第6話 Grow on someone * だんだん気になって

塾のない日の放課後、いつものように廊下の自習用の椅子に座って、本を読みながら隣のクラスが終わるのを待っていると、西寺が隣に座った。


「学校出たら暑いと思うと帰りたくない」

「電車に乗ったら、ここよりエアコン効いてて涼しいよ」

「帰る時起こして。それまで寝る」


そう言うと西寺は、私の横で自分の腕を枕のようにしてテーブルにうつぶせになった。

たまたま、偶然、西寺の肘が、本を持つ私の腕にふれていて……そこだけ熱い。

よけようと思ったらいくらでもよけることができたのに、そうしないでいた。


「篠田の、にんじん肉で巻いたやつ食べたい」

「お母さんに頼んだら? 絶対私なんかより上手で美味しいの作ってくれると思うよ?」

「あの、焦げてるのがいいんだよ」

「それ、さりげにディスってる?」

「卵焼きでもいい。たまに殻が入ってるやつ」

「嘘! 殻入ってた?」

「たまーに」

「ごめん」

「一緒に昼食べない?」

「それは……遠慮します」

「何で?」

「西寺のフアンの子に睨まれるから」

「くだらない」

「自分がモテるの自覚した方がいいよ?」

「知ってるし。オレ、今までもこれからもモテモテの人生だから」

「感じ悪~い」

「つまんねぇ」


そう言うと、「寝る」って言っていたのに、西寺は立ち上がった。


「バイバイ」


西寺は私の頭をくしゃっと撫でると、帰って行った。


「結局寝てないじゃん……」



西寺の姿が見えなくなってから、そっと、自分の頭にふれた。

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