リジェクト・ゲーム
APURO
第1話
《デビル・イーター》
現在製作中のゲームのタイトル。内容は魔王倒し、その魂を喰らい、能力を得ていくゲーム。グロテスクな表現やちょっとエッチな表現があるからレーティングは恐らくCになるだろう。Bに落とした方が手には取ってもらいやすくなるはずだけど、自分達が思う表現はできない。だから、Cで発表するしかない。
それにしても、演出やシステムや背景を担当するのは精神的な疲れが多い。他の連中は現実世界で作業できるのに対して、俺の担当分野は仮想空間に行き、《デビル・イーター》の世界に入って、直で見ないと分からない事が多い。
魔王城などは特に自分の目で確かめないといけない。美術品の配置やプレーヤーを苦しませる為の罠の位置など色々と。
美術品とトラップの配置を考えながら、魔王城の階段を上っていく。螺旋階段にした方がいいか。いや、魔王城の作りが変わってしまうな。螺旋階段の案はなしだな。
階段に敷くカーペットは赤色がいいか。いや、もう少し暗い赤がいいかな。
魔王の間があるフロアに着いた。
魔王の間までの廊下の両側にはおぞましい悪魔の石像を配置しないと。あとここで、BGMを重低音のBGMに変更しよう。それでこのフロアには魔王が居るとプレーヤーに感じ取ってもらわないと。
魔王の間のドアを開き、中に入る。
魔王の間の奥には玉座に座る魔王グランテが居る。
魔王グランテは鬼のような恐ろしい顔をして、全身に鋼の鎧を身に纏っている。全身10メートル。攻撃は土の魔法。最初のボスを予定。
グランテが座る玉座の横には巨大なカラスが入った鳥かごを置いている。
「うーん。サイズ感違うな」
カラスのサイズが巨大過ぎる。これだったら、このカラスがグランテを倒してしまう。
鳥かごとカラスのサイズを小さくするべきか。でも、それをすれば迫力がなくなる。
「おい、桃愛。聞こえるか」
現実世界に居る同じゲーム製作チーム・ルベウスの香取桃愛(かとりももあ)に話しかける。
「はーい。聞こえておりますとも」
空中にモニターが出現した。そして、そのモニターにピンクのセミロングヘアーの桃愛が映っている。
「この魔王の間のサイズとグランテのサイズを大きくしようと思うんだけどいいか?」
「いいとも」
桃愛は元気よく言った。
「簡単にOK出すなよ」
「だって、そこは遊ちゃんの領分じゃん。遊ちゃんがいいと思うならそれでいいよ」
「まぁ、たしかにそうだな」
「それにさ。最終的な判断は私じゃなくて、真珠(しずく)ちゃんがするんだからさ」
「そうでした。じゃあ、今すぐこの魔王の間と魔王グランテのサイズ変更する。サイズ変更が終わったら、そのサイズでどんな動きをするか動かしてくれ」
「はいよ。いつでも待っております」
モニターに映る桃愛はレトロゲーム専用携帯ゲーム
「おい。何ゲームしてんだよ」
「いいじゃん。遊ちゃんの指示が来るまで暇なんだからさ」
「……その通りだけど」
溜息が出た。本当に桃愛はマイペースだ。シナリオやキャラクターデザインとかは超一流なのにそれ以外の事は平均以下だ。まぁ、見た目は平均以上だな。桃愛のルックスが平均以下って言う奴は高望みしすぎだ。二次元しか見ていないやつだ。
「じゃあ、待機しております」
桃愛は《ヴィレロ》の画面を見ながら言った。
「設定変更を始める。魔王グランテのサイズを10メートルから20メートルに変更。そして、魔王の間を倍のサイズに。それに伴い魔王城の大きさもそれに合うように変更。以上だ」
「変更点を確認しました。変更を始めます」
機械の声が聞こえる。
視界に映るものがどんどん変化していく。仮想空間でしか見れない光景だな。これが現実世界で起これば一大事だ。自分自身の調子が悪くなって、幻覚を見てしまったのかと思ってしまうだろう。
「変更が終了しました」
魔王グランテと魔王の間のサイズが変わったおかげで、鳥かごとカラスにもインパクトがある。これならプレーヤーもびびるだろう。
「桃愛。それじゃ、頼む」
「承知。バトルスタート」
モニターに映る桃愛は言った。すると、玉座に座っていたグランテが立ち上がった。
でかいな。20メートルは迫力と圧が凄い。求めていた感じがする。
魔王グランテの足元に魔法陣が現れる。そして、魔王グランテが俺の方に掌を向ける。
すると、床から岩の波が出現して、俺の方に向かって来る。
「おい。桃愛。ちょっとストップ」
魔王グランテの技まで大きくなってるじゃねぇか。このままだったら避ける方法はないぞ。
モニターに映る桃愛はゲームに夢中になっていて、俺の声なんて聞こえていない。
「お、覚えとけよ。桃愛」
魔王グランテの岩の波が直撃して、壁に激突した。
身体全身に痛みが走る。もう少しダメージを減らさないといけないな。それに岩の波や他の技のサイズも。そうしないと、魔王グランテの技が全弾命中してしまう。
魔王グランテはまた魔法を撃とうとしている。
「きょ、強制終了だ。現実世界に帰還する」
「承知しました」
機械の声が聞こえる。その次の瞬間。身体全身が光に包まれ、意識が遠のいていく。
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