07 仮想世界

 『オラクル教会』を出た私に風が吹き抜ける。

 あぁ、本当に別の世界に来たみたい。


 

 そう思ってた私の視界の上の方に【第一の街モノーン】と表示される。


 今まではオープニングでここからゲームが始まるんだ。そう思うとワクワクしてきた。



 

 周りを見渡すと黒い半透明の人影がたくさんいる。

 少し驚いたけど私がノンアクティブにしてるからシルエットになっているだけで、実際には他のプレイヤーさんなんだろう。


 

 接触もしないので気にせず歩く。


 

 通り過ぎる際に時々驚いたような動作をするシルエットがいる。

 そっか当たらないとはいえ向こうからもシルエットとして見えているから、自分のほうへ向かってきたらビックリするよね。


 

 私は事前にアクティブモードについて調べているから知っているけど、ノンアクティブが接触できないって知らない人もいるのかも。

 わざわざ驚かす必要もないし、避けられるようなら避けよう。

 まぁここはプレイヤーさんが多くて避けるの大変だから、できるだけ人の少ない所を通る程度でいいかな。



 キョロキョロと周りを眺めながら『総合ギルド ビヨンド』まで歩く。

 

 

 大分見回していたからノンアクティブじゃなかったら他のプレイヤーさんに不審な目で見られていたかもしれない。

 本当に作りこんでるからついつい目が行っちゃうんだよね。


 


 到着するとここでも大勢のプレイヤーさん達がいた。


 

 まぁBOOは始まったばかりだから皆チュートリアルクエストをしているんだろうね。

 接触しないからあんまり気にして無かったけど、人の流れも『総合ギルド』に向かっていた気がする。

 これなら『マップ』が無くても到着できたんじゃないかな。


 


 仮登録はカウンターでするんだろうと思い、そちらを見ると受付のNPCの前にずらっと並ぶ黒シルエット達。

 まぁ皆チュートリアルクエストしてるならそうなるよね。


 私も並んだ方が良いのかな。

 そう思ってよく見るとNPCの口が動いていない。

 レンブランサ神父は本当に生きてるみたいに動いていたし、作りこみが売りのゲームならNPCが口を動かさずに喋るなんてないと思う。


 

 考えていると受付NPCと目が合い手招きされる。

 割り込みみたいで気が引けるけど、呼ばれたので躊躇いながらも近づいてみる。


 

「『総合ギルド ビヨンド』へようこそ、来訪者様。こちらは『総合受付』です。冒険者としての仮登録でしょうか。」

「えっと、はい。あの、他の人は良いんでしょうか。」

「ええ、今は他の方の受付はしていませんから。」


 うーん、これはあれかな。

 NPCとの会話は他のプレイヤーに影響されずできるのかも。

 私がノンアクティブだからか元々の仕様なのかは分からない。

 もしかしたら他のプレイヤーさん同士はアクティブやセミアクティブだと通り抜けられないから並んでいるのかな。


 

 ふと会話が止まっていることに気付く。

 これは私の返事待ち……なんて返せばいいのだろう。

 そうだ!こういう時は会話アシストだね。現実でもあったらいいのに。


 

 えーと会話アシストは”なぜ仮登録と分かったのか”……そういえば仮登録に来たんだった。


 

「”なぜ仮登録と分かったのか”」

「レンブランサ神父から来訪者様について聞いていますから。仮登録をするという話も伺っていたので、貴方の称号『来訪者』を見てすぐに用件が分かりましたよ。」


 なるほど、称号はNPCからも見られるっていうのはこういう事か。


 

 ん?あれ、話が終わってしまった。

 焦っていて気づかなかったけど、もう1つの会話アシストが話を進める方だったみたい。



 

「”仮登録をお願いする”」

「畏まりました。お名前をお願いします。」

「モカです。」

「モカさんですね。……はい仮登録が完了しました。これよりモカさんのジョブは『仮冒険者』となります。『仮冒険者』は〈共通スキル〉のみ習得できるジョブです。〈スキル〉は登録ギルド……このギルドだとここのカウンターで新たに習得できますが、『スキルポイント』が必要ですのでご留意ください。なおセットできる〈スキル〉は7個までですが習得できる数に上限はありません。習得した〈スキル〉は広場にある《記録の水晶》で入れ替えることができます。」


 登録も仮だからジョブも『仮冒険者』になってるのかな。

 そういえばチュートリアルクエストの最後は”ジョブを登録しよう”だから、本当に一番最初だけなんだろうね。


 

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