スサノワ ~SHIROUSAGI~
いやさかキッキ
ヲタサー王の着任 ~YAKAMIHIME~
はじめにいくつか言っておく
これも紙に書かれた芝居である。それゆえ、キャラクターのキャスティングは読者である諸君に委ねよう。
はじめにいくつか言っておく。これも神代の物語――しかれど、八の字ヘアーは決めていないし、貧相ファッションもキめていない。
それから、これも言っておくダイコクさまと言えば、
もちろん、もっさり
早くもタイトルロールのお出ましだ。それでは、物語をはじめよう。
スサノワ ~SHIROUSAGI~ 作 いやさかキッキ
「
地に降り立ったクロは呟いた。
『そうだね。目をシロクロさせて食べてくれたね。ぼくらのために…』
自身のインナーチルドレンが宿ったウサギのぬいぐるみへと。
「優しいヤツだよな…」
『抜けてるけどな。大事なことが抜けてるけどな』
「エベっさん…それは言わない約束よ…」
「言わないでかッ! ど~すんのさ? こんな原生林の真ん中でッ! ひょろいモヤシ
インナーチルドレンが宿って、意思ある魂を持つウサギのぬいぐるみことエベっさんは、クロへと
「とりあえず、歩くことはできるさ」
そう言って、クロはエベっさんのことをヒョイっとつまみあげると、自分の肩の上にちょこんと乗せて歩きだす。
クリーム色のYシャツに、ダークブルーなスラックスパンツ、幸いなことに足下は歩き安いスニーカーだ。背中にはバックパックも背負っている。中には、水筒にロープとナイフくらいは入っているはずだ。
ここ、アシワラノナカツクニに入ったことで、クロは初めて顕現することができた。大海原の封印の内では、半透明な身体しか持てなかった。だから、封じられていた。ボンヤリと海ばかりを眺めていた。死んでいるはずの海から流れてきたのがエベっさんだった。
誰かが、こんな自分を憐れに思い寄越されたのだと思い、その時、クロは腹を立てたことを覚えている。その怒りの感情がクロから抜けてウサギのぬいぐるみに宿ったのか、それからエベっさんは喋るようになったし、意思を持って動くようにもなった。
これも誰かのサシガネだとは思っている。でも、もう腹は立たない。クロの代わりにエベっさんが怒ってくれるから。
顕現する時に裸は困る。クロはずっと思い描いていた。動きやすい服装を。服を着ていることにホッとする。もう幽霊のような自分ではないことにも。
『どこに行くの?』
「海のかわりに森を眺めていても仕方がないだろう? 誰か居るさ。ここは人の国で、俺たちはその人なんだから」
『君は神さまで、ぼくはウサギだけどね』
「神さまなんかじゃないさ。力の源である
そう言ってクロは原生林を突き進む。時おり食べられそうな野草や木の実を採取し、
『まるっきり
嘆きながらエベっさんも、ヒョコヒョコ浮いて木の実の採取を手伝った。
「そうでもないさ。エベっさんはさりげに飛べるし、物食わないしね。エベっさん、いつもすまないねぇ…」
クロがオヨヨと感謝を伝えると、
『クロっさん。それは言わないヤクソクよ? って、食べるからね。
エベっさんは、やや憤然。クロは、
「えぇ…食うの? てか、排泄どうすんのさ?」
やや御不満だ。
『すべて力に変換しますので、要らない心配ノーセンキュー』
そう言って、エベっさんは
「ほら、エベっさんが居てくれるだけで、だいぶチートだ」
『どうゆ~ことさ?』
「殻は肥料にもなれば、燃料にもなるんだよ。それを手っ取り早く作れるんだ。ほらチートだろ?」
自分は
『胡桃ばかりは嫌だからね?』
察したエベっさんは、断固拒否。
「違うよ。エベっさんは物体を分離する
クロがそう言うと、エベっさんは再び
『ほ、ホントだ。す、すげぇ~!』
殻で作ったバイオな板と、胡桃の可食部とに分離させた。
「たぶん、穀物でも手に入れば行動食くらい作れるし、薬草から薬も精製できるかな」
『マジで? ち、チートじゃんか? 俺つえぇ~する? ハーレムいっとく?』
「しないよ」
クロは苦笑し、耳をそばだてる。
森があれば水源はある。土地は枯れていないと言うことだ。水があれば、そのそばに人が居住し里が形成されているはずだ。クロはちらりとエベっさんに視線を向け、空を指差した。
『はいはい。
エベっさんは、鬱蒼と伸びる枝々を潜り抜けて空へと飛ぶ。日の光が届いているので、今が日中であることはわかる。やがて森を空に抜け、エベっさんは周りをジックリ見渡した。少し先に滝とも見紛う川があり、その先には山が幾重にも連なっている。
「クライト
戻ってきて真っ直ぐをさして報告する。クロックポジションは、当然ながらデタラメだ。
「誰だよクライト艦長――激流かぁ~、まぁ行くだけ行ってみよう。そこにキャンプを置こうか。水がないと詰むからさ」
エベっさんは、ちょこんとクロの肩に乗り、指をさしさしナビゲーター。
しばらくも進むと、滝のような激流に行き着き、そこに辿りつく頃には、日が傾きかけていた。夜は動かない方が良い。獣が出る恐れもある。クロは枯れ枝を集めて、ナイフで皮をチマチマと剥き、エベっさんには、
「筒に加工してくれる。ファイヤーピストンを作りたいんだ」
手頃な枝を渡して加工を依頼。エベっさんは意を得たりとばかりに、枯れ枝をファイヤーピストンに加工する。
「さっきのバイオ
『はいはい』
出来上がったファイヤーピストンに、可燃性の燃料を投入し、細かく削った皮を入れ、ピストンを差し込むと空気が縮んで、たちまち発火。集めておいた枯れ枝を焚べて焚き火が完成。バックパックの中には、幸いと小鍋や食器も入っている。
ロープを太い木の幹に繋ぎ、崖をクライミングして水筒に水を確保。そこで、
「エベっさーん。ちょっときてー」
『なぁ~に? 言っとくけど、ぼくは重い物とか持てないよ?』
なにかと便利なエベっさんは、釘を差すように呆れて苦言。呼ばれたからには吐息しながら行ってやる。
「それくらいは自分でやるさ。それより、これを見てよ」
『引き抜くと王さまになる系の剣だね』
「あっ、やっぱり? どうする? 抜いちゃう?」
クロは少しだけワクワクしている。
『抜いてみたいんでしょ?』
「うん。でもさ、抜いたら抜いたでトラブルな予感もするんだよね~」
『まぁ、あるあるだよね――
「じつは
それでも、ふたりの
『さぁ、ヲタサー王よ。この剣を引き抜くのじゃ!』
「どっちかって言えば、そっちよりだけど、ヲタサー王は酷くない?」
クロが心外そうに口をすぼめ柄へと手をかけると、
『あっ、これ
磐座がガラリと崩れ、エベっさんは
「ちぇッ、
手にした剣をブンと一振り、磐座の欠片を振り捨てる。
周りを見渡してみても魔王の類いは見あたらないようだ。鞘が欲しいところだが、そんな物は当然ない。吐息をひとつ、Yシャツを脱いで、それにくるみベルトに佩いて、ロープを手繰って崖をクライム。
「
クロは冷めたジト目でエベっさんを責め、
『クロぉ~。逃げちゃダメだよ現実から~』
エベっさんは呆れたジト目でクロを責め、そんなふたりは、
「こちらヤソ
黒づくめのクニツカミたちに絶賛とり囲まれていた。少なくても人ではない。人はそれをまだ産み出してはいない。
「君たちには黙秘する権利があるが、その権利の行使はオススメしない」
茂みからする声に視線を向けてみると、ベリーなショートにキメた凛々しい女性が、数人の男たちを引き連れクロたちに警告を発する。
「とりあえず、シャツ着ていいかな?」
クロがシャツを着ようと腰に佩いた剣に手をかけると、
「状況を読みたまえ」
乾いた轟音と共に頬をなにかが音速にかすめ、ピリリとした痛みを刻み付けた。それも『人』はまだ産み出していない。
「いや、タンクトップ一枚じゃ、御目汚しかと思ってさ」
クロは軽口に状況を楽しみ、
「セクシーで
ベリーショートは、
「やはり
ゆったりとした足取りに
逃げ道は、
「エベっさんッ!」
『ハイなッ!』
背後の激流のみだ。エベっさんは脱兎でクロにしがみつき、クロはエベっさんを抱えるや崖へとダイブ。轟音――すなわち銃声が鳴り響き、鉛玉が身体をかすめるが気になどしてはいられない。
「こちらヤソ
『こちらヤソ
「闇属性な感じ? ちょっと好みぃ~」
『陰キャの間違いじゃないの? あたしは、い~や~』
ふたりの小隊長は、無線通信になにやら不穏な会話を
「
「「確保したっつってんじゃんバカ課長――略して
ヤカミの部下たちはブーイング。
「スセリ~。みんながいじめるよぉ~」
『どMのあんたにゃご
部下たちは吐息に諦めを捨て、
「「「もう。ヤだこのオクサレさまぁ~」」」
声を揃えてオヨヨと
クロたちは、磐座の元にいた。エベっさんの異能を使って、砕けた磐座を岩のカマクラに再構成。追っ手の目にはただの岩――チートもいいところだ。
状況を整理する。ここの文明はチグハグだ。原生林が繁り、拳銃や無線通信が発達している。着ている物までクロが着ている物と違いはない。声は出さない。追っ手の能力を過小評価するほど自信家じゃない。腹は減っていたが、それより欲しいのは情報だ。
僅かばかりの荷物も、敵対勢力の元に置き去りだ。
水筒が手元にあることだけは救いである。これで渇きに苦しむことはないからだ。
仮説を立てる――ナカツクニには月日がある。クロとエベっさんは、心優しい抜けた少年と共にここへきた。その彼の姿はなく、原生林が手付かずのまま文明だけがチグハグに進んでいる――彼とナカツクニ入りした月日がずれている。クロは、そう結論する。
次は、この剣について仮説を立てる。磐座に突き立てられた故は?――墓標ではない。そんな無駄をするとは思えない。材質は鉄ではない。間違いなく
ヤソと言う小隊規模の集団について考えてみる――異常性癖を持つ凛々しいベリーショートは、あの
逃がそうとした? 監視対象の自分を?――気づけばエベっさんは、結構な量の鬼胡桃を平らげたようだ。
寝入りかけたエベっさんを揺すり、殻を指差し、剣の鞘を作成してくれるよう身振りで依頼――エベっさんは
クロはYシャツを着て、出来上がった鞘を腰に差し、剥き出しの剣を鞘に収めた。
立てた仮説の通りであるのならば、
「こ、今度はなにさッ?」
居る。亀甲に縄で縛られ、海老反りに吊るされた異常性癖の持ち主が。クロはカマクラから顔を出すや、情報を得ようとした自分の失敗を心底呪った。
「スサさまの兄ぎみへの、数々のご
これは関わってはいけない人物だ。故に言葉の先を紡がせ巻き込まれる前に、
「いっ
「うるさいよ残念美人」
強めのチョップをクロは叩き込む。残念美人――もといヤカミへと。
「SMとは、相互の
「俺にヘンタイ趣味の
クロは
「へ、変顔にして辱しめるつもりですかクロさま? な、なんて飲み込みの早いお方…」
ヤカミは
クロは背中に走った
「ただれてんな~?」
エベっさん。呆れたジト目を貼り付ける。
「酷い
「また美人とッ? えっ、あたし今日死ぬの?――これは
クロはヤカミの言葉を遮るように、
「いっ痛ぁ~ッ!」
「でもいいの。もうあたしは、あなたさまのメスブタよぉッ!」
ヤカミは恍惚。
「じゃあね
エベっさんは離脱を試み、
「逃がさないよエベっさん」
クロは離脱を断固阻止。
カオス。それ以外にこの場を著す言葉は見つからない。
「取り乱してしまい、お恥ずかしいところをお見せして申し訳ございません」
「「ほんと。それな」」
取り出した神器『四畳半』の畳の上で、ヤカミはちょこんと正座し
クロとエベっさんは呆れたジト目を貼り付け、
「
尋ねる。人はまだ銃器の発明をしていないはずだ。
「左様でございます。クロさまを捕獲するための物で、殺傷能力はございません」
「捕獲――ね。俺は
敬うのか、あるいは珍獣扱いをしたいのか。そろそろ態度を明確にして欲しいものである。
「珍獣どころか伝説でございます――だってヤマツミさまの伯父御さまですよ? あのスサさまたちのお兄さまですよ?――やべ、そんな尊いお方に美人て呼ばれた。やっべ
「脱線すんな捕獲しなかった
「小官の任務は、クロさまを秘密裏にお連れすることです」
ヤカミはクロの言葉を遮るように言葉を被せ、
「あんた亀甲縛りされてたけどな。自分で自分縛ってたけどな」
四畳半は進んで行く。クロに状況を説明してくれる者の元へと。
「スサが、ここに降りてどれくらいが経つ」
「あたしたちは、第6世代です」
「ふぅ~ん」
世代交代が6回起きている。月日は存分に流れていることだろう。
どうやら、ここは神爪の力の代わりに、神器が発達した国のようだ。四畳半での移動は快適だ。ちゃぶ台の上には、湯呑みにお茶が淹れてあり、茶請けは揚げ煎餅のようだ。
剣に託された意思を察してクロは嘆息。エベっさんはオネムに御就寝。
やがて『空飛ぶ四畳半』は、一軒の小料理屋の前に止まり、
「叔父さまッ!」
クロの姿を見るや、ひとりの女性が抱きついてくる。おそらくは誰かの娘だ。弟、妹も大勢いて、自分は最初の子だ。
「伯父御だ。彼はスサじゃあない。よく似ているがな」
そう訂正する男のことを、クロは間接的に知っている。
「兄貴面するつもりはない。おまえたちと俺は基本的には他人だ。そうだな――カグチの兄のクロでいい」
「弟ぶるつもりもないさ。スサの兄のツクヨだ。はじめましてクロ」
話の通じそうな方と軽く挨拶を交わし、抱きついてスンスンする女性の対処を視線で依頼する。
「ほらクロくん困ってるから、離れなさいウカノ」
「クロくんて…まぁい~けどな…」
ウカノと呼ばれた女性はクロより少し年上な見た目。二十代前半といったところ。残念美人は中盤だ。ツクヨは後半といったところだ。もっともクロは最年長だ。なにせ最初の神子である。見た目は十代後半なのだが。
「立ち話もないだろう――ヤカミ。おまえは戻れ」
「つ、ツクヨさま? そ、そんな御無体なッ? 昨夜はあんなに――」
そこでヤカミの脳天にクロとツクヨが強めのチョップ。
「フェイクを拡散するな」
「たっだれてんな。おまえら…」
「ほらクロくん信じちゃったろ? どうすんのよ。節操のない大人に見られるじゃん?」
一方でヤカミは強めの衝撃に少し涙目。
「ドンマイ。これテイクアウトの巾着スコッチエッグとおにぎり」
「ウカノさんマジ女神――どっかのドS上司と
差し出された包みを受け取ろうとすると、
「5タットになります」
ウカノは
「おごってやるから戻れ。話が進まん」
「ウカノさん。稲荷寿司四人前追加で」
チッと舌打ちし、追加分も払ってやる。
「ヤソ第
土産を受け取ると、ビシリと敬礼しヤカミは神器に乗ってこの場を去る。
ヤカミを見送りカウンターに入って、
「
と、ウカノ。
「好きに呼べばいいさ――」
「あたしのことはウカノと呼んでください」
ウカノは食い気味。食い気味に少し驚くクロ。
「
「おぉ~叔父貴。デリカシーがないとはなにごとだ。節操もないけど…」
茶化すツクヨに、ウカノはジト目。
「じゃあ、ウカノ。ヤキソバ作ってくれないか…目玉焼きのっかってるヤツ…」
「はい。
ウカノは慣れた手つきでヤキソバをこさえる。
「状況が知りたいな。このチグハグな発展はなんだよ? 6世代は年月で――」
「三百年ってところだ」
「いやいや――駆け足が過ぎるだろ? 千年どころか三千年は必要な文明だぞ――あ、ウカノ。黄身は半熟でお願いします」
ターンオーバーしようとするウカノに好みを告げると、
「叔父さまとおんなじこと言ってる」
ウカノは楽しげにクスリ。ウカノの反応からも状況が見えてくる。6世代はスサを知らない。知っていればよく似た自分になんらかの反応を示したはずだ。
「五十年ってところか? スサが消えて…」
「別にネノクニに行ったわけじゃない――」
「なにをしているかは知らんが、スサはここに居ない――違うか?」
供されたヤキソバを一口すすり、黄身を箸で突き崩す。ソースを纏った麺に黄身をからめパクりと一口。クロは目を綻ばせて、ウカノはまたクスリと微笑う。似ていて当然だ。これはスサから学んだ食べ方だ。
「
カクリヨ――知らない単語だ。そこにエベっさん。
『ねぇ。ぼくの分は?』
ジト目で
「ウカノ。すまないけど、エベっさんの分も頼むよ」
「お、伯父御さま。なんですか…そのカワイー生き物は?」
「えっと俺の
クロが困ったように言うと、
『エベっさんはエベっさんッ! エベっさんは目玉焼きをご
エベっさんは怒ったように自己紹介。そして要求を押し通す。
「俺のでよければ、どうぞエベっさん。まだ箸を――」
「叔父貴の食いさしなんか食べたら、あたしのエベっさんが
ウカノはアンマリ。ツクヨはくすん。
「ウカノ。ターンオーバーでお願いします」
スチームドにしようとするウカノにエベっさんはオーダー。
「おぉ~エベっさん。さすが、あたしのエベっさん」
「ターンオーバーは」
エベっさんがシンパシーを送ると、
「ハードボイルド――さすがあたしのエベっさん。わかってる!」
ウカノはシンパシーに応え、目玉焼きをターンオーバー。
「「ボイルしてねぇから。焼いてるから」」
クロとツクヨがつっこむと、
「「ふぅ~、やれやれだぜ」」
ウカノとエベっさんは、かぶりをふりふりヤレヤレをする。
「あのヤソ小隊ってのは?」
ヤレヤレなふたりを措き、クロは尋ねる。
「ナンデモ屋さ――バチも当てりゃぁ、守りもする。言ってみれば人どもの親だな」
「剣が磐座に突き立てられた故は?」
「全権委任権だとさ。アメノムラクモが抜けたヤツは
そう言ってツクヨは委任状をクロの元へと滑らせた。
ヤキソバをすすり、
「俺に拒否権は?」
ダメ押しに尋ねる。
「スサだぜ? 立ってる者なら親でも使うさ――だから諦めなクロ」
現にスサの親は、ナカツクニ環境構築の真っ只中だ。
吐息をひとつ、
「これも神器か」
委任状の上に手を置くと、詳細内容が頭の中に溶け出し忽ちアラマシを把握した。
「ひとつ聞いていいか?」
「あ~、ヤカミのこと言ってる?
隣のツクヨはクロから目を反らし、と言うより顔を背け、
「伯父御さまお仕事がんばってね」
ウカノは、ターンオーバーをクロの皿にものせてやる。
供された目玉焼きを一口パクり、
「なるほどハードボイルドだ」
ホンの少しの焦げ目が、チョッぴりだけどホロ苦い。
こうして、クロのハードボイルドな毎日が始まった――『残念な仲間たちとの』と言う枕詞がこびりつくようだが。
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