ハヅキチックな夏休み。
大創 淳
Travel 01 颯爽たる出発。
――彼女の手を引いて、駆け込み寸前で乗り込んだ電車。その直後に迫る光と影。
行く先は、まだビジョンが見えない道程だけど、まっすぐ彼女は、僕を見ていた。
丸く大きな眼鏡から覗く少し潤んだ目。はにかむ感じは、初めて二人で歩いた日のことを思い出させた。桃色と白色のコラボが綺麗なワンピースも彼女ならではのセンス。
息遣いは、とても近かった。
……吐息交じりの息遣い。白い顔に赤らむ頬も、それに何よりも距離がほぼ密着。
「遠くなの? 近くなの?」と、彼女は訊く。今日初めて聞いた彼女の声。何しろ僕は少しばかり意識しているから。この先について語るのは僕の役目で、彼女はヒロイン。
だから、
「それは
「
彼女の名前は
「そうだよな、元はといえば僕が……原因だった。葉月は付き合ってくれただけだ」
と、少し俯いた。この瞬間ばかりは、彼女の顔を直視できなかった。
「それ、言いっこなしだよ。それでも僕は、怜央君と一緒だったら何処でも。昨日、LINEでお話した通り。それからそれから、これって向かってるの、京の都方面だね、少なくとも。しかも新快速で敦賀方面といえば……とてもワクワクだね、楽しみ楽しみ」
と、驚く程に彼女は燥ぎだした。
はにかんだ感じとは一変して、いつも見る彼女の様子に戻っていた。
それに彼女は自分のことを『僕』という。所謂ボクッ娘。実は、そんなところも僕は好きで……あ、でも、僕の一人称も僕だから、少しばかり被るかも。少しばかり心配。
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