第2話
「恐怖体験や怪談かどうかは分かりませんが、中学上がるくらいの時のことをお話しします。」
そう切り出し、皆の注目を集めた。
自分の家庭は母子家庭でそれほど裕福では無かった。
だから中々我儘を言えないし、聞いてはくれなかった。
ただ誕生日とクリスマスだけは我儘を聞いてくれる日だった。
その日は妹の誕生日だった。
母親は「誕生日おめでとう」と言い、例年通り「何か欲しいものはあるかい?」「何処行きたいかい?」と聞いてくる。
それでも少しは遠慮をし、あまり負担がかからないようにしていたが、今年は違った。
妹が「夢の国に行きたい」と言い出した。
母と僕は驚いた。
去年までは「ケーキで充分だよ。」と言っていたのに違うことを言ってきたからだ。
母は困った顔をしている。
僕はつい妹を窘めた。
「お母さんが困ってるじゃないか」
すると妹は「友達みんなが行っているのに私だけが行けてない。」
「仲良くしたいのに輪に入れない。」
「一度でいいから行きたい」とずっと譲らなかった。
こんなに頑固な妹は初めて見たかもしれない。
母親は黙っていた。
やっぱり無理だろう。そう思っていたら、母親は
「いいわ。今週の日曜に車で行きましょうか。」と笑顔で賛同してくれた。
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