳ちゃんが納得出来る程度に、サッとやって、サッと終わらせよ。


ササッとね。


***


「……って感じじゃないかなぁ?」

「はぁ……もぉ有り得ないよ。この子、どうなってるの?」

「なにが?」

「まぁ、良いや。本人の自覚が無いみたいだけど。これで私の意思も固まった」

「だから、なにが?」

「さてさて、素直チンの挨拶も終わった頃だろうし。行こっか」

「いや、あの、人の話を聞こうよ」

「眞子ちゃん」

「なっ、なに?」

「眞子ちゃん……人じゃないじゃん」

「酷い」


私なんか悪い事した?

なんで、そんな酷い事を言われるんだろうね?


一応、ゲストで呼ばれてきたんだけどなぁ。


なんか腑に落ちないなぁ。


***


 ……っで、この後。

再び3B-GUILDのみんなと、ステージに全員で上がって。

卒業祝いの花束贈呈と、挨拶をして。

ライブは、一応の所、感動のクライマックスを迎えて終わったんだけど。


此処から更に、記者会見が有るとか言う話に成っていて。

部外者の私と、表舞台に立ちたくない運命は、みんなに感謝されながら先に帰らして貰う事に成った。


……でもね。

その際に由佳ちゃんから『眞子ちゃん。家に帰ったら、ニュース観て置いてね』って言われた。


なんの意味が有るんだろうか?



なぁ~~~んか嫌な予感しかしないのは、なんでだろう?


***


次回予告。


わ~~~い!!

出演する筈が無かった3B-GUILDのライブが終わったから、崇秀さん家に直行だぁ~~い!!

今日一日、愛しの崇秀さんの顔を一度も見てなかったから、もぉ危うく死ぬ所でしたよ。


……ってな訳で、次回。


『After live』

「ライブの後」


……を、お送りしちゃいますね。


あっ……そう言えば。

真琴ちゃん、今日の奈緒ネェの所のライブ大丈夫だったのかな?


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>

これにて第一章・第八十話【A 3B-GUILD`s live③(3B-GUILDライブ③)】はお仕舞に成るのですが、ライブや人間関係を楽しんで頂けたでしょうか?


まぁ、楽しい筈のライブ回だと言うのに、少々人間関係で重苦しい話が多くなってしまったのですが。

結論から言いますと、この人間関係と言うものがしっかりしてないと、大型ユニットと言うのは統率が取れなくなってしまうので、そこにスポットを大きく当てさせて貰いました。


みんなで練習さえしてれば、なにもかもが上手くいくなんてものは幻想でしかありませんしね(笑)


さてさて、そんな中。

次回からはシーズン16『ライブの後、そして……編』

第一章・第八十一話【After live(ライブの後)】が始まる訳なのですが。

このライブの後の話に関しましては、眞子視点ではなく、倉津君がメインの視点でお話をして行こうと思います。


眞子が予告の最後で言ってましたみたいに、倉津君サイドの方も色々大変だったでしょうしね。


ってな感じで、次回のお話は書いて行きたいと思いますので。

良かったら新シリーズ【シーズン16】の方に、また遊びに来て下さいねぇ~~~♪

(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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最後まで奏でられなかった音楽(シーズン15) 殴り書き書店 @nagurigakisyoten

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