第7話 VS魔法使い
「やややヤバい! こいつはヤバい! クオン、あんた盾になんなさいよ!」
魔法使いはヒーラーを自身の前に突き出した。
「えっ!? あ、あいりさん!?」
「こいつの前じゃあんたの回復魔法なんか意味無いじゃない!」
「そ、そんな酷い」
「バインド」
「あうっ」
魔法使いはヒーラーを拘束魔法で捕え、自身と運の間に配置した。
「私が詠唱を終えるまでそいつを止めときなさい!」
そして詠唱を開始する魔法使い。
「あ〜。お前、逃げなくて良いの?」
「あんたそう言って背後から殺すつもりでしょ!?」
「あ、バレた?」
「ふざけんじゃないわよ! こんなフザケた殺され方してたまるもんですか!」
「はは。とか言って、お前もトラックに轢かれて異世界に来てたりしてな」
「ううう、うるさい! そんなに余裕があるんなら、アタシの魔法を受けて見なさいよ!」
「お、挑発か? 良いぜ受けてやる。だが俺様のトラックは固いぜ?」
「あはっ! そう言ってられるのも今のうちだけだからね……まさかやっぱ恐いから攻撃するとか言わないでしょうね?」
「俺様に二言はない」
「言っとくけどアタシ、攻撃力だけならこのパーティでも一番なんだからね」
「そりゃあ、ヒーラーと二人パーティだもんな」
「この……! 思い知らせてやる」
魔法使いの足元に魔法陣が展開した。
「待たせたわね。まさかこんな魔法を使う日が来るなんて思っても見なかったけど……世界でもこの魔法を使える人間は片手程もいないわ」
「御託は良い、早くやれよ」
「ははっ! あんた衝突の威力を自慢したいんでしょうけどね、バッカじゃないの? トラック如きが何? 隕石に衝突したって敵う訳無いじゃない! 後悔してももう遅いから! 行っけえー! メテオー!!」
しばらくして、上空に尾を引く流星が出現した。
「あ〜、確かにこれはやべーヤツなのは解る」
「あ〜良かった〜ここが敵国で。周辺の街ごと吹っ飛ばしちゃうからな〜。あははっ!」
「それは流石に関係の無い人達に悪ぃから、ちょっとぶっ壊して来るわ」
「は?」
魔法使いの疑問符を待つこと無く運はトラックで空へ飛び立っていた。
「ばばば、馬鹿じゃないの〜!?」
やがてトラックと隕石は接近し、そして……
ドゴオオオオオオッ!!!!
「ば?」
トラックは隕石を粉砕した。
「ででで、でも! 砕かれた隕石が地上に注げば……アンタのせいで大惨事よ!」
上空で無数に砕かれた隕石の欠片を追う形でトラックは反転する。
「この欠片の数……さっきのアサシンが使ってた思考加速は取得しておくべきだな。ん? 何故か既に取得してるんだが? まあいい。こいつがあれば自由旋回と合わせて……」
空を縦横無尽に駆け巡る無数の光の筋。それは細かく砕かれた隕石の欠片を更に砂レベルにまで粉砕したのだった。
「あ……あ……」
魔法使いは戦意を喪失し膝を落とした。そこへ悠々とトラックが戻って来る。
「いや〜、お前ら本当に勉強させてくれるんだな。流石は異世界の勇者様達だ」
「あはは……あははは……」
「戦意喪失のところ悪いが、意図して関係の無い人達を巻き込もうとするお前だけは野放しに出来ない、解るな?」
「はい……」
「大丈夫、お前は死ぬんじゃない。ただ異世界に飛ぶだけだ」
「ででで、でも! その瞬間、メチャクチャ痛いんですっ!」
「じゃあもう二度とトラックに飛び込むなよ? トラックの運転手にも色々あるんだ、解ったな?」
「は、はい。もう二度といたしま……」
魔法使いは異世界へ旅立った。
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