第三部 学園バトルJK
第一章 学園ロボバトル開幕
1-1
その男は
『隊長! 攻撃が当たりません……っ!』
『クソ、あいつ一体なんなんだよッ!』
部下たちの
オレンジ色が、低いうなり声をあげて
部下のロボット兵器が、手にしたレーザーカービンを連射する。
『来るな、来るな、来るな――っ!』
オレンジ色が、部下の機体へと走り迫る。
そのオレンジ色は、角ばった二足歩行型の兵器だった。この
『うわ――!?』
気付けば、部下の機体は
「距離をとれ、ジャック! そいつに近づくな!」
男はレーザーカービンを連射しながら、部下に向かって命令する。
『ムリですよ! こいつ、もう――!』
オレンジ色は風のように森の中を駆けぬけて、もう一人の部下の機体に接近。
――簡単なミッションのはずだったのだ。
男が乗っているのは、『ヴァリアント・トルーパー』と呼ばれるロボットだ。世界で最も
一方、オレンジ色は『
しかも、である。
そのオレンジ色の兵器は、超がつくほど大量生産されているイタリア製の〈ヴェスパ〉という
つまり、男たちの機体とオレンジ色の機体とでは、
『“オレンジの
「ふざけやがって!」
ロック・オン。
オレンジ色をモニターの正面に
トリガーを引く。
レーザーカービンが
――
「なぜ当たらん! クソ、クソ……ッ!」
オレンジ色の機体は、ひらりひらりと
「なにが
男が言った
「どこに……!?」
違う。
消えたのではない。
オレンジ色の機体は、ありふれた量産機は、とても弱いただの一般兵器は、
「……は?」
男のハイテク兵器の頭上を飛んでいたのだ。
『“オレンジの
男が聞いたその
『“オレンジの曲芸師”の正体は、どうやら女子高生らしい』
ふざけているとしか思えなかった。男は、走り去る
*****
チャイムが鳴って、
十月十六日。体育祭や文化祭といった
そんなクラスメイトたちには構わず、黒髪ロングヘアの
「
そう名前を呼ばれて、小鈴は顔を上げる。気付けば
「お姉さんが呼んでるよ」
「小鈴ぅ~~! やっほー!!」
小鈴は思わずためいきをついた。そもそも高二の
のろのろと席を立ち、スクバとブレザーを
「
「え~、別にいーじゃん! それよりさ」
「よくないんだけど」
「今日ヒマだから、このあとどっか遊びに行こ!」
目をきらきらさせて、ちなみが言った。しかし小鈴は、
「このあと
と短く断った。
「なんの用事?」
小首をかしげて、ちなみが聞いてくる。小鈴はもう一度ため息をついてから、その質問に答えた。
「高三の
「え」
ちなみの
「またなのーっ!?」
*****
この学校にはカフェテリアがある。と言っても、白い
「ねえ聞いて、
そして、二人の正面には、ちなみの友達である
「最近、小鈴がめちゃくちゃモテてるの! 正直こまってる!」
「そうなんだ」
ちなみが
「で、なにが困るの? モテてるならいいじゃん」
「よくないでしょ! だって、小鈴は私の妹なんだよ!? ねえ、小鈴ぅ~」
甘えた声を出したちなみが横から抱きつくと、小鈴は
「
「むぎゅ」
押しのけようとする両手にあらがって、ちなみは小鈴に
十月も
「もうこれで何人目? 六人だっけ?」
もみ合うちなみと小鈴を
「今日で七人目! ここのところ毎日なんだよ?」
「やばいな。さすがにモテすぎじゃない?」
「そんなことある? 絶対なんかおかしいだろ」
「おかしくはないでしょ。だってほら、小鈴はかわいいもん。ね?」
ちなみが
「いや、かわいいとかかわいくないとかそういう問題じゃないでしょ。連続で七人に告白されるなんて
「そーかなあ」
ちなみが小首をかしげると、和歌はあきれたような表情を浮かべて「まあいいや」と
「そんなことより、今週末ヒマ? 一緒にうちで勉強しない?」
「あ~……えと……」
和歌の質問に、ちなみがきょろきょろと目を泳がせ、しどろもどろに返答する。
「今週末は用事があるっていうかぁ……」
「土日どっちも?」
「……うん、どっちも」
「テスト前なのに? なんの予定があるわけ?」
和歌がすっと目を細くして、人差し指をつんつんするちなみのことを
「いや~、あはは~……」
ちなみが乾いた笑いを浮かべるのを、和歌はジト目で
ちなみと小鈴はわけあって
ただ、穂高ちなみは
「また例の『アルバイト』か?」
「……はい。そーです」
「そろそろなんの仕事なのか教えてほしいんですけど」
和歌に見つめられて、ちなみはだらだらと
「あ、もう時間だ」
と言って、小鈴が立ち上がった。
「四時に第二体育館の
小鈴がちなみに
「じゃあ、行ってくる」
そう言って歩き出そうとする小鈴の
「まってまって、告白されたらどーするの!?」
「断る。めんどくさいし」
むすっとした顔で、小鈴が答える。
「でも、すっごいイケメンだったら?」
「断る」
「じゃあ、すっごい良い人だったら!?」
「しつこい!」
ちなみの手をふり
「いいから先帰ってて! ばいばい!」
「小鈴ぅ~」
しなしなになったちなみが、テーブルにべちゃりと
「よし、決めた!」
そう言って立ち上がると、ちなみは
「和歌、いくよ!」
「どこに」
「
「マジかおまえ」
「立って立って! めんどくさそーにしないで! ほら、いくぞー!」
*****
午後の空は青く、夕方とはいえ気温は高いままだ。こうして外に出てみても、やはりブレザーを着る気にはなれなかった。
第二体育館の
すぐ近くに
ちなみはその様子を、体育館の
その横には、
そしてさらにその横にもう一人、
「なんで
和歌が聞いた。
彼女の言う転校生とは、この
ちょっとした
「いーじゃん、みんなで
「
ちなみの言葉に、和歌が
「でも、気になるよね?」
そうレオンに話をふると、彼は
「……気になる。おれ、こういうのリアルで見るのはじめてだ」
と言った。
「おまえらって、そろいも
和歌があきれた声を発するのと同時くらいに、向こうから一人の男子が歩いてきた。
「きた……!」
高校三年生の
先輩男子は小鈴の手前で止まると、
『やあ、
と
『どうも』
つまらなさそうに返事をした小鈴も含めて、これから告白シーンがはじまるとは思えない空気感だった。先輩男子は特に気にしたふうでもなく、言葉を続ける。
『僕は君を
『は?』
『君はとても
小鈴が
『君は選ばれた。これはとても喜ばしいことだよ』
『もう帰っていいですか』
あまりにひどい告白に、小鈴が先輩を
『ははは。待ちたまえ、
と、
「なに言ってんの、あの人」
あきれ顔の和歌をよそに、ちなみとレオンは思わず顔を見合わせる。小鈴はその場で固まって、
『君には
三人が見守る中、先輩男子が
『僕は君を
「なんか様子がおかしくないか」
レオンが二人から目を
そして、先輩男子は天を見上げ、わけのわからないことを言い出した。
『ファナハウ、ファナハウ! 君は選ばれた!
『えっ、こわ……なに? どういうこと?』
『さあ、僕と一緒に来たまえ』
『まって、なに――』
『出てこい、“トウェリカ
そう先輩が言ったとたん、地面が大きく
「わあっ!?」
ちなみたちは小さく
地中から、くぐもった
次の
「なになに!? どーいうこと!?」
そのロボットは巨大で、全高は三・五メートルくらいだった。ボディはグレーで、
それは、まるで大昔の
『さあ、立って』
『い、いやだ!』
小鈴が
『では、
まずい。このままでは本当に、小鈴はあの先輩に連れていかれてしまう。ちなみは一も二もなく走り出そうとして――和歌に思いっきり腕をつかまれ、引きとめられた。
「バカ! なにやってるんだ」
「でも、行かなきゃ」
「おまえが行ってどうなるんだよ!? まずは警察に――」
「だいじょーぶだって!」
「大丈夫なわけあるか!」
和歌と言い合いをしていると、レオンが「ちなみ」と声をかけてきた。
「……こんなところでやるつもりなのか」
レオンの言いたいことはわかる。今この場には和歌がいるし、そもそもここは学校だ。すぐそばの第二体育館では、今も生徒たちが部活をしている。フェンスの向こうには
「――やるしかないでしょ!」
「あっ、バカ!」
ちなみは和歌の手をふりほどいて、第二体育館の
「小鈴っ!」
「――うん!」
うなずいた小鈴が、
「“
悪魔が
それは、
〈VBB-1ヴェスパ〉。
イタリア製の、ありふれた二足歩行型軍用兵器。角ばった
「なに、それ……」
和歌の声を背後に聞きながら、ちなみは〈ヴェスパ〉の背中を
ちなみと小鈴、ふたりの間にある
機体の背中にある扉を開け、身体を
ほぼ同時に、〈トウェリカ44〉と呼ばれていた
ちなみは後ろ手に扉を閉め、
操作パネルのトグルスイッチを倒して、マスターパワー
赤いボタンを押し込んでエンジン
機体がぶるりと
六枚のモニターが次々に起動。ちなみの〈ヴェスパ〉には
正面モニターに〈トウェリカ44〉の姿が見える。ちょうど先輩が機体に乗り込み、上半身ががちゃりと音をたてて
ペダルをゆっくりと
オレンジの兵器と、
『オレンジの
先輩の声が、外部スピーカーごしに聞こえてくる。
オレンジの
先輩の声が続ける。
『見せてもらおうか。曲芸師の実力を』
その声に、ちなみは短く返答した。
「まかして」
ペダルを
ディーゼルエンジンが低く
ちなみの操作で、オレンジの
一方、
たぶん、ビーム兵器だ。ちなみはすぐに
こういった
とにかく、ビームを
ペダルを
〈ヴェスパ〉が
「せーの……っ!」
その
ガキン、と
〈ヴェスパ〉が左手に
しかし、
「うわ、
二十ミリの
ちなみはすぐに
そこへ、
「――!」
とんでもないスピードのパンチだ。しかし、ちなみはそれを
――次が来る。
敵機が左腕で
そこで、〈トウェリカ44〉が笑った。
いま、ちなみの
敵機が次のパンチを
後ろに和歌たちがいるので、これ以上は下がれない。
だからちなみは、思い
『――なに!?』
右腕をふりきった〈トウェリカ44〉から、
なぜなら、〈ヴェスパ〉はそのパンチをすりぬけるようにして、完ぺきに避けていたからである。それは
フェイント。
それは、
ペダルを
〈ヴェスパ〉が敵機に
ちょうど走ってきた車が、あわてた様子で急ブレーキをかけた。
その車へ向かって、〈トウェリカ44〉が右腕をあげる。右手がばくりと割れ、ビーム砲がピンク色の光を
「させるかぁ――っ!!」
そこへ〈ヴェスパ〉がかっとんできて、全力の
〈トウェリカ44〉は再びふっとばされ、道路の向かいにあったフェンスを
ちなみの〈ヴェスパ〉がフェンスを
ピンク色に発光する
「――よし!」
フェイント・マニューバ。
〈ヴェスパ〉は右へ左へステップを
『なんてヤツだ――!』
うめきながら、〈トウェリカ44〉が〈ヴェスパ〉へと
〈ヴェスパ〉が右手の武器を
四十ミリアサルトキャノン。反テロ
トリガーを引く。
アサルトキャノンが火を
どずん、と
それにアサルトキャノンをつきつけ、ちなみは外部スピーカーで呼びかけた。
「私の勝ちです! 機体を捨てて出てきてくだ――」
しかしそこまで言ったとき、
「……やば」
ちなみはひとりでに表情をひきつらせた。
いまの戦闘で、学校の倉庫を
数台のパトカー、そしていかついトラックまでもが、〈ヴェスパ〉と〈トウェリカ44〉の周囲に集まり、ぐるりと
「あ、あはは……」
ちなみは
「どーしよ、これ」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
■設定イラスト更新
・ちなみ&小鈴
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