第13話 人助けの報酬
これで僕のカードは五枚になった。
石、跳ねる、水、飛翔、炎。
ふふふ。ずいぶん強くなったぞ。戦闘にも慣れて来たしね。
古寺の庭には大きなクレーターが空いていて、その真ん中には火炎将軍が倒れいている。
小さなうめき声が聞こえるから、生きてはいるんだろう。
とりあえず、僕たちはお雪さんの家に帰ることにした。
村のみんなは大騒ぎ。
なにせ、火炎将軍に魂を取られた村人たちが息を吹き返したからだ。
良かった。
みんな元通りだな。
隣り村の和尚さんも生き返っているよ。
「タヌキちゃん! 無事だったのね!」
お雪さんは、僕の体を抱き上げた。
「傷はない?」
「うん。大丈夫」
「ああ、良かった」
この人は本当に優しい人だな。
村長は目を丸くしていた。
「お、おまえさん……。本当に火炎将軍を倒したんじゃな?」
「はい。なんとか」
「小さいのにすごいタヌキじゃなぁ……」
『ムフフ! だから耳子が言ったピョン! 大助はすごいんだって!!』
「ふむ……。では、村人たちを助けてくれたお礼をせんといかんなぁ。なにか欲しい物を言ってくれ」
お礼か……。
欲しい物。
耳子はそわそわしながら、
『大助! なんでも良いってさ! だったらさぁ……。おまんじゅう……。お団子ぉ。お汁粉に甘酒も捨てがたいピョン。ヌフフ』
やれやれ。
耳子は本当に甘いお菓子が大好きなんだな。
『大助さんが好きな物を希望するのが良いと思いますよ』
うーーん、じゃあ、
「傷薬をもらえますか?」
「なんじゃ、怪我をしとるのか?」
「あ、いえ。僕じゃないんだけど……」
僕が理由を説明すると、みんなは目を丸くした。
『大助! それはビックリだピョン! まさか、火炎将軍の傷を治すなんて、誰も考えてなかったピョン!』
『大助さん。私も驚きました。どうして、そんなことを考えたのですか?』
「別に深い理由なんてないんだけどさ。火炎将軍の悪い心……。邪妖気はなくなったんでしょ? だったら、もう良い妖怪に戻ったんだよね?」
『ええ、まぁそうですが……。村人の魂を食っていた妖怪ですからね。村人がなんていうか……』
村長をはじめ、僕の周囲にいた村人たちは顔をしかめた。そんな中、
「傷の手当てが必要なんですね。私が行きますよ」
お雪さん!?
「で、でも、火炎将軍はお雪さんを襲うとした妖怪だよ?」
「タヌキちゃんが治してあげたいんでしょ?」
「う、うん……」
一応、僕は化けタヌキ。火炎将軍と同じ妖怪だもん。なんだか放っておけないよ。
「フフフ。じゃあ、私も行ってあげるわ」
村人はお雪さんを心配した。
そりゃまぁ、そうか。改心したとはいえ、村人を襲って妖怪だったもんな。
そんなわけで、僕はお雪さんと一緒に、あの古寺へと行くことになった。もちろん、村人たちも一緒にね。
村人たちは驚いた。
「なんだぁ、地面が凹んじまってるだよ?」
『フフフ! 大助がやったピョン!』
「ひぃええ……。小いせぇタヌキなのに恐ろしいなぁ」
『大助は強いんだピョン!』
なんだか、僕より耳子が自慢してるみたいだな。ふふふ。
さて、
「あの真ん中に倒れてるのが火炎将軍なんだ。重たいからみんなで上に引っ張ってください」
「よしきた! おい、男集! みんなでこの妖怪を引っ張り上げるんだ!」
「「「 おーー! 」」
村人たちの協力で、火炎将軍は古寺のお堂に上げられた。
そこで傷の手当てを受けることになる。
治療をしてくれるのはお雪さんだ。
火炎将軍はあちこち骨がひび割れていてさ。なんだか痛そうだよ。そんな傷に包帯を巻く。
しばらくすると意識が戻った。
『む!? 何をしている!?』
村の男集は悲鳴をあげて離れた。
逃げなかったのはお雪さんだけ。
火炎将軍は腕の包帯を見つけた。
『なんだこれは!? おまえがやったのか?』
「タヌキちゃんがね。可哀想だからって」
『ムム……。そうか、タヌキか』
なんだか気まづい雰囲気だな。
「ねぇ、火炎将軍。もう悪いことはしないでしょ?」
『う、うむ。もうそんな気は消え失せたわ』
「そうか。じゃあ、やっぱり手当てして良かったよ」
村人たちは距離をとりながら怒声をあげた。
「ふざけんなよ! 俺はおまえに魂を抜かれて死んじまったんだぞ!」
「そうだそうだ! オラの子供だって魂を抜かれてしまっただよ!」
「今更、許して欲しいなんて虫が良すぎるでねぇか!」
ああ、みんな怒ってるな。
生き返ったとはいえ、怖い思いをしたんだから当然か。
『すまぬ。悪かった。お詫びとして、この古寺を人が住めるように作り替えてやろう。新しい住職が来れば拙者は山に帰るからな。それで勘弁してくれぬか?』
火炎将軍は本当に反省していた。
村人にもその気持ちが伝わったようだ。
僕とお雪さんが目を見合わす。
「フフフ。良かったね。タヌキちゃん」
「うん」
と、安心したのも束の間。
古寺の隙間からブォオオオ!ってものすごい強風が吹き荒れた。
僕たちが混乱するのと同時。とんでもなく低い声が当たり一面に響いた。
『ブハハハハ! 火炎将軍よ! 村人を困らせておるかぁああああ!?』
この声……。聞いたことがあるぞ。
強風とともに姿を見せたのは全身が真っ赤な皮膚の男だった。その鼻は真横に伸びて長い。
出たな──。
「天狗!」
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