5. 説明と描写を使い分ける(※追記)

 真野まのうおです。今回は基本に立ち戻ります。



 これまで文章軽量化のすすめとして、 「長々しい【説明】は不要」 「おおぎょうな【描写】は控えて」 といった持論を展開してまいりました。


 【説明】と【描写】。何気なく使っているように感じられたかもしれませんが、 実はしっかりと区別しています。



 念のため、簡単な例を挙げます。



 「〇〇は恥ずかしがっていた」というのが【説明】で、

 「〇〇は頬を上気させ、伏し目がちに肩をすぼませていた」が【描写】。


 「怒りがふつふつと湧いてきた」が【説明】、

 「全身の血が沸騰ふっとうする感覚を覚えた」が【描写】です。



 「夜になった」は【説明】、

 「藍色の空に星がまたたき始めた」が【描写】です。


 「夕暮れの街を散歩する」が【説明】で、

 「オレンジに染まった街、長く伸びた影を引きずり歩く」は【描写】です。



 「伝えたいポイント」を、直接的に語るのか、間接的に示すのかの違いです。


 【説明】は客観的で、誰が読んでも印象にあまり差がありません。

 【描写】は主観的な表現で、読者の感性によって受け取り方が変わります。



 ライトノベルの場合、簡潔な【説明】をメインに小気味よく物語を進行させることが求められます。

 ここぞという場面では印象的な【描写】を用いて、読者の意識を引き止めるようにすると、緩急をつけるのには効果的です。


 読み手の想像力を広げたり、せばめたりすることで、体感上のテンポをコントロールするのです。



 【説明】だけでは淡白ですが、【描写】ばかりではくどくなりがちです。バランスを心がけなければいけません。



 読者に内容が伝わりさえすれば、どちらでもよいのでは?

 たしかに、それは正しいです。


 正しさだけで満足できなくなった瞬間、単なる言葉だったものは文学へと昇華するのです。


 さり気ない描写で、実際の文字数以上に沢山の感情を呼び起こすことができたら。

 きっと素敵な作品になるのではないかと思います。




(2024/8/23追記)


 例えば「AとBはピザを分け合って食べていた」という【説明】も、以前はAとBが顔を合わす度ケンカする仲だったならば、関係性の変化を示す立派な【描写】たり得ます。

 表したい事柄(ここではAとBの仲)が、直接は語られていないことが重要です。

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