第3話 天花舞う世界で見たものは③
アルフレドとローウッドは眉をひそめた。リーリエが本当に聖樹の化身ならば、教会の人間が信仰対象の殺害を試みることはあり得ないだろうと考えたからだ。
「はい。最初は木食い虫、その次は落雷、次は毒薬…このひと月で聖樹にこんな事が続いたんです。たまたまかとも思ったんですけど…3日前に私自身が神官長に首を締められて…」
「それは…大変な思いをしたのだね。」
「なぜこの様な目に遭うのか分からなくて…必死でした。幸いが結界の外に連れ出してくれた人がいて、そこからは当てもなく、ひたすら走り続けていたんです。」
リーリエは膝に置いていた拳に力を入れた。これまで平静を装っていたが、こらえきれずにその瞳に涙を浮かべ、全身を小さく震わせている。
ローウッドは立ち上がってリーリエの側に移動すると、背中を擦ってやりながら穏やかに問いかけた。
「リーリエよ、君がここまで来たのも何かの縁。グリットリア学園が助けになろう。して、君は何を望む?」
「え…」
「教会の糾弾か?身を潜めて暮らすか?」
ローウッドの提案に、アルフレドが思いきり顔をしかめた。
「まじかよ…教会本部っていったらほぼ独立領みたいなもんだろ?外部と関わろうとしねーし、きな臭い話ばっかじゃねーか。」
「そんな…会ったばかりの方にこれ以上迷惑をかける訳には…」
「我が校の校訓は常に正しい事を、だ。リーリエ、考える時間が必要かね?」
ローウッドは再びリーリエに望みを尋ねた。まるで、彼女の答えがもう分かっているかのように。
「私…知りたいです。教会で何が起こっているのか。…どうして、私が殺されそうになったのか!」
リーリエがそう答えた声は力強かった。彼女の目もとは泣いたせいで赤くなっていたが、体の震えは止んでいた。
「よろしい。」
彼女の答えを聞いたローウッドは、問題に正解した生徒を褒めるかのように微笑んだ。
「さて、アルフレド…お前の卒業試験が決まったぞ!」
ローウッドはわざとらしい笑顔を浮かべてアルフレドを見た。
「…嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!絶対めんどくせーやつですよね!」
「彼女を教会から守り、共に教会の行いを白日のもとにさらし出せ。」
「アルフレドさん、よろしくお願いします!」
リーリエは期待に満ちた眼差しでアルフレドを見た。もっとも、彼女には卒業試験がどういうものかは全く分かっていないのだけれど。
窓から見える空模様は、あいも変わらず曇天模様だったが、先程より少しだけ光がさしていた。
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