リベンジマッチ:後編

「―――くっ…!」

 スレアちゃんとキュスコートちゃんが駆る【深淵の祝福アイギス】との同時攻撃をギリギリで避ける。

殺戮の達人キラーオブキラー】のステータス上昇のお陰でどうにか避ける事は出来ているけれど…。


 スレアちゃんからの攻撃に気を取られていると、遠隔の【深淵の祝福アイギス】にやられて、【深淵の祝福アイギス】の処理に気を取られるとスレアちゃんからの攻撃でやられる。

 …完全な詰み盤面の出来上がり…、ね。

 でも、元ランキング1位として、譲れない物はあるの。少し大人気ないかもしれないけれど…。


「【開門ザ・ゲート審判の知恵アテナ】!」

 SSR級のアビリティ、【開門ザ・ゲート】。私が持っているのは審判の知恵アテナ、攻撃力の上昇、自動回避、身体能力向上などなど…。『ぼくの考えた最強のアビリティ』、そんな感じの要素がてんこ盛りのアビリティだ。

「よっ、ほっ…ほい、っと」

 さっきまでとは打って変わって、軽やかに攻撃を躱す。そして、スレアちゃんに反撃をしていく。

 もちろん、避けられてはいるけれど、それでも形勢が逆転しつつあるのは事実だ。

 スレアちゃんに蹴り折られた【権天使の剣プリンシパティ・ソード】は【審判の剣アテナーズ・ブレード】へと変化して、さらに各装備も【審判アテナーズ】シリーズへと変化して、防御力や機動力が格段に跳ね上がる。

「スレアちゃん。悪いけどこのまま勝たせてもらうね!」


 反撃の手を緩めることは無く、スレアちゃんに攻撃を入れていく。

審判の剣アテナーズ・ブレード】は装備の防御力等々を無視してダメージを与えることができる。

 つまり、【深淵の祝福アイギス】がどれ程防御力が高くとも関係ない。そのままのダメージをスレアちゃんに与えることができる。

「ぐっ―――」


 スレアちゃんは痛覚リンクをオンにしてる。だから、痛みによって一瞬、思考にラグが生じる。

 そのコンマ数秒で勝負が決まるんだ。

「はぁっ!!!」

 …ごめん、スレアちゃん。また私の勝ち―――。



 振り上げられた剣が僕の目の前にまで迫る。

「―――ぇっ」

 リアの剣が甲高い金属音を立ててリアの手から弾き飛ぶ。


 ナイフでもない、【深淵の祝福アイギス】でもない。弾いたのは僕の手だ。

「うっそでしょ…?」

 剣を殴り飛ばした勢いを利用して、そのままリアに回し蹴りを叩き込む。

「っ…!?自動回避が効いてない!」

「あぁ…【深淵の祝福アイギス】を避けてたのって自動回避なんだ」

「嘘…なんで?」

「さぁ、それは知らない」

(キュス、囮になれる?)

『分かった。時間稼ぎくらいはできると思う』

(うん、ありがと)


 キュスが【深淵の祝福アイギス】を操作してリアに向かって攻撃を仕掛けていく。

 今現在リアが使っているアビリティは自動回避が付いているらしく、【深淵の祝福アイギス】の攻撃を軽々躱している。

「それは無駄だよ!」

「うん、知ってる」

『―――スレア、時間切れみたい』

(分かった)

 切り離された【深淵の祝福アイギス】が集まって、元通りに戻る。【終末の先駆者ラグナロク・プロトポロス】の効果時間が終わったみたいだ。


「相変わらず…自動回避が使い物に…ならないっ…!」

 蹴りや殴りをリアに向けて放つ。いくつかは回避されているけれど、結構な確率で命中している。

(…キュス、パイルバンカーお願い)

『うん、分かった』

 蹴りを放つと同時に、キュスが足に形成した小型のパイルバンカーが命中する。

「ぐっ―――!」

「―――【神槍・一叉グングニル】」

 パイルバンカーの勢いで後ろに吹き飛んだリアに、アビリティ、【神槍・一叉グングニル】を撃ち込む。

神槍・一叉グングニル】はリアの体を貫通して、壁に突き刺さる。



《【開門ザ・ゲート審判の知恵アテナ】の効果、【死を打ち砕くものデスクラッシャー】が発動。【開門ザ・ゲート審判の知恵アテナ】の一時的な使用不可能と共に、PLプレイヤーネーム:シャリアを蘇生します》


 これが【開門ザ・ゲート】最大のチート要素、アビリティ、発動中に一回だけGame Overを回避することができる。

 …ただ…、この状態ではもうスレアちゃんには勝てない。

 だから、蘇生された所で…なんだよね。

「…スレアちゃん、降参するよ」


 メニュー画面から降参を選択する。


 正直、勝てるわけが無い。自動回避が使い物にならないし、私の攻撃も殆ど回避されて、なんだったら反撃までされてるし。

 アビリティを殆ど使わずに、真正面から【開門ザ・ゲート】と渡り合ってる。

 これは流石に無理だ。


《降参を選択しました》


《勝者、PLプレイヤーネーム:スレア》



「…そう言えばさ、スレアちゃん」

「どうしたの?」

「なんかさ、私手加減されてた気がするんだけど…気のせい?」

「いや、そんなことは無いと思うよ」

「そうかなぁ…」

 まぁ…手加減してたかどうかで言うと…若干してたかもしれないけど。

「でもなぁ、手加減してもなお【開門ザ・ゲート】と渡り合って勝ってるんだから、ほんとすごいよ」

「そうなの?」

「うん、何せGSMワールドの中でトップレベルに強いアビリティだもん」

 そうなんだ。


『私達も、【開門ザ・ゲート】が手に入ったらいいね』

(そうだね)

「ねぇリア、【開門ザ・ゲート】ってどうやったら手に入る?」

「えっとね…確か…【門の守護者ゲートキーパー】を倒したら手に入る筈だよ」

「【門の守護者ゲートキーパー】?」

「うん。まあ【門の守護者ゲートキーパー】は【開門ザ・ゲート】を手に入れるに相応しいかどうかを決める試練みたいなものだよ」

「そうなんだ」

 …まぁ、いつか行ってみようかな。


――――――――

作者's つぶやき:【開門ザ・ゲート】、GSMワールド最強格のアビリティです。強さ的には

称号機能ディグリー・ファンクション】<<<<<<<【開門ザ・ゲート

こんな感じです。

あと、最強ではなく最強格なのは【上限解放キャップ・アウト】後には【開門ザ・ゲート】の上位互換が出るからですね。

開門ザ・ゲート】の上位互換…勝てる相手はいるのでしょうか。

まぁそれはそうとして、スレアくんが【開門ザ・ゲート】を手にしたら誰も止められないでしょうね。サザレさんも、リアさんも、それこそ、運営でさえ。

これがインフレってやつですよ。多分。

――――――――

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