57話
ゲームが終わって、ロッカーに戻ると
何やら騒がしかった。
「おい、佐伯。俺もバッグに消火器入れただろ。お前は何をしてるんだ」松田さんが言った。
「え、自分じゃないですよ。誰かが入れたんじゃないですか」佐伯が言った。
「こんないたずらをするやつは佐伯しかいない。ほら謝ってもらおうか」松田が言った。
「いやですよ。僕じゃないですから」佐伯が逃げていった。
「待て」松田が追いかける。
「佐伯さんいつもこんなことやってるんですか」僕が小久保さんに聞く
「空いている時間があったらいたずらしてるね。いつもは可愛いいたずらなんだけどね」小久保さんが言った。
「いつもすごいいたずらしているのかと思いました。」
「さすがに、今回の消火器のいたずらはやりすぎたな」小久保さんが言った。
ロッカーでは選手たちが集まっている
「黒岡、最近ヒット打ってないようだな」サードの橋本が言った。
「最近、試合で活躍してないお前には言われたくないな」黒岡が言った。
「お前がしっかりピッチャーをリードしてたら昨日の試合は勝てた」橋本が言った。
「ピッチャーの制球力が悪いのが問題なんだろ」黒岡が言った。
「そこは、キャッチャーが頑張るべきだろ」橋本が言った。
「じゃあ、橋本、昨日のチャンスでの凡退はなんだったんだよ
あそこで打っていれば勝てたかもしれないんだぞ」
「バッターっていうのは、10打席たったら3安打ぐらいしか打てないんだ
お前もあそこに立って打てたのか」橋本が言った。
「俺なら、打てたね。」黒岡が言った。
「それは、実際に立ってみないとわからないだろ、昨日の前谷が失点したのも
お前の配球が悪かったからじゃないのか」
「なら、お前がキャッチャーをして見ろ、できもしないのによく言えるな」
「なんで俺がキャッチャーやんないといけないんだよ」
「お前が煽ってきたからだろ」
橋本さんと、黒岡さんが喧嘩をしていた。
「あの2人、よくケンカするんだよ」小久保さんが言った。
「結構罵りあっていたけど、大丈夫なんですか」僕は言った。
「大丈夫大丈夫。それに高見さんがいるから」
高見さんが2人の喧嘩をとめていた。
「今日の試合は交流戦で福岡チーターズとの試合はこれで最後だぞ。
2勝1敗で勝とうと監督の伊藤さんが言っていたじゃないか
それを無しにする気か。」高見さんが言った。
高見さんは、横浜の主砲であり、キャプテンであるので
2人は言うことを聞いておとなしくなった。
「さすが、高見さんですね。」僕が言った。
「あの人は横浜のスターだから、野球で高見さんに勝てる人は
ほとんどいないから、高見さんに文句言える人はいないぜ
それに、キャプテンとして頼もしいからな」小久保さんが言った。
ローカールームの端っこの方で楽しそうに話している安藤を見た。
「安藤、明日は彼女と遊ぶのか」長妻さんが言う。
「明日は休日なので遊園地にでもと」安藤が言った。
「彼女いいな。ほしいな」園田さんがうらやましそうに言った。
「園田さんは、キャバクラとか行ってるんですか」安藤が言った。
「無理無理、プロ野球選手だよ。キャバクラ行ってるのを
誰かに見られたら、ファンが減るよ。」
「園田さん遊んでいそうで、しっかりしてるんですね」安藤が言った。
「そうそうしっかりしてるんだよ」
「明日、何しようかな。美術館でも行こうかな」長妻が言った。
「長妻ってそういうの好きだっけ」園田が言う。
「いや、最近野球ばっかりで少し学識広げようかなと」
「無理だって、長妻は美術の知識なんて学んでもすぐ忘れるんだから」園田が言った。
「園田さん僕を見くびってますね。意外と勉強できるんですから」長妻が言った。
「あれ、この前1軍の試合でサインミスで盗塁アウトになったよね、あれあれ」
園田さんがいじる。
「いや、あれはちょっとサインの動作がはやかっただけです。僕は賢いですから
コーチのサインの出し方が悪かっただけです」
「へぇ、じゃあ英語とかしゃべれるの。しゃべってみてよ」園田さんが言った。
「いや、しゃべれないです」
「勉強もできて賢いのに英語ができない。あれあれやっぱり長妻は美術館に行かない方がいいんじゃない。最近、いいハンバーガー店が駅の近くにできたらしいからそこに行っておいでよ」
「いや、僕は美術館に絶対に行きます」
「そんなに行きたいのなら彼女連れて行けば楽しいよ」園田が言った。
「彼女僕、いないんですよね」
「それなら、作り方を教えようか。まずは横浜駅の近くに行って
女の子に声をかけてからがスタート。ナンパが成功したら
喫茶店とかに行って、自分の今、やっていることについて話す。
プロ野球選手で今、1軍にいて試合してるんだと言えば
女の子の目が、ハートになって近寄ってくるよ。
で、長妻くんかっこいいとか、色々おごってとか言われて
彼女ができる」
「ナンパするところまでは分かりましたけど
プロ野球選手やってることをいうと、お金だけに目をおかれて
上手くいきそうにないです」
「それなら、横浜ファンを狙えばいい。
かわいい子結構いると思うよ。横浜ファンのユニフォームを着た女の子に
近づけば、長妻選手ですよねって声をかけられて、そこから仲良くなれば」
「なんか球団に申し訳ない気がします」
どうやら、園田さんが先輩なので、長妻が言いまけている。
僕は、この3人の会話を近くのソファで聞いていた。
なんだか楽しそうな会話だなと思った。
園田さんは、結構もてそうな顔をしているなと思ってたけど
けっこうチャラいのかもしれない。
女の子の口説き方とか言っていたから
小久保さんはトイレに行っている。
僕は試合が始まるまで、音楽を聞いた。
ロッカールームで集合と声がかかって集まる。
1軍監督の伊藤さんがでてきて
スタメンが発表された。
1番 佐伯 センター
2番 小久保 セカンド
3番 橋本 サード
4番 高見 レフト
5番 松田 ファースト
6番 安藤 ライト
7番 柊 ショート
8番 黒岡 キャッチャー
9番 雨宮 ピッチャー
「相手は、交流戦8位のチームだ。うちは
まけてられないぞ。
交流戦5位以内を狙う。
6勝5敗で現在の順位は、7位だ。
特に先頭、佐伯頼むぞ」1軍監督の伊藤さんが言った。
試合前、30分前になった。
「柊は今日もスタメンか。」安藤が言った。
「安藤も今日スタメンだね。オリックス戦で活躍してたから
監督もスタメンに入れたんじゃない」
「じゃあ、なんで昨日の試合はスタメンじゃなかったんだろう」
「それは監督に聞いてみないとわからないな」僕が言った。
「福岡チーターズは打線がいいよね。けっこう得点取られてるよね」安藤が言った。
「そうなんだよ。けど接戦だったら勝てる気がする」
「それは、1戦目の松田さんのサヨナラホームランがあるからわかる」安藤が言った。
「次の試合スタメン落ちしないようにがんばろう」
「ヒット2本打てるようにがんばる」安藤が言った
その後、スタメン発表が行われた。
福岡チーターズ
1番 星野 セカンド
2番 足立 サード
3番 川村 ショート
4番 秋元 ライト
5番 森野 センター
6番 近岡 レフト
7番 小松崎 キャッチャー
8番 新堂 ファースト
9番 藤橋 ピッチャー
試合が始まった。
1回表、福岡チーターズの攻撃
1番、星野が右打席に立った。
ピッチャーは雨宮
初球ストレート150kmをバッターの星野が空振りをする。
2球目、アウトローのスライダーを空振りして2ストライク
3球目、インコースのフォークボールを打たれて
レフト前ヒットとなる。
ノーアウトランナー1塁でえ
2番 足立が左打席に入る。
初球、バントの構えをしてそのままバットをボールに当てた。
打球はサード方向に転がって、橋本さんがボールを取って、
ファーストに投げる。
これで、1アウトランナー2塁となった。
3番川村が右打席に入る。
僕は少し定位置より深めに守る。
常田さんのアドバイスでショートは守備範囲が広ければそれだけアウトにできると助言をもらった。深く守れば守備範囲が広くなる。
しかし、これには欠点があり、ボテボテのゴロを打たれてしまうと
内野安打になってしまう可能性がある。
だから、少し深めに守ることにした。
初球、ストレート150kmがアウトハイに決まりストライク
2球目、ピッチャーの雨宮がインコースにスライダーを投げる。
バッターは一瞬腰をのけぞった後、ボールを見逃した。
ストライクと審判が宣告する。
2ストライクとなり、
3球目、高めのまっすぐをバッターの川村が振りぬいた。
打球は高々と上がって、左中間にフェンス直撃となる。
僕は中継にいくために走った。
レフトの高見さんが鋭い送球を2塁ベースにいる小久保さんに投げた。
僕は中継に行ったがこれは取らない方がいいだろうと思いスルーした。
2塁ランナーの川村さんが2塁ベースを踏んだ時後に
セカンドの小久保さんが送球を取ってランナーの川村さんの足にタッチした。
判定はセーフとなり
タイムリーツーベースヒットとなった。
福岡チーターズが1点を入れて
1対0となる。
なおも、1アウト2塁で
4番の秋元さんを迎える。
秋元さんは右打席に立った。
僕はさっきよりも深い場所を守る。
初球、アウトコース150kmのストレートを流し打ちをした。
打球はライナーでセカンド方向に向かう。
セカンドの小久保さんが真正面でボールを取って
2アウトとなった。
2アウトランナー2塁で
5番森野
左打席に立った。
初球、インコースのストレートをバッターの森野は空振りをした。
2球目、アウトコースのスライダーを空振りして2ストライク
3球目フォークボールをバッターの森野は見逃したが
ぎりぎり低めに決まっていたようで
見逃し三振となった。
3アウトチェンジでこの回は
1点を取られる。
1回裏横浜ゴールデンウルフズは
無得点に終わった。
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今日は7話以上更新しました。
更新していない日でも見てくれる人がいるので
作者としてはうれしいです。
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