59話

ノーアウトランナー1塁で

8番黒岡が右打席に入る。

点差は4点

1球目、アウトコースにスライダーが投げられる。

黒岡さんは引っ張った。

打球は三遊間に転がる。

ショートの川村さんが逆シングルでボールを捕ったのが見えた。

僕は急いで2塁に向かう。

ショートの川村さんはジャンピングスローで2塁に投げる。

セカンドがとって、判定はアウト

もっと早くスタートしていたら結果は変わっていたのかもしれないと

反省した。

1アウト1塁となる。

僕はベンチに行くと

「ナイスヒット」安藤が言った。

「どうも」僕は返事をする。

「まだ、1アウトだから分からない」安藤が言った。

「いや、こっからは無理だよ。観客も帰っている人がいるし

もっと早めに走ったら2塁セーフだったかもしれない」僕が言った。

「いや、それは無理だったと思う。ショートの川村さんのナイス判断だったことで

いいと思うけど。早めにスタート切っててもアウトだったし、

黒岡さんが打球を打った時の柊のスタートのタイミングは合っていたと思うけどね」

「そうか」

「柊は1軍スタメンでちょっと張りつめてるんだよ。」安藤が言った。


1アウト1塁で

ピッチャーの横山に代わって

 長妻が左打席に入った。

初球、インコースのストレートを引っかけてファーストゴロになり、

ファーストが2塁にいるショートになげて、そこからショートが1塁に投げた。

ダブルプレーとなり試合終了

横浜ファンは溜息をついた。

あっさりと試合が終了して

福岡チーターズが4対0で勝利となる。


ベンチに戻ると

「今日は1点も取れなかったな」小久保さんが言った。

「そういう日もあるんですね」僕は言った。

「1点も取れないときは流れが悪いからね」小久保さんが言った。

「今日はヒット1本でした。」

「ヒット1本打てたら十分だろ、打てない日も結構あるからな」小久保さんが言った。

「守備はミスなかったので良かったです。」

「そうそう、柊は守備が良ければ評価されるから」小久保が言った。


今日の成績は、4打数1安打

合計 14打数 6安打  1本  5打点

打率は、428


打率を見るとかなりいいが、打席数が少ないからだ。

少ない打席数で打っていることには変わりないが。



寮に戻ると中条がいた。

「柊、ゲームでもしないか」中条が言った。

「ああ、いいけど」僕は言った。

大〇闘ゲームを始めた。

どちらもそこまでゲームはうまくないので

白熱した戦いになった。

殴っては殴られての繰り返し

最終的に僕が勝った。


「最近野球に慣れてきた?」僕が聞いた。

「2軍の試合に出れることが増えたから、慣れてきたかな」中条が言った。

「横浜ゴールデンウルフズは、最近負けたり、勝ったりしているから

交流戦6位以内には入りたいよね」

「最近、1軍の試合見てないな」中条が言った。

「村上とかどうなの、2軍で打率残してる?」僕が言った。

「鬼沢さんがいるから出たり出なかったりしているよ」

「中条もセカンドの争いに勝てよ」僕が言った。


自分の寮の部屋に戻って、

僕は休んでいた。

明日は小久保さんと魚釣りである。

楽しみだなと思った。


次の日、

6月10日

小久保さんと駅前で待ち合わせをして

車出迎えに来てくれた。

釣竿も貸してくれるのでありがたい

「柊、釣り勝負な。釣れなかった方が今日の晩御飯おごりな」小久保さんが言った。

「え、小久保さん釣り上手ですよね」僕が言った。

「釣りは運もあるから大丈夫」小久保さんが言った。


小久保さんが車を走らせて、横浜の海釣り公園に向かう。

僕は釣りはやったことはあるけど、最近していない

「なんか音楽でも流すか」小久保さんが言った。

「じゃあ、最近の曲で」僕がいう。

小久保さんが音楽を流した。

最近、話題の曲である。

「最近のアーティストも色々でてきて、流行りの曲が分からなくなったわ」小久保さんが言った。

「でも、今流れている曲は知っているんですよね」僕が言った。

「ああ、音楽のプレイリストに入ってる」

「でも、小久保さんが言っていることは分かる気がします。

年間で流行った曲と聞くと色々ありすぎてわからないって感じです」僕が言った。

「今度、キャンプでも行くか」

「キャンプいいですよね。火をずっと眺めてたいです」

「そろそろ、着きそうだよ。」小久保さんが言った。


駐車場に車を停めて、釣り施設に入っていった。

かなり車が停められている

今は朝8時だ。

「釣りはね。朝早い方がいいらしいからね、朝は釣れるっぽいよ」

「朝、6時からいる人いますもんね」

「8時でいいでしょ」小久保さんが言った。

「そんなガチ勢じゃないですからね」


奥の方に行って、空いている場所を探した。

「お、あそこ空いてる」小久保さんが言った。

僕たちは空いてる場所に座って釣りの準備を始めた。

今日はサビキ釣りである。

初心者でもできる釣り方である


サビキ釣りは回遊魚を釣りやすい

マキエカゴをつけて、餌を入れる。

餌はアミエビを使う。

小久保さんからサビキ釣りの仕方を聞いた

まず、餌をカゴに詰めて海に投入

仕掛けを沈めてマキエカゴが海底に着いたら、リールのハンドルを数回巻いて

海底から50cm~1m程浮かせる。

そして竿をゆっくり大きく持ち上げたのち、道糸を張ったまま竿先をゆっくり下げる。

このときにマキエカゴからアミエビが放出され、アミエビと勘違いした魚が

サビキバリに食いつく。


「サビキ釣りは、小型回遊魚のアジやイワシ、サバが釣れる」小久保さんが言った。

「もっとでかいの狙わないんですか。カサゴとか」

「カサゴもたまに釣れることがある」

「とりあえず、まず1匹釣りましょう」僕は言った。


2人で30分間糸をたらして待ってるがなかなか反応がない

隣で釣っている人は1匹アジが釣れていた。

「俺らにも当たりが来ないかな」小久保さんが言った。

「隣の人が釣れているから釣れる可能性はありますよ」僕が言った。


僕は来ないかなと糸をたらしていると

竿に反応があった。

魚が食いつくと、竿先が揺れて手元に感触が伝わってくる

僕はそれを感じた。

竿を立てて、一定のスピードでハンドルを巻いて回収し、

ゆっくりと引き上げる。


海面から魚が顔を出した。

「おお、アジだ。やるじゃん柊」小久保さんが言った。

リールを巻いて、釣りあげた後、すぐに魚の胴体を持って

魚の口に刺さった針を抜いて水入った魚を入れるクーラーボックスにアジを入れた。


「こっから、どんどん釣るぞ」小久保さんが言った。


僕は竿を立てて、地面に置いて休憩した。

海は、青く揺れている。

太陽が海を照らしているが

朝なので寒い。

上着を着ている。

遠くの方を見ると船が行き来している。

大型の船で何を運んでいるんだろうと思った。

海の中には魚が泳いでいる。

けど、実際には目では見えない。

海の中を覗いても真っ暗だからだ

たまに魚がうっすら泳いでいるところが見える。

魚釣りに来ている人たちは何時間も魚を待つ。

忍耐力が必要だ。

1匹も釣れない日もあるらしい。

今日は1匹釣れたので最低限は釣れている。

海の向こう側を見ると地平線が見える。

こんなにも広大な海に僕たちは魚を釣ろうとしている。

たまには魚を追いかける日も面白いなと思った。

野球ボールは今年たくさん追いかけた。

去年ドラフト会議で2位に選ばれて歓喜した瞬間を

いまも覚えている。

あの時、どんな順位でもいいから選ばれたかった。

ショートで守備もこなして、打率も3割は超えていた。

それでも選ばれるかは不安だった。

もちろんスカウトの人も来ていた。

プロという1流の舞台に立つにはドラフトで選ばれるしかない。

ドラフト2位で選ばれた時、ものすごくうれしかったし、

横浜ゴールデンウルフズで良かったと思っている。

入団あいさつに1軍監督の伊藤さんが来たときに

テレビで見ている人だと思った。

そして新人同士お互いに挨拶をして練習したり

寮で話したりして仲良くなった。

練習試合では調子がよかった。

1軍のオープン戦でも260台で結果を残した。

けど、2軍公式戦が始まってから打率はみるみる落ちていき

1割台になった。

そこから、川田さんのアドバイスや

自分で苦手コースをカットする技術を磨いていき

徐々に成績が戻っていき、

成績が安定してきた。

同期と楽しく過ごせたし、

ドラ1の安藤の背中を追いかけて頑張れた。

同期とは、鈴村が大会などを企画してくれた

おかげでカート大会、野球ゲーム大会ではものすごく盛り上がった。

色々な人の支えで1軍の舞台に立っている。

長々と話したけど、今が一番の踏ん張りどころであるということだ。

小久保さんが魚釣りに誘ってくれたおかげでリフレッシュできている。


「お、俺も釣れたかも」小久保さんがリールを巻きながら言った。

海面から魚が出てきた。それも2匹

「アジですね」僕が言う。

「よし2匹だ」

小久保さんと僕とで協力して釣った魚をクーラーボックスに入れる。

「これで、2対1で俺が勝ってるな」小久保さんが言った。

「まだ、1時間立ってないですからわからないですよ」ぼくが言った。

「魚釣りって暇だな。」

「釣れた瞬間が楽しいんですよ。」僕が言った。

「柊は魚釣りはまったか」

「こういう休日もいいなと思って」僕が言った。

「そうかそうか」小久保さんが言う。

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