第20話 アイドルユニット結成

涼宮ハルヒのアイドルプロジェクトが始動してから、早くも数週間が経過した。ハルヒはダンスレッスンでの挫折を乗り越え、今では少しずつコツをつかみ始めている。しかし、アイドルとしてステージに立つためには、まだ準備が整っていない。そんな中、今日の課題は衣装デザインだ。


部室に集まった俺たちは、ハルヒの新たな指令を受けることになった。ハルヒはテーブルに広げた雑誌やファッションカタログを見せながら、目を輝かせて語り始めた。


「さて、次は私のステージ衣装を作るわよ! アイドルにとって衣装はすごく大事だからね。完璧なステージを作り上げるためには、私にピッタリの衣装が必要よ!」


ハルヒのテンションはいつも以上に高い。それもそのはず、彼女にとって「衣装」はただの服ではない。アイドルとしての自己表現そのものであり、自分の個性を最大限に引き出すための重要な要素だと感じているのだろう。


俺はハルヒが机に積み上げたカタログの山を見て、軽くため息をついた。「またすごい量だな…衣装なんてそんな簡単に決められるのか?」


「もちろんよ! ステージ衣装なんて、センスとインスピレーションで決まるのよ! さあ、みくるちゃん、あなたがデザインしてくれるんだから、しっかり頼むわよ!」


ハルヒは満面の笑みで朝比奈さんの方を向いた。朝比奈さんは、相変わらず困ったような顔をしている。


「えぇっ…わ、私が本当にデザインするんですか? そんなこと、今まで一度もやったことがなくて…」朝比奈さんは手をもじもじさせながら、明らかに自信なさげな様子で答えた。


「大丈夫よ、みくるちゃん! あなたのセンスなら絶対に素敵な衣装が作れるわ! 私は信じてるんだから、あとはあなたに任せるわね!」ハルヒは全く疑うことなく断言する。


朝比奈さんはその言葉を聞いてますます困惑した表情を浮かべていたが、ハルヒの熱意に押されて、ついに観念したようだ。「わ、わかりました…できる限り頑張ってみます!」


「そうこなくっちゃ!」ハルヒは嬉しそうに笑って、さらにカタログを積み上げる。「じゃあ、これ全部参考にして、素敵な衣装を考えてね! 色もデザインもすべて自由にしていいわ!」


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その後、朝比奈さんは部室の隅でせっせと衣装デザインに取り組み始めた。何冊ものファッション雑誌やデザインカタログを読みながら、ノートにスケッチを描いていく。俺はその様子を見ながら、彼女の頑張りに感心していた。朝比奈さんは不安そうな顔をしていたが、実際に手を動かしてみると、スケッチは思ったよりも上手だった。


「意外と本格的だな…」俺は彼女の描いたスケッチをちらりと見て、思わずつぶやいた。


「ほんと、みくるちゃん、すごくセンスがいいじゃない! これなら素敵な衣装が作れそうね!」ハルヒも感心しながら、朝比奈さんのデザインを褒めた。


「そ、そうですか? ありがとうございます…でも、本当にこれでいいんでしょうか…」朝比奈さんは少し照れながらも、褒められたことに少し自信を持ち始めた様子だ。


「完璧よ! 私がステージに立つ時に、その衣装を着たら、絶対に目立つに違いないわ!」ハルヒは目を輝かせながら断言する。


その瞬間、ハルヒは何かを思い付いたように突然手を叩いた。


「そうだ! みくるちゃんだけじゃなく、私たち全員でアイドルユニットを作りましょうよ!」


「え?」俺はその言葉に驚いて声を上げた。まさか、ハルヒがそんな提案をしてくるとは予想外だった。


「どういうことだ、ハルヒ? お前一人でアイドルになるんじゃなかったのか?」


「それじゃつまらないでしょ! 今流行っているのは、グループアイドルよ! だから、私たち全員でユニットを組んで、一緒にデビューするの! どう? 面白そうでしょ?」


ハルヒの提案に、俺は思わず頭を抱えた。まさか、SOS団全員がアイドルとしてデビューするなんて話、誰が予想できただろうか。


「待て待て、そんな簡単にユニットなんて作れるわけないだろ。それに、俺は男だぞ? 男がアイドルユニットに混ざってどうするんだ?」


「それが面白いのよ! 男女混合ユニットなんて他にはないでしょ? だからこそ、インパクトがあるわ!」ハルヒは全く意に介さず、自信満々に答える。


「いや、インパクト以前に問題が山積みだろ…」俺は何とかしてこの無茶な提案を止めようとしたが、ハルヒは聞く耳を持たない。


「それに、みくるちゃんと有希も一緒にステージに立てば、絶対に素敵なグループになるわよ! みんなで踊って歌って、最高のパフォーマンスを見せるのよ!」


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俺は長門の方を見たが、彼女はいつものように無表情で、本を読んでいるだけだ。ハルヒの提案についてどう思っているのか、まったく反応がない。いつも冷静な長門なら、この突拍子もないアイデアには何か言うかと思ったが、どうやら彼女は何も気にしていないようだった。


「おい、長門。お前、本当にこんなアイドルユニットに参加するのか?」俺が尋ねると、長門は淡々と「問題ない」とだけ答えた。


「問題ないって、お前…まあ、いいか。」俺はさらに突っ込む気力を失って、その場で諦めた。


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「じゃあ、決まりね!」ハルヒは満足げに頷き、さっそくユニット名を決めることに夢中になっていた。


「うーん、何かインパクトのある名前がいいわよね…そうだ! **『SOSスターズ』**なんてどうかしら? SOS団の活動をもっと広げる感じで、ぴったりでしょ!」


「いや、それはそのまんまじゃないか…」俺は呆れながらもツッコミを入れたが、ハルヒは「いいじゃない、わかりやすいわよ!」と全く気にしない。


「これで決まりね! 私たち、SOSスターズとしてデビューするわよ! まずは衣装を完成させて、次に曲を作って…あ、そうだ、長門、有希! 曲の進み具合はどう?」


ハルヒが長門に視線を向けると、長門は無言で本から顔を上げ、ポケットからUSBメモリを取り出して差し出した。


「曲は完成した。」長門は簡潔に言うだけだったが、ハルヒは目を輝かせてそのメモリを受け取った。


「さすが長門! やることが早いわね! これで曲もバッチリだわ!」


俺は驚きを隠せなかった。まさか、本当にもう曲ができているなんて、長門は一体どれだけ有能なんだ。ハルヒの無茶な要求にいつも冷静に応える彼女には、頭が上がらない。


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こうして、涼宮ハルヒのアイドルユニット「SOSスターズ」が正式に結成された。ハルヒの勢いは止まらず、俺たちは彼女の夢を実現するために巻き込まれていく。


朝比奈さんは衣装デザインを進め、長門はすでに曲を完成させ、古泉はプロモーションの計画を着々と進めている。そして俺は、ハルヒが望む通りに、マネージャーとして彼女をサポートし続けることになった。


「さあ、これからもっと大変になるわよ! みんな、準備はいいわね?」


ハルヒは自信満々に言い放ち、俺たちは無言で頷くしかなかった。次に何が待ち受けているのか、まだ誰にも分からないが、間違いなくこれまで以上にハードな日々が続くことだろう。


「やれやれ、またとんでもないことになってきたな…」俺は心の中でため息をつきながら、それでもどこか楽しみな気持ちを感じていた。

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