第11話
あかりは大学の図書館の隅で静かに座っていた。テーブルには、何枚も書き直した手紙の紙が散らばっている。彼女は最終的な一枚を取り出し、慎重にペンを走らせる。外の光が柔らかく差し込み、彼女の姿を温かく照らしていた。
彼女の心は緊張でいっぱいだった。手紙に自分の気持ちを込めることは、これまでのどんな努力よりも難しいと感じた。言葉を選ぶたびに、どう伝えればいいのか、百合がどう感じるのかを考えてしまう。何度も書き直しては消して、ようやく一枚の手紙が完成した。
あかりは手紙を封筒に入れ、封をして、その上に「百合さんへ」と書いた。彼女の手は少し震えていたが、それでも強い決意が込められていた。手紙を握りしめたまま、彼女は少しの間その場に座っていた。やがて、深呼吸をしてから立ち上がり、手紙を百合の大学のロッカーに届けるために向かった。
図書館を出たあかりは、大学のロッカーエリアに着いた。百合のロッカーを見つけると、周りに誰もいないことを確認してから、そっと手紙をロッカーの隙間に滑り込ませた。手が触れるたびに心臓が跳ね、手紙が無事に届けられることを願うばかりだった。
その夜、百合は大学から帰宅し、ロッカーを開けた。普段のように教科書やノートを取り出す中、封筒がひとつ入っているのに気づいた。最初は気に留めずにいたが、手紙に書かれた「百合さんへ」の文字を見て、心が跳ねた。
家に帰った百合は、急いで部屋に入り、手紙を取り出した。静かな部屋の中、彼女は手紙をゆっくりと開き、あかりの文字を目にした。読んでいくうちに、あかりの気持ちが真摯に伝わってくるのを感じ、心が温かくなった。
手紙の最後の言葉を読み終えた百合は、しばらく黙って座っていた。あかりの気持ちに応えたい気持ちが募る一方で、自分の気持ちを整理する時間が必要だと感じた。手紙を大切にしまいながら、百合は心の中で決意を固める。
「これからどうしよう…」百合は静かに呟き、手紙を見つめながら未来のことを考えていた。
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