第2話 転生先の結城坂家(1)
東の島国、天道国。
約千年前、この小さな島国の龍脈の近くに異世界から巨大な豆の木が生えてきた。
種を飛ばして寄生し、命を吸い上げ魔物にしてしまう災いの木を『
伐採こそ難しかったが、界寄豆を封じ込め、成長を完全に停止させることに成功した神巫女・
その帝が、この天道国を統べる王。
そしてその結界は百層にも及び、同じく
その十の家は『守護十戒』と呼ばれ、内側の五の家を
外側の五の家を
”俺”が産まれた結城坂家は、家は九条ノ護の分家。
央族の子女は
龍脈から霊力を取り出し、結界維持・強化術を使うのも央族の子女が中心となる。
男は子女の助力を得て――たとえば料理に霊力を込めたり、龍脈から霊力を取り込みやすくする術をかける、とか――
風に流され遠方で産まれても、結界を破壊しようと央都付近に集まってくる。
『守護十戒』と、央族は
外側の『守護十戒』に序列はないが、内側の『守護十戒』はその数字の小さい順に序列がある。
一番内側の重要な十枚の結界を守るのが
その外十枚を守るのが
まあ、俺の家は序列のない外の十戒家の分家なんだけれど。
――とはいえ……。
「有栖川宮家の次男坊に婚約破棄を突きつけられたか。ではいよいよ家を畳む準備をしなければならぬな」
「も、申し訳ございません」
「気に病む必要はない。だが、貞淑に欠けるなどの噂を流されたのはまずかったな。まあ、それならそれで仕事に生きればよい。結婚は……難しそうだからな」
「…………」
”俺”の今世父、
おかげで我が家は家財も着物もすっからかん。
あっという間に使用人を雇っていられなくなり、俺は学校に通えなくなるかもしれない危機に直面。
父が九条ノ護本家にかけ合い、不用品で最低限生活できるよう家の中を整えてくれ、学校に通う資金のと生活の援助を取りつけてくれた。
九条ノ護家本家からお手伝いさんが作り置きの食事を用意してくれて、高等学校に通えるようになった頃、ようやく我が家でお手伝いさんを雇えるくらい安定したのだ。
で、入学当初に十条ノ護家の分家に当たる小大名の有栖川宮家から、霊力操作に長けた霊術の使える年頃の娘を次男の嫁に……との打診が来た。
で、俺――結城坂舞に白羽の矢が立ったわけ。
だって俺と親父を裏切って、家の全財産を男と逃げるために奪い去って行きやがったあのババア、二年後に借金まで親父名義で借りて押しつけてきやがった。
あのクソババアのせいで、俺たちの人生めちゃくちゃにされるなんて冗談じゃねぇ!
って、わけで霊力操作と霊術をスッゲー頑張った!
前世にはなかった不思議技術だったし、実際やってみると面白くて面白くてハマっちゃったんだよな~。
それ以外の座学も、前世の義務教育で教わった内容だもん、下地がある分”優秀”と言われたけれど。
しかも親父が言葉を濁したのも、あのクソババアのせい。
スカポンタンが俺に対して「蛙の子は蛙」と言い放ったのは、
しかもそういう噂を流し始めているっぽい。
白窪結菜の方が悪印象みたいで、誰も信じなさそうなのが救いだけれど。
でもそれは”
学校の外まで広まれば、また九条ノ護本家……最悪その上の宗家にまで助けてくださいって頼まなきゃいけない。
でも、分家の末端で、たった二人しか家族のいない家をそこまでして守る理由はない。
親父が「家を畳む準備」と言っていたのは、結城坂家が途絶えるということ。
多分親戚筋に養子縁組して、俺たちは法的に親子関係ではなくなる。
俺もあのスカポンタンの噂のせいで結婚ができなくなるだろう。
ま! 中身俺なので男との結婚とか勘弁! って思ってたからむしろラッキー!!
って、内心喜んでいるのは内緒にして。
がっくり項垂れておかないとな。
親父的には俺が結婚しないってことで、孫が抱けなくなったってことだもんな~。
そう考えると申し訳って思う。それは本心。
「ともかく、本家に報告してくる。お前は卒業までの残り一年をどうするのか明日の朝までに決めておきなさい。噂については家同士の問題に発展しかねん。本家に迷惑がかかるが、止めてもらわねばならんからな」
「それでしたら、今まで通りに通います。私はあの
「……そうか。そうだな。お前は紗枝と違う。わかった。本家にはそう伝え、そういう方向で助力を得られるよう頼んでくる」
「よろしくお願いします」
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