捧ぐ断片、無意味とは言えずに


 一人殺した。

 あなたの最も憎んでいた人だ。

 あなたがこの手紙を受け取る頃には、私はもう処刑されているかもしれない。運が良ければ自決できるだろうが、そううまくはいかないだろう。最愛のあなたに、この手紙を最後に捧げる。


 あなたが復讐のために生きねばならなかったこと、しかし大勢の声に耳を傾ける優しさが、救いの手を差し伸べる強さがあったこと、そしてこの二つが共存することで、あなたを徐々に蝕んでいったこと、知っていたのに、私はいつだって側にいたのに、何もできなかった。かけた声は虚空に溶けて、差し出した手は無を掠めた。私は無力だったのだ。どれだけ深く謝っても仕方がない。終わってしまったのだ、全て。

 あなたに何度、あなたが生きているだけで私は幸せだと言ったことか。

 生涯で、これほど大きな間違いはないだろう。あなたの生きがいは、目的は、意味は、復讐で、私の言う、動作としての「生きる」とは全く意味が異なっていたことに今更気づいた。なんと情けない。私は日々、無意識にあなたを苦しめていたのだ。私がいなくなった今、あなたが重圧からの開放感や、自由の匂いを感じていることを、心から祈っている。


 私はあなたの銃になることができて、本当に嬉しく思う。私は胸に一つ銃を携えていれば、少し安心する。いざとなれば、と覚悟を決めることができる。私は、その小さな脳みそと視野しか持たなかったが、あなたの懐に収めてもらえたと感じている。あなたからの返信が読めないのを良いことに自惚れた口を聞いたが、弔いと思って、どうか笑ってこの手紙を捨てて欲しい。


 どうかあなたが、あなたの胸に燻る物を全て捨て去ることができますように。

 あなたにとって、大切な人ができますように。

 あなたが、満足して、笑って生を全うすることができますように。

 どうかご無事で。

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