星を追う魔法使い

神月りり

第1話 邂逅

まだ世界に文明が芽生え始めた頃の話。


神は人々に魔法を授けた。人々は魔法を利用し文明は栄え、各地に魔法使いを中心とする巨大魔法都市が生成された。


世界は魔法を中心に発展していく……そう思われていた。


魔法という強大な力を得た人間は次第に領土や資源を奪い合い戦争をするようになった。魔法で人が焼かれ、首を切られ、爆発し、世界各地で大量虐殺が起こる。


世界は一時崩壊の道を辿った。


みかねた神は新しい魔法……「人を殺さない魔法」を新たに人々に授ける。



この物語は、三千年後の話……




◇◇◇◇




私は一冊の魔導書を握りしめながら教壇に立った。一段高いそこはクラスメイトの顔がよく見える。教室奥に座る先生に目配せをしてから深呼吸を一つし、詠唱を始める。

静まり返った空間に私の詠唱が流れると、手に持った魔導書が一人でに開いた。明かりを消した教室内に青白い光が溢れる。

宝石を太陽に透かしたような虹色の屈折光の破片が教室の壁や床に散らばる。光の粒子が私の周りを仄かに照らしだす。

「ーー創作魔法、鳥花」

魔導書に書かれた呪文が光ったかと思うと、そこから美しい光の鳥が二羽、飛び出してきた。花びらを散らし長い尾を引きながら私の周りを旋回すると最後は不死鳥のように燃え、しかし灰が光となりその姿は儚く消えていった。魔導書からの光も消え、再び教室内は薄暗くなる。

魔導書を閉じるとたちまち拍手が起こった。少々恐縮しながらも自分の席に戻る。


「ねぇリリィ」

授業終わりに私の友達……いや多分知り合いレベルか、が私の席に話しかけに来た。

「今日の創作魔法発表会のリリィの魔法、凄かったね。クラス内投票でもぶっちぎりで一位だったし。やっぱり凄いよ」

「……ありがと。サラのも凄かったよ。あれ金魚でしょ?綺麗だった」

「リリィの鳥には敵わないなぁ。あんなに綺麗なデザイン作れるのリリィしかいないって」

そう……と返事をしようとしたが、サラは友達に呼ばれたらしくどこかに行ってしまった。私は一人取り残される。

別に彼女は友達じゃない。ただお互い創作魔法が好きで、偶然同じクラスで、この創作魔法授業の主席とその次。趣味が合うので仲良くなくてもお互いが気になってしまう。それだけ。

放課後になると私は教室内に残り騒ぐ同級生を横目に廊下に出て誰よりも早く帰路に着く。正確的にはいつも私よりもっと早い子がいるので教室を飛び出すのはいつも二番目だった。

急ぐ必要も別にない。一人でゆっくり帰ろう。そう思いながら昇降口に向かった。

「リリィさん」

いつもは私の下校が早すぎて誰もいないそこに、珍しく私の名を呼ぶ先客がいた。

「ルナ……?」

黒く長い髪の夜空に浮かぶ満月のような黄金色の双眸。私より先、クラスで一番に下校する彼女はルナ。あまり関わりのない人なのだが、私に何か用があるのだろうか。

「あなたに一つお願いがある」

初めてはっきりとその凛々しい声を聞いた。妙に大人びた彼女はクラスで浮いていてあまり他人との関わりを持っていなかった。

……私も同じなのだけれども。

「もう一度、今日披露したあの魔法を見せてほしい」

「別に良いけど……」

「ありがとう。そしたら中庭に行こう」

断る理由もなかったので二人で人気のない中庭に移動する。何もかも疑問に思いながらも鞄から魔導書を取り出し、促されるまま詠唱をし再び魔法を発動させる。光と共に花びらが散り、鳥が舞い……

「そこ!そこでストップ!」

ルナの一際大きい声が耳を通り過ぎる。彼女は鳥が通った後に生成された、消えゆく一輪の光の花を指さしていた。

「ええっ?こ、これ?」

「それ!その散ってる花びらの中に混ざってる完全体のやつ!あーっ!消えちゃった!その花だけもう一回出してほしいんだけど……」

普段の静けさからは想像できない彼女のはしゃぎっぷりでますます謎が深まる。それに、そこは何故か失敗して花びらだけ出すところを花全体が生成されてしまったところだ。そこだけ見ても何も得られはしないと思うのだけど……

謎に思いながらもそこだけならと杖を取り出して軽く呪文を唱えた。今度は解除しない限り消えない魔法で光の花を作り出す。

彼女は目を輝かせてまじまじとその花を観察する。じっくりと全方向から気が済むまで観察するとキラキラした目でこちらを向いた。

「ねぇ、もしかして、もしかしてだけどこの花、実物は白かったりする?」

「多分……白だったかな」

「日当たりを好んだり涼しい気候に咲いたり?」

「う〜ん、ごめん詳しくは知らないんだけど……」

「やっぱりベツレムの星、でしょ?今じゃ何処にも咲いてない幻の花」

彼女の双眸が真っ直ぐにこちらを捉える。

「元々数が少なかった上に世界温暖化の気候変動が原因で数が激減。唯一生存できた涼しいアラウド高原地帯は戦争で野原一面が焼かれ数年前に遂に絶滅した」

そうだったんだ。絶滅したのは知っていたけど、それまでの経緯は知らなかった。

「創作魔法は想像力の他に観察力も必要。それほど精巧な光花、写真を見ただけじゃ作れない。リリィさん、それどこで見たのか教えてくれない?」

「ええ⁉︎えっと……」

急に言われたって、最後に見たのは遠い昔の記憶だった。まだ都会の方に住んでいた時。まだこの世界に戦争が起こっていなかった時。私達が住む国と隣接する大国が何年か前から戦争をしている。

「私が小さい頃、街外れの草原にベツレムの星の花畑があって、父親に連れてきてもらったんだけど……」

本当に昔の記憶でどこに咲いてたかは思い出せない。

「ごめんね、昔のことでよく思い出せなくて……あの、ルナはなんでその花がどこにあるのか知りたいの?」

興味本位で聞いた私に彼女は何かを隠すように笑い、

「……秘密」

とだけ答えた。

「そっかぁ。力になれなくてごめんね。また、何か思い出したら伝えるから」

私は帰ろうと縮小の魔法をかけていたまるでストラップのような手のひらサイズのほうきをかばんから取り出し、魔法を解いた。たちまち元の大きさに戻ったほうきに跨り、ふわりと空中に浮く。

「ルナ、じゃあね、また明日」

「……じゃあね」

彼女に手を振り、学校の屋根よりも高いところまで上昇し家に向かう。

創作魔法発表が大成功だったし、サラとルナとも話せた。今日は良い日だ。


「ルナ、これ家で見つけたんだけど……」

次の日。一枚の写真を持ってルナに話しかけた。彼女は小難しそうな分厚い本を読んでいた。数秒経ってやっと自分に話しかけられていることに気づいたらしく、本に栞を挟んでからこちらを向いた。

「リリィさん。それは?」

その色褪せた写真を見せた時、彼女が驚いたように目を見開いた。

「ベツレムの星の花畑⁉︎」

青い空と画面を二分割する白い花。画面の外まで続く雪のように白いそれはベツレムの星の花畑。

「これは、」

「古いアルバムの中を探ってたら見つけたの。私のお父さん、写真撮るの好きだったから。家に帰ってから、もしかしたら花畑の写真も撮ってたりして……って思って探してみたんだ」

戦争に行ったっきり戻らなかった父が撮った写真。埃被った倉庫の中の段ボールから発掘されたアルバムに一枚だけその光景が写っていて、見つけた瞬間思わず叫んでしまった。しかも夜中に。とんだ近所迷惑だ。

「ありがとうリリィさん……」

嬉しそうに写真を受け取り、写真をじっと覗き込む。実は中央にピースを向ける幼い頃の私が写っているのでじろじろみられるのは恥ずかしい。

そしてなぜか裏側も観察をする。何も写ってないのに。しかし彼女は何か思うところがあったらしい。

「これってもしかして古いカメラ使ってる?現像の魔法が一昔前古いやつ」

「多分そうだよ。父親がレトロだとかなんとか言って古いのを大切にして……」

幼い当時の私にはボロい旧型のそれのあまり価値が分からなかったのだけれども。

ルナは少し考えてから言った。

「もしかしたら、この写真から位置が特定できるかもしれないです。古い現像魔法なら、魔法で撮られた位置が割り出せる……」

「本当⁉︎だったらその写真あげるよ。場所、分かると良いね」

私の善意に彼女はえ……?と驚きの目を向ける。

「良いんですか?リリィさんの幼い頃の大切な写真でしょ……?」

「だって持ってても使い道がないし。写真なら他にも家にあるから、使ってよ」

その言葉が腑に落ちたのか、それならありがたく……と絶対に割れない魔法の瓶の中に大切に入れてすぐさまかばんにしまいこんだ。

「ありがとう。本当にありがとう」

「お役に立ててよかったよ。じゃあね」

そう言ってその場を立ち去ろうとした。

「あ、あの……!」

引き留める声で振り向く。

「あの……良ければ放課後、私の家に来てくれませんか……?その、位置を割り出す魔法、一人じゃできないから手伝ってほしくて……いいえ、別に嫌なら断ってもらっても……」

「ルナの魔法、手伝うよ」

私の言葉で、微かに震えながら辿々しく紡がれるルナの声がちょっとだけ穏やかになった。

「……ありがとう」


放課後ルナに連れられて来たのは、森の中にひっそりと佇む石造りの家だった。扉を開けると、中から黒くふわふわした毛玉のような物体が僅かに空いた扉から飛び出て私たちの足元を駆け抜けていく。

「きゃっ⁉︎幽霊⁉︎」

「戻っておいでクロネコちゃん。家から出ないの」

その飛び出してきた黒い毛玉はUターンするとルナの足に擦り寄ってきた。

真っ黒い毛に光る黄色い目。ルナとお揃いの容姿のその子は黒猫だ。ルナは猫に相当懐かれているようだが一切構わず、そんな事よりもと私を家へと手招きする。動く足にも猫は必死にすりすりしている。

「か、かわいい……猫飼ってたんだ」

キャットタワー的なものが家にあるのだろうか。本当は猫好きで学校では見せない裏の猫好きの顔があり、今猫に冷たいのも私がいるからなのだろうか。そんな期待の目を彼女の背中に向けながら家に入ろうとしたとき、

「魔法の材料になるので」

「え?」

信じられない言葉に思わず声が漏れる。魔法の材料?聞き間違えだろうか。まさか目や内臓目当てで飼ってるのではない……よね?

そんなことはないと思いたかったが、家の中に広がる光景にその希望が打ち砕かれる。

「ええ……?」

ワンルームのその家の中は足の踏み場もないぐらい散らかっていて、その散らかった物がおどろおどろしい雰囲気を醸し出していた。

変色し表紙がボロボロになった古い魔導書が至る所に積まれ、その上に何かが走り書きされた紙や見たことのない花、木の実、ナニカの黒い塊。部屋の奥に置かれた机とその上の実験器具、大きな鉄鍋を中心にカオスな空間が広がっている。恐る恐る入ってみると、横の壁に付けられた棚に、謎に中の液体が緑に光る瓶が並べられていた。

「な、何これ……」

恐る恐る近づいてみると、中に赤黒い肉片が見えて……目を逸らした。

「何かあった?」

彼女は魔法でランプに火を灯しながら平然としている。

「見てはいけないものを見た気がする」

あの猫の運命をなんとなく察してしまった。

「それは火を吐くワイバーンの炎袋。横がケロベロスの心臓で……」

「アッ、もう大丈夫……」

「あ、えっとその、帰りたかったら遠慮なく言ってほしい。私一人でもできますので!ね!」

私が引いているのを察したのか、あわあわしながら「無理だったら帰って」と言ってくる。

「いや、せっかく家に入れてもらったし、猫ちゃんいるし……」

と、言いながら猫の前にしゃがむ。頭を撫でるとこの人は構ってくれると判断したのか、ルナの元を離れてこちらにすりすりしてきた。

「か、かわいい……」

随分と人慣れした猫だ。警戒心ゼロでこちらの膝によじ登ろうとしてくる。

ルナは机の上に置いてあった一冊のボロい魔導書を手に取ると、かばんから写真の入った瓶を取り出した。

「そしたら手短に終わらせるから、そのクロネコを逃さないように持っててほしい」

「う、うん。分かった」

私は猫を生贄にさせまいと、自ら膝の上に乗った猫をぎゅっと力を入れて抱く。当の本人は抱っこされて温かいのか、己が置かれている状況も知らずに丸まってリラックスしている。

「リリィさん」

「なに?」

彼女はペンと小瓶に入った珍しい白いインクを持って部屋の中央に移動する。

「私の秘密を、誰にも言わないでくれませんか?それが例えどんな魔法だとしても……」

「分かった。誰にも言わない」

「言質、取ったからね……」

そう言うとインクをペンにつけて徐に床に魔法陣を描き出した。真ん中の紋章に周りの模様。

私は息を呑んでその光景を見ていた。複雑で綺麗な曲線がペン先から床に描き出される。


最後に真ん中に写真入りの瓶を置き、一番外側を円で囲い閉じてから呪文を唱えた。

呪文に反応して魔法陣が光り、瓶がふわりと浮き上がる。

「リリィ、そこの紐とってくれない?」

「これ?はいどうぞ」

そこらへんに置かれた紐を手渡すとルナは瓶にその紐をくくりつけ、もう一端を本にくくりつける。瓶は風船のように浮き上がり本が重しになっていた。

にゃっ!と猫が腕から飛び出る。抱き直すのも間に合わず、浮き上がった瓶に飛びつきゆらゆら揺れるそれに戯れ始めた。

「クロネコ、その魔法が好きで。猫じゃらしを出す魔法とでも思ってるのかもしれない。まだ発動途中の魔法陣の中にも飛びついてくるから危ないんだよね……リリィさん、手伝ってくれてありがとう」

「ルナの助けになれてよかったよ」

「そう」

「うん」

「……」

「……」

「…………」

「…………」

「………………あの、」

目を逸らし躊躇しながらも私の方を見る。

「何とも思わないの?」

「なにを?」

「……魔法、陣」

「……あっ、線とても綺麗だね」

「ふえっ?あ、ありがと……じゃなくて!」

一瞬彼女の素の微笑みが見えた気がする。が、すぐにいつもの険しい顔に戻りぐっと体を乗り出してきた。

「……魔法に魔法陣は必要ないし、訳あって大昔に廃止された。『魔法は想像』。実体のない奇跡。だから生き物には効かない、傷つけない。『人を殺さない魔法』と呼ばれるのもそうだから」

違和感は気づいていた。魔法陣を描くのも、何かが混ぜられた見たことないインクも、生物に害のない魔法に猫の身の危険を案じたのも。

それでも私はなにも言わなかった。

「『闇魔法』……正式には旧式魔法。第一次世界魔法大戦終結以前に使われていた、『人を殺す魔法』。今使われてる魔法とは違って、人を容易く殺せる。だから今は使われてない」

「ルナは闇魔法を使った……ってことだよね」

「そう。なのになんで、貴方はそれを咎めないの?」

彼女の問いに私は言葉を詰まらせる。なんでって言われたって……

「……別に、何とも思わなかったから」

その返しに相手は唖然としてただこちらを見つめて固まっている。

「あっ!ごめんね言い方が悪かった!ルナのことがどうでも良いっていう無関心の『別に』じゃなくてその闇魔法使ったって何か害があったわけじゃないし、普通に魔法が綺麗で別に変?というか咎める意図がなかったというか……初めて見たけど綺麗だったよ闇魔法!やっぱり今の魔法と一味違うというか魔法陣使ってて本格的な魔法!って感じがしてよかった!……だから私は嫌いじゃないよその魔法」

「へぇ」

彼女は立ち上がると本がギチギチに詰め込まれた本棚の中から一冊取り出した。落ち着いたお淑やかなイメージと反して案外掃除が苦手なのだろうか。

「こんなのとかどうかな?」

魔導書を開いて呪文を唱える。

ランプの灯りが掻き消され、暗くなった家の中に魔導書の中から光の花が溢れ出る。ポップコーンが弾けたように四方八方に散らばるそれは私たちの足元を光の花畑に変える。

「凄い……綺麗……」

一輪手で掬ってみようとすると手のひらに載せた途端原型が崩れて砂のように指の間から光がこぼれ落ちてしまった。

「これも闇魔法の一つだよ」

「そうなんだ。今の魔法とあまり変わらないね」

「これはまだ序の口だから……闇魔法の方が今のやつよりもっと複雑で残酷。だから過去のものになって……」

「でもルナの魔法の花、とっても綺麗だよ!ほら!」

その場でジャンプをしてみた。着地と同時に足元の花が崩れて光の粉になって宙を舞う。猫がその光景を見て不思議そうに花に触れる。

魔法は想像。実体のない奇跡。その美しさは今も昔も変わらない。

「そう……」

彼女は花の美しさに興味がないように立ち上がり片付けをしようとする。

「そういえばさ、なんでルナはその花を探してるの?」

「完成させたい魔法があるから。今まで私ができる範囲で数多くの材料を集めてきた。最後の一つがベツレムの星。でも既に絶滅していた」

手がかりのない暗闇の中で突如訪れた思いがけない希望。

私は、彼女の希望。

「その魔法を使うとどうなるの?」

私の問いに彼女は背を向けたままだった。

「……秘密」

冷たくも、かと言って温かくもない声。

ベツレムの星を探す理由を聞いた時と同じように一筋縄では教えてくれないらしい。

「そっかぁ」

でも、と話を続ける。

「私はそのために、その魔法のために生きてきた。あなたのお陰でやっと長年の夢を達成できるかもしれない」


夢。将来の夢。 


何かやりたいこと、行きたい場所、成し遂げたいもの。

休憩の時間、談笑の声が耳に入る。


ーー私、看護師になりたいの。お姉ちゃんと同じ看護師になりたい


ーー私は魔法生物研究をしたいかな〜未知の生物見つけて私がその生物の名付け親になるのよ!


ーー俺は普通に公務員がいいわ。安定した職が一番だろ?それに仕事自体ちょーっと興味はあるからね


私はどうだろうか。

そんなもの、何一つ持っていない。

彼女のように成し遂げたい夢も。

何がしたいかなんて分からない。


そもそも、私みたいな何の能もない平凡な人間が何かをしたって世界は何も変わらない。

だから始めから何もしたくない。何もしない。

だって何も変わらないのだから……


「ありがとう、リリィ」

ルナが振り向いた時、初めて彼女と目が合った。対話に慣れていないのだろうか、彼女はこれまでずっと私の鼻先辺りを見つめて話していた。


夜のような髪に浮かぶ月の双眸。白い肌に空を跨ぐ電線のようにばらけた髪がかかる。

その黄金の眼を正面から捉えて見据えた彼女は世界中のどの魔法よりも美しかった。


それはこの世で私だけしか知らない夜空。

その空に浮かぶ二つの月はどんな未来を見据えているのか。


その果てを知ってみてもいいのかもしれない。


「ルナ、お願いがあるの。ルナの魔法の完成を見届けさせてほしい」

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