「小説」に愛された私

あ・まん@田中子樹

「小説」に愛されたある女の話


 子どもの頃から本を読むのが好きだった私。

 書いてもいない頃から小説を書くのを仕事にしたかった私。

 小学6年生の頃に余ったノートに小説を書いて友人に褒められた私。

 中学1年生の頃に他の友人に「気持ち悪い」と言われて書かなくなった私。


 大人になって小説を読まなくなった私。

 結婚して子どもを授かってあっという間に時間が過ぎた私。


 それは急にやってきた。

 何の前触れもなく「小説」に叱られた。

 小説を書け・・・・・って……。


 車に轢かれて命を取りとめた私が病院で目を覚ました日に見た夢。

 そこで私は一度、スマホで小説投稿サイトに会員登録した。

 毎日、自分の思い描いたキャラをどう動かそうかと夢想した。

 でも、それは夢をみるだけで行動には移さなかった。


 事故の後遺症で身体が自由には動かせない私だったが、頑張って社会復帰した。

 家庭も仕事もうまく運び出して数年、私はやがてキャラ達を夢想しなくなった。


 そして、もう一度「小説」に叱られた。



小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け、小説を書け……。



 夢を見た次の日、私は体調がおかしくなっていた。

 病院へ受診したらそのまま入院した。

 検査の結果、難病だった。

 退院がとても厳しい状態。

 半年は入院して様子を見ましょうと説明を受けた。


 私は主人が使わなくなった回線の切れたパソコンを病院へ持ってきていた。

 頭の中で急速に「世界」が作られていくのを感じた。

 入院生活が朝から晩まであっという間だった。


 1週間後、医師との面談で信じられない説明を受けた。

 数値がとても良くなって、明日にでも退院できます、と。


 翌日退院した私は古いパソコンからデータを移して、その日のうちに小説投稿サイトへ小説を投稿した。


 それから2年。

 私は365日、ほぼ毎日小説を書いている。


 小説を書かないと「あの声」が聞こえてきそうで怖い。

 最近は小説が私に「なにか」を書かせたいのではないか? と思うようになってきた。






 私は「小説」に愛されている。

 たとえそれが歪んだ愛だとしても。






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