第17話

目が覚めた。また、俺の部屋だ。

 ……あれは悪夢だったのか。いや、きっとそうだ。そうに違いない。それにもう朱里との関係を修正したんだ。もう大丈夫なはず。

 トントンとドアを叩く音がする。

「はい。どうぞ」

 ドアが開いた。そして、朱里が入って来た。……いや、朱里なのか。俺の知っている朱里よりも目の前に居る朱里は大人びている。悪い言い方をすると老けている。美人であるのは変わりはないが。

「おはよう」

 目の前に居る朱里らしき女性は言った。

「じゅ、朱里なのか?」

「何を言ってるの?私は朱里よ」

「苗字は?」

「どうしたの?熱あるんじゃない」

「いいから言ってくれ」

「もう。門田朱里よ。貴方の妻よ」

「……妻?」

 妹の次は妻か。修正じゃなくて改変じゃないか。まだ俺は朱里に告白もしてないんだぞ。

「そうよ。三年前結婚したじゃない」

「三年前?今、何歳だ?」

「もう寝ぼけすぎよ。27歳よ」

「……27歳?」

 10年経っている。おかしい。おかし過ぎるぞ。じゃあ、俺も27歳になったって言う事か。

「私仕事に行かないといけないから」

 朱里はドアを閉めようとした。

「ちょ、ちょっと待て」

 俺はどこかへ行こうとする大人の朱里を呼び止めた。

「何よ」

 朱里はドアを閉めるのを中断した。

「いや。あのー」

「あ!行ってらっしゃいのキスがまだって言いたいのね」

「……行ってらっしゃいのキス?」

 驚きすぎて声が上擦った。どれだけラブラブなんだよ。外国の夫婦か。いや、そんな事どうだっていい。

「何驚いているの。いつもしてるじゃない」

 大人の朱里が近づいて来る。

「い、いつもですか?」

「なんで敬語?今日おかしいよ。でも、可愛い」

 大人の朱里は俺の頬にキスをした。

「行って来るわ。じゃあね」

「お、おう」

 大人の朱里は部屋を出て、どこかへ去って行った。

 興奮したのか、心臓の鼓動は早くなっている。我ながら気持ち悪い。

 落ち着け。落ち着いて考えてみろ。これは俺の望んでいる現実じゃない。修正しないと。

 朱里との関係を元に修正。次はもう大丈夫なはずだ。

 ――――修正中――――

「また頭痛か」

 強烈な頭痛が襲って来る。また意識が遠のいていく。視界も霞んでくる。

 次は元に戻ってくれよ。頼む。

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