第16話 五大精霊について
「私はオクヤの里の
「俺は日野運、トラック運転手だ。こちらは妹の久遠」
「ヒーラーをやっています。よろしくね、五十鈴さん」
「はい、こちらこそ」
三人は一端トラックの中に入って身体を休めていた。
「五十鈴さんって綺麗で凛々しくて格好良いですよね~。クールビューティって感じ」
「クール、ビューティ……?」
「しかも、異世界転移のチート忍者を一刀両断しちゃうなんて凄い腕前!」
「あれは単に相手が油断をしていたからです。現に3人がかりで襲われていた時は相手の手加減があっても、私は手も足も出せずに防戦一方でしたから」
「いやいや、普通は目に見えない相手とまともに戦えませんって五十鈴さん」
「そうですか? 慣れれば感覚でわかるようになるとは思いますが」
「五十鈴さん、意外と感覚派なんだ~」
「そう、かも知れませんね。これも精霊のご加護でしょう」
「精霊?」
「あ、お兄ちゃんも気になる?」
「まあな。実は俺のナヴィも精霊らしいからな」
「運殿は精霊の存在がわかるのですね。やはり、只者ではありません」
「そんなに凄いことなのか?」
「まず、人間で精霊を感知できるという者は今や全く聞きませんね。近年増えてきたと言われる異世界転移者、転生者と呼ばれる者達のうち、特別な力を授かった者は稀に精霊を使役できるとは聞いたことがありますが」
「確かにいるにはいるね。勇者さん達とパーティを組んでいた時、精霊術師の人とも会ったことがあるし。確か風の大精霊シルフを具現化して肩に乗せてた」
「申し上げ難いのですが、それはどうでしょう? 風の大精霊シルフでしたら今はオクヤの里にいるはずですから……」
「騙されてたってこと?」
「悪戯好きの精霊もおりますからね」
「はあ。そうとも知らず俺カッケーしてた訳ですね、その人は」
「ああでも。風の大精霊シルフもその口の気まぐれですから、本当にフラッと出掛けた先でその人の肩に乗ってた可能性もありそうですね」
「あはは、そういうことにしておこうかな~」
「でも! 例え普通の精霊であっても使役できるとなるとかなり凄いことなんですよ?」
「そうなんだ~。てことは、お兄ちゃんも実はそれなりなんだね」
「言い方が酷いな。便利なんだし良いじゃないか」
「確かに。例え四大精霊であってもテレビや電話を使えるようにはしてくれないもんね」
「そうそう。実用第一だよ」
(ところで、風の大精霊とか、四大精霊とやらが全く解らんのだが……)
「お答えしますマスター。エヒモセスにおいて精霊は各属性を司っており、光、闇、雷と言った精霊も含めますと様々な種類の精霊が存在することになります」
(ほうほう。それで?)
「中でも人間に友好的で広く存在を知られる各属性の大精霊は五大精霊と呼ばれます」
(あれ? さっき久遠が言っていたのは四大精霊じゃなかったか?)
「五大精霊。即ち、火・水・風・土・トラックです」
(んん?)
「火・水・風・土・トラックです」
(……何か別格なのが混ざってないか?)
「流石はマスター。このナヴィの力を正しく見抜かれるとは。確かにこのナヴィ、彼ら四大精霊と並べ立てるには余りある力を所有していると心得てはおりますが」
(あ、ああ! なるほど、早速悪戯好きの精霊がいるぞって言いたいんだな?)
「マスターは一体、何を仰っているのです?」
(え、いや……ナヴィが本気なのか冗談なのか解らなくなってきたよ)
「ナヴィは一貫して真面目でございますよ? それはもうカーナビの如く」
(あ~……まあ、そうだよな。そう言えばナヴィには最初から色々助けてもらってたっけ。疑ってすまなかったな、やっぱりトラックの精霊が俺にとっては一番だよ)
「これからも、どうぞよろしくお願い申し上げます」
(こちらこそ)
「お兄ちゃん? どうしたのお兄ちゃん、考え事?」
「ああ、すまない。ちょっと変な考え事をしていた」
「なになに? えっちなこと?」
運は返答に困った。
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