第21話 後日談

「ミシェル、マリク、お土産よ!」


 ミシェルとマリクはメリッサとエドアルドから週末の外出のお土産を渡される。


 マリクはお菓子の型をもらい、ミシェルは好きな画家の画集だ。

 

「いいのですか? ありがとうございます!」

「母上、ありがとうございます」


 ミシェルは嬉しくて、さっそくパラパラとページをめくった。繊細な筆遣い、細かいところまで描きこまれていて、圧倒される。


「そういえばお医者様から聞きました。盗賊に襲われたのは大丈夫でしたか?」


 マリクがメリッサに聞いた。

 メリッサはその時の事を話してくれた。


 戦闘の話を聞き、二人の身が引き締まる。


「とても怖かったのだけど、エドアルドがあっという間に倒してくれたのよ。本当すごくって、かっこよかったの」

「当然だ」


 メリッサは「ほぅ」、と息をついて、手を頬にあてた。


「そういえば、馬車からでた光は何だったの?」

「あれか。あれはトラップ魔法だ。馬車に触れると発動して雷魔法が出る仕組みになっている。馬車から降りるときに仕込んでおいた」


 トラップ魔法は高等技術だ。エドアルドはそれを降りる一瞬で仕掛けたのだ。

「すごい……」


 手合わせはしたことはあるが、実際に命のやり取りとしての戦闘はしたことがない。もし自分が襲われた際、瞬時に判断ができるのだろうか。マリクは考える。




 メリッサたちと別れ、二人で廊下を歩く。

「お父様、すごいなぁ……!」

「たくさんのを敵を一人で倒すなんて……僕もいざという時に大事な人を守れるようにならなくては……!」

 マリフがきゅっと眉を寄せ、手を力強く握った。


「兄さんなら出来るよ。僕も誰かを守れるくらい強くなれたらいいなぁ」

「大丈夫さ。最近は上手く魔力をコントロールできてるんだろ?」

「うん」

 でも、自分にできるのだろうか。ミシェルは不安になる。


「でも、もし、もしもだよ。ミシェルが危険な目にあってたら、僕が助けに行くから。それまで頑張るのはどうかな」


「そっか! 援軍が来るまで耐えきればいいんだ」

 その手があったか、とミシェルの顔が明るくなる。


「それなら防衛魔法をしっかり勉強した方がいいかなぁ」

 考えこむミシェルをマリクは優しい笑みで見つめていた。


 すると、使用人たちの声が聞こえてきた。その中には現場にいた従者もいた。

「エドアルド様すごいなぁ」

「あぁ、流石だ」


 週末の出来事は医者と従者により屋敷中に広がっていた。

 その話し声が聞こえるたびに二人は誇らしい気持ちになる。


「で、エドアルド様、キスをする手前でやめたんですよ! キスするところでしょそこは!」


「「……」」

 二人には少し気恥ずかしい話も聞こえてくる。


「お二人は両想いなのになぁ~」

「なかなか進展しないな」


 今やエドアルドとメリッサは屋敷中で見守られているのだった。

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