[総ルビ]異世界転生スラム街からの成り上がり ~採取や猟をしてご飯食べてスローライフするんだ~(web版)

滝川 海老郎

第一部 スラム街の家と採取生活

1.スラム在住、前世を思い出す

●タイトル

異世界いせかい転生てんせいスラムがいからのがり ~採取さいしゅりょうをしてごはんべてスローライフするんだ~

●通常版

https://kakuyomu.jp/works/16816700427571912894


■1.スラム在住ざいじゅう前世ぜんせおも


 エドワードおうれき472ねん4がつ5にち火曜日かようび


 おれはエド、ろくさい

 黒髪くろかみ黒眼くろめせっぽちだ。

 ここトライエ都市とし城壁じょうへきがいにあるスラムがいんでいる。

 両親りょうしんはもういない。

 父親ちちおやたことがない。

 母親ははおや去年きょねん、どこかへえた。もうんでいるのかもしれない。


 昼間ひるまのことだ、おれ仕事しごともなくみちあるいていたところ、小石こいしあしられて、あたまった。


「めちゃくちゃてええ」


 しかし、その瞬間しゅんかん過去かこ記憶きおくあたまなかながれていった。

 これはまれるまえ前世ぜんせ記憶きおく

 地球ちきゅう日本にほん普通ふつう高校こうこう、どこにでもいる男子だんし生徒せいと成績せいせき普通ふつう運動うんどう普通ふつう


「エド、大丈夫だいじょうぶ?」

「なんだ、これ……情報じょうほう……」

「エド、どうしたの?」

「ああ、ミーニャか、なんでもない、大丈夫だいじょうぶだよ」


 あたまがおかしくなったのかと、一瞬いっしゅんおもったが、記憶きおく鮮明せんめいだ。

 まち、ビル、スズメ、くるま、バス、図書館としょかん、テレビ、女子高生じょしこうせい、スカート、ニーソックス、絶対ぜったい領域りょういきなまふともも……。


 おっといかん、意識いしきがそれた。


 まれてから記憶きおくがあるかぎり、ここの生活せいかつだったから体感たいかんしなかったけど、スラムの生活せいかつさい底辺ていへんだとおもった。


「「ただいま」」

「おかえりなさい」


 うちはいえぶには、あまりにせま粗末そまつなあばらんでいる。

 かべはただの土壁つちかべで、しかも屋根やねかべあいだ隙間すきまがあり、ひかりはいってくる。

 それでもかべがあるだけ、このスラムがいなかではマシだった。

 おれいえにはミーニャの一家いっかまえから居候いそうろうしている。


 ミーニャはおれおなろくさい、それから母親ははおや日雇ひやといの父親ちちおやがいる。

 ミーニャの一家いっか全員ぜんいん金髪きんぱつ碧眼へきがんながみみ色白いろじろせている。

 食事しょくじ準備じゅんびができた。


 料理りょうりもできて全員ぜんいん車座くるまざになってすわる。

 このせまいえにテーブルと椅子いすなんていう高価こうかなものはない。

 ゆかつちじゃなくて木製もくせいというだけでも、ありがたい。


「「いただきます」」


 今日きょうゆうはんは、イルクまめ水煮みずにだ。

 さやはなく種子しゅしのみで、まんまるくて茶色ちゃいろ大豆だいずみたいなまめだった。

 うちにはなべ魔道まどうコンロがある。母親ははおやトマリアの土産みやげだった。

 それすらないいえおおい。そういういえ自炊じすいすらできないで、割高わりだかくろパンなどをってべている。

 魔道まどう全盛ぜんせい世界せかいだ。まき煮炊にたきをするいえ皆無かいむではないが、まきあつめのコストがわりわない。

 もうこのへんまきになりそうな乾燥かんそうしたなんて、ほとんどちていない。

 貧乏びんぼう貧乏びんぼうんでくる。あく循環じゅんかんだ。


 イルクまめすここうばしいようなかおりがあり、ほんのすこしの甘味あまみがある。

 るときにしお少量しょうりょうれるので、塩気しおけもある。

 栄養価えいようかたかいのだろう。

 不味まずくはないが、美味おいしいとおもったこともない。

 いっ週間しゅうかんのうち六日むいかは、ほぼこれしか食事しょくじがない。


 しお国内こくない岩塩がんえん採掘さいくつじょう塩田えんでんがあるので比較的ひかくてき安価あんかだ。たすかる。


 ミーニャの母親ははおやのメルンさんは料理りょうり得意とくいではないらしい。

 というか生活せいかつはもう限界げんかいにきており、イルクまめすのが精一杯せいいっぱいだった。




 日曜日にちようびゆうはん特別とくべつで、くろパンとイルクまめ、それから三切みきれのにくべる。

 こうおもうと、うちはまだめぐまれているほうかもしれない。

 だからおれ無職むしょくにはどうでもいい曜日ようびをちゃんとかぞえて、曜日ようび感覚かんかくわすれない。


「エド、おやすみなさい」

「ああおやすみ、ミーニャ」

あたま大丈夫だいじょうぶ? いたくない?」

「ああ、大丈夫だいじょうぶ

「よかった、にゃは」


 おれいて、るミーニャ。

 はるよるあたたかくなってきたといっても、すこさむい。

 ミーニャのからだあたたかい。


 ミーニャはかわいい。

 せているのでわかりにくいけれど。

 スラムがいにいるのに、そのかおととのっていて、前世ぜんせ知識ちしきでいうなら美少女びしょうじょまたは幼女ようじょぞくする。


 すぴーすぴーと寝息ねいきこえてくる。


 おれ今日きょうよう、明日あしたからいそがしくなる。



  ◇◇◇


 水曜日すいようび

 るのがはやいからか、あさ自然しぜんました。

 屋根やねかべ隙間すきまからひかりんでいる。

 ひかり角度かくど横向よこむきだから、午前ごぜんろくまえくらいか。


「エドぉ、むにゃむにゃ」

「ああ」

「ごはんはまだですかぁ、にゃあ」


 ミーニャは寝言ねごとっていた。

 まだおれいてている。


 うごかすのも可哀想かわいそうなので、そのままじっとしている。


 とにかく状況じょうきょう整理せいりと、予定よていてよう。

 いつもは信用しんようなにもないスラムの仕事しごとなど、ほとんどもらえるはずもなく、スラムがいをぶらぶらしたり、たまに城壁じょうへきないってぶらぶらしたりする。

 城壁じょうへきないではまれいそがしいひと仕事しごとをもらえることもある。


 たとえば洗濯せんたく

 おおきなおけふくれて、井戸いどからみずんできてれる。

 石鹸せっけんがあるときもあるが、庶民しょみん石鹸せっけんすら使つかわない。

 んだり、こすったりして、ざぶざぶあらう。

 りょうおおいと、おもった以上いじょうじゅう労働ろうどうだ。


 城壁じょうへきない一般いっぱん家庭かていでもスラムがいくらべたら裕福ゆうふくいえなので、面倒めんどうだとスラムのにやらせることもある。


 洗濯せんたくいっかい賃金ちんぎん銅貨どうかさんまい、300えんぐらい。時間じかんにして時間じかんぐらい。


 しかしこの世界せかいでは一般いっぱん家庭かてい毎日まいにち洗濯せんたくなんてしないので、たまにしか仕事しごとはない。

 おれ洗濯せんたく何回なんかいもお世話せわになったいえさんけんほどあり、かおおぼえてもらっているけど、はや者勝ものがちで、ほか子供こども仕事しごとられるほうがおおい。


 銭貨せんかが10えん

 銅貨どうかが100えん

 はん銀貨ぎんかが500えん

 銀貨ぎんかが1,000えん

 金貨きんかが10,000えん

 物価ぶっか日本にほんちがうので、概算がいさんでしかないが、おおむねこんなかんじ。

 はん銀貨ぎんか半分はんぶんぎんどうふくまれているというもので、おおきさはおなじぐらいだ。

 むかしだい銅貨どうかだったがおおきくて邪魔じゃまなので、こうなったとく。


 くろパンはいっ銅貨どうか一枚いちまい、100えん

 高級こうきゅうふわふわしろパンはいっはん銀貨ぎんか一枚いちまい、500えん


 イルクまめはこの地域ちいき特産とくさんひんだが、貧民ひんみんものとして庶民しょみん以上いじょうはあまりべない。

 イルクまめ水煮みずには一しょくで50えんぐらいだろうか、おそらく。


 イルクまめ大量たいりょうえばやすえるけど、そんなにおかねもないし、大量たいりょううちにおいておけば強盗ごうとうのリスクもたかい。


 ゴーン、ゴーン、ゴーンと教会きょうかいかねさんかいる。

 さんこくだ。地球ちきゅうなら午前ごぜんろくたる。


「むにゃむにゃ、あ、エド、おはよう~」

「ああ、おはよう、ミーニャ」

「えへへ、にゃはあ」


 ミーニャはをパチッとけるとニコッとわらって、かおおれむねにぐいぐいこすりつけてくる。

 非常ひじょうになついていて、かわいいけど、なんだかねこみたいだ。

 もっとも猫耳ねこみみぞくではなく、金髪きんぱつ碧眼へきがんながみみからして「エルフにつらなるもの」だとおもう。

 エルフとは半分はんぶん伝説でんせつ魔法まほうけた種族しゅぞくで、その純血種じゅんけつしゅちからはものすごい、といたことがある。

 それで「エルフにつらなるもの」っていうのは、そのエルフのいだ、ハーフエルフとばれるひとたちのことだ。

 ただこの世界せかいでは種族しゅぞくかん、ハーフはあまり歓迎かんげいされない雰囲気ふんいきなので、このようにびならわす。

 ただほか種族しゅぞくのハーフとちがって、エルフのハーフは一種いっしゅあこがれだった。


 エルフは知能ちのうたか魔法まほう得意とくいだけど、高慢こうまんちきというイメージだから、ミーニャはちょっとちがかんじがする。


 今日きょう予定よていはもうめてある。


鑑定かんてい


 おれは、ミーニャを意識いしきしてつめ、こころなかとなえる。


 異世界いせかい情報じょうほうおもしたときに、一緒いっしょ知識ちしきとしてながんできた。

 この世界せかいには魔法まほうがある。

 そしておれは「鑑定かんてい魔法まほう使つかえると、直感ちょっかん認識にんしきしていた。


【ミーニャ・ラトミニ・ネトカンネン・サルバキア

 6さい メス Bがた エルフ

 Eランク

 HP105/110

 MP220/220

 健康けんこう状態じょうたい:B(気味ぎみ)


 ふむ。自分じぶん鑑定かんていしてみよう。


【エドモント・アリステア

 6さい オス Aがた ひとぞく

 Eランク

 HP145/150

 MP176/180

 健康けんこう状態じょうたい:B(気味ぎみ)


 あれ、おれにもミーニャにも、苗字みょうじがある……。

 いたことがない。あとおれはエドであってエドモントではない。

 いや、そういえば、エドモントだったようががしてきた。

 みんなエドとしかわないからわすれていたというか、かあちゃんそういう大事だいじなことはちゃんとつたえてくれ。


 もしかしなくても、おれはいいところのなのでは。

 いやでも苗字みょうじくらいは、ドリドンさんはじめ一定いってい以上いじょう地位ちいひとならだれでも名乗なのっている。


 意外いがい事実じじつってしまった。

 しかしこの生活せいかつからすれば、まったく関係かんけいない。


 それより今日きょう生活せいかつだ。

 この「鑑定かんてい」それから前世ぜんせ知識ちしき知識ちしきったってたいしたことではないけど、ないよりマシだ。

 それをかして「採取さいしゅ」をするぞ。

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