第14話 天狗と再戦 

 天狗は火炎将軍に言った。


『村人たちがこんなに集まっておるではないか。なぜ魂を食わんのだ?』


『天狗様。拙者は改心したのです。もう悪いことはしない。村人の魂は元の体に返しました』


『ふぬけがぁああああああ! 貴様、それでも妖怪かぁああああ! 暴力で村人を支配するのだぁあああ!』


 火炎将軍は腕に巻かれた包帯を一目見てから、


『もう拙者は悪いことはしない。この古寺を改修したら山にこもってひっそりと暮らすつもりです』


『バカが! そんなことが許されるものか! 我々は最強の存在だ。弱者を支配し、好き勝手に生きるのだ!』


 なんだかすごく横柄な理屈だな。自分のことしか考えてないのか。

 ゲームでいうところのボスって感じだな。


『人間なんぞ、我が神通力で蹴散らしてくれるよう。いかづちよ!』


 天狗が団扇を振ると、バリバリバリーーンっと雷が落っこちた。

 その落雷は村人の足元に落ちたので、みんなはその威力に震え上がる。


『や、やめてください天狗様! 村人は悪くないんだ!』


『こんな弱い者らを使わないでどうする? 魂を抜き取り、農作物を奪って、わしらは好き勝手に生きるのだ!』


『拙者は改心したのだ。もう悪いことはしない!』


 震え上がる村人の中、前に出たのはお雪さんだった。


「か、帰ってください! こ、ここは私たちの村です!」


 おお……、勇気のある女の人だな。

 

 なんて、僕が関心してるのも束の間。


 天狗の団扇はお雪さんに向いた。


『小娘が。生意気な。消し炭にしてくれる──』


 ヤ、ヤバイ!

 雷が落ちたら大怪我だぞ!


「お雪さん!」


 僕は走り出した。

 でも、ちょっと距離がある!

 間に合えぇえええええ!


『──雷よ!』


 ああ、ダメだぁああ!

 雷が落ちる!

 お雪さんに届かない!


 瞬間。


ドン!


 お雪さんの体を押したのは火炎将軍だった。


 え……!?


バリバリバリィイイイイイイン!!


 火炎将軍の体が雷に撃たれる。


『グォオオオッ!』


 ま、まさか、火炎将軍がお雪さんをかばうなんて意外だった……。


 事典蝶は汗を飛ばす。


『大助さん、みんなで逃げましょう!』

『そ、そ、そうだピョン! み、みんなで逃げるピョン! 天狗は強すぎだピョン!』


 たしかに天狗は強敵だ。

 事実、僕は一回戦って負けているからね。


 でも、逃げたって無事に助かるかわかないぞ。

 雷で撃たれたら負けてしまうよ。


 た、戦うしかない。

 僕には葉っぱカードがあるんだからな。

 

 あの時とは違うぞ。

 僕はレベルアップしたんだ!




「おい天狗! おまえの相手は僕だ! この前みたいに簡単には負けないぞ!」




 怖いけど、ビシッと言ってやった。



『…………………なんだおまえ?』



 覚えてないんかーーーーい!


「僕は化けタヌキの大助。 妖奉行あやかしぶぎょうからおまえの退治を依頼されたんだ!」


『おまえみたいな小さなタヌキが?  妖奉行あやかしぶぎょうに? ………プっ! プハハハハ! 笑わせるな、このチビダヌキが!』


「わ、笑うな!」


『プププ……。ああ、そういや思い出した。わしの山に入ってきた子ダヌキだったな。たしか、石に化けよったから蹴り飛ばしてやったんだ。懲りずに生きておったのか』


「もう、あの頃の僕じゃないぞ」


『ふん。やってみるがいいさ。所詮はタヌキ。わしの神通力には敵うまいて』


 よぉし、新しいカードを使ってやる。


 僕は背中のポーチから葉っぱカードを取り出した。


 これは火炎将軍を倒した時にゲットしたやつだ。


 頭に乗っけてぇ。


  腹鼓はらづつみ


ポンポコポン!


「炎!」


 すると、僕の全身は炎に包まれた。


「おお! 体が炎になった!」


 でも、全然熱くないぞ!


 炎はスライムみたいに自由に動く。

 右手から左手、ウニョーーンって自由自在。


 このカードは炎を操れるのか!


 だったら、この炎を丸いボールにして投げつけてやる。


「おりゃ!」


 火の玉攻撃だ!

 

『むううう!』


 天狗は団扇で火の玉を弾いた。


『すごいピョン! 火の玉の攻撃だピョン!!』


 うん、良い感じだ!


『ほぉ……。まさかタヌキが炎を操るとはな……。この前とは違うようだ……』


「僕は強くなったんだ!」


 名付けて、ファイヤータヌキだ!


 この状態なら炎を自由に操れる。


 炎は粘土みたいに動くからさ。

 こうやってこねて、泥団子みたいに火の玉を作ってから投げつける。


「とぉ!」


『ふん! きかんわ!』


 また、団扇で弾かれたか。


 だったら連射だ。

 火の玉を何個も作って、


「おりゃおりゃおりゃ!」


『ぬぐううう!!』


 天狗は団扇で弾くも間に合わない。

 ついには着物の袖に着火してしまう。


『熱っ!』


「やった! 命中した!!」


 天狗は水を口からピューと吹いて消火した。


 あらら、すぐに消えちゃったよ。


『タヌキのくせに生意気な!』


 団扇をブゥウウンと振り回すと、強風が発生した。


「うわぁっ!」


 僕の体は吹っ飛ばされる。


『ガハハハ! 飛んで行くがいい!!』


 ふふん。

 そう簡単にはいかないもんね!


ポンポコポン!


「飛翔!」


『なに!? 空を飛ぶだと!?』


 尻尾をヘリコプターの羽みたいにしてね。

 一分間だけ飛行が可能なのさ!


ブゥウウウウウウウウウウン!


 続いて、


ポンポコポン!


「石っ!」


 飛翔から石のコンボ!

 必殺、タヌキ隕石だ!


 天狗に命中!


ドゴン!

 


『ぐぬッ!?』



 やった!

 天狗が倒れたぞ!


『すごいピョン! あの天狗と互角に戦っているピョン!』

『いえ。互角以上ですよ! すごいです大助さん!』


 いや、でも、まだ倒してない。

 油断は禁物だ。


 天狗が起き上がると口から大量の水を吐き出していた。


「な、なんだ?」

『滝みたいに水を吐いているピョン!』

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