【不思議怪談】幽霊じゃないけど幽霊みたいな話

BB ミ・ラ・イ

本文

 私は高校時代に演劇部に所属しており、文化祭で演劇を披露することになった。それに向けて毎年恒例の夏の合宿が行われ、その年も私たちは地方の山奥にある古い旅館へと行き、二泊三日でその泊まることになていた。


 その旅館というのは、昔は賑わっていたらしいが、今ではすっかり寂れており、独特の雰囲気が漂っていた。特に夜になると、木造の廊下が軋む音や風の音が一層恐怖感を増すような建物だった。


 ある晩のこと、私は部屋で台本の確認をしていた。他のメンバーは大広間で夜の稽古をしていたので、私は一人きりだった。

 すると、部屋の外から微かに足音が聞こえてきた。誰かが歩いているような、規則的な音だったが、旅館だったこともあり、他のお客さんかなと思いあまり気にしないことにした。


 ただ、しばらくすると、その足音は近づいてきて、ついに私の部屋の前で止まった。ドアの向こうには誰かが立っている気配があったが、ドアを開ける勇気はなかった。


 その時、ドアがカタカタと揺れた。恐怖が全身を貫き、心臓が激しく脈打った。勇気を振り絞って「誰?」と声をかけたが、返事はなかった。


 翌朝、稽古仲間に昨晩の出来事を話すと、誰もその時間に廊下を歩いていなかったと言う。私は確かに聞いた、そして感じた。誰かがそこにいたと。


 合宿が終わり、私たちは無事に文化祭を成功させたが、あの足音の正体はわからないままだった。帰宅して数日後、私は何気なく合宿の写真を整理していた。


 その時、背筋が凍った。一枚の写真に写っていたのは、私がいたあの部屋の前の廊下だった。窓の外には誰もいないはずの夜の風景。そして、そこには確かに影があった。誰かが立っている影が、確かに。


 あれは、過去の私だったのだろうか ——— (完)

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