【黎明の色彩】
結原シオン
【黎明の色彩】
朝と言える時間を過ぎようとする三限目。そんな時間に登校しても誰一人嫌な顔を浮かべてこない職員室を通り越し、私はいつもの場所へと足を運ぶ。校舎の隅の隅、やや薄暗く不気味だけれど人通りが少ないゆえに汚れてはいない、そんな廊下を歩いてたどり着くのが毎日を過ごすボッチ部屋。
私以外に使う人が滅多におらずそう呼んでいる一室は、正確には文書資料庫というらしい。それを裏付ける表札を横目に、ガタガタと振動を作り出す扉を苦戦しながら引いていく。隙間が生まれてその名に相応しい古びた紙の匂いが鼻を抜けた。ああ、やっぱり落ち着く。
「失礼します」
そうして、誰もいないであろう空間に呟いた瞬間だった。
「あー、お邪魔してます」
眩しいその色が、輝いていたのは。
「いや、いいわぁココ。センコーから逃げてサボるのに最高」
その色――――に染めた髪に留まらず、至る所に散らした銀色のアクセサリーで派手さを極めた男子生徒は、向かいの椅子に座る私に向かってか、はたまたただの独り言か。このボッチ部屋に対しての言葉をつらつらと漏らしていた。こんな密室にヤンキーと地味な生徒が一対一、居心地がいい訳がない。本人に見えているかはわからないけれど、表情が歪んでいる自覚もある。
「この小説も面白いしな」
しかし不良のくせに過度に姿勢を崩すことなく、おまけに廃棄予定の印が押されたボロボロのミステリー小説を楽しそうに眺める姿は、簡単に「このヤンキーめ」とは思えない要因になっている。人は見かけによらず、か。そしてそのせいだろうか、つい私は動いてしまったのだ。
「面白い小説、ここにはたくさんありますよ」
「……」
「あ、その、すみません」
瞬時にその行動を後悔するに至ったわけだけれど。別に勇気を振り絞ったわけではないものの、ジッと無言で見つめられたら流石に気まずいだろう。威圧的な沈黙が耐えきれず、怒らせたかと思った私は気弱らしく情けない声で謝罪をした。
「あーいや、声かけてくると思わなくて。さっきの独り言で気ぃ悪くさせたのかなって思ってたし」
「顔に出てましたか」
「ははっ、否定しないんかい」
が、その謝罪に返ってきた言葉は思ったより何倍も柔らかく、少しガラの悪さは滲んでいるものの何故だか落ち着く声だった。まさかこっちの機嫌を心配しているなどと考えつかなかった私は、にこやかに笑いかけてきた存在に少しだけ頬を緩ませて、机上の参考書に向き直った。
そしてそのタイミングに、簡潔でけれど裏に複雑な意味が隠れる問いを彼は投げかけてきた。
「俺のこと怖くないの」
「え」
「イジメ、されてたっしょ。こんな格好の不良と一緒でも平気なのかって」
ああ、そういうこと。問いの返答を探すよりも先にそんな言葉が浮かんだ。堂々の遅刻を果たしても説教の一つなく、古紙まみれのボッチ部屋に身を寄せている理由。出会って数分にしてお見通しで、かつ躊躇いがないなと微笑を浮かべてみせる。
「初めは驚きましたけど、平気です。独り言の迷惑を考えてくれるような優しい人って、分かったので」
「そっか」
たった三音。その返事は端的で、けれど夏の暑さとは違う染みるような温もりが確かに詰まっていた。
「……はい」
それからというもの、私は自分以外の誰かがいる久々のボッチ部屋で勉強を進めた。中庭へ面した窓に映る夏の曇り空と古紙の匂い、加えて向かいの彼がつけているらしい香水の優しい香りに包まれた空間というのは不思議と嫌な気分にはならず、おまけに彼自身小説が興味深いのか私への気を遣ってか先の会話以降喋りかけてくることもなかったため、私は集中してペンを走らせることができた。
――――キーンコーンカーンコーン
そうして過ぎた時間を知らせるべく響いたチャイム音につられて目に映ったのは、昼休み開始の時間を示す時計。もうそんな時間だったのかと筆記用具をしまい背伸びをすると向かいの彼はそそくさと帰り支度をしていた。
「じゃあまたサボりにくるわ。ここだいぶ快適だし」
「お昼食べないんですか?」
「センコーに絡まれると面倒だから」
私の返答を待たず「じゃ、またな」と短く言葉を放ち彼は足速にこの部屋を後にしてしまった。遠ざかっていく足音から考えておそらく向かったのは裏門方面。正門と比べて人通りが少ないから本当に教師陣と顔を合わせたくないんだと思う。なんて、勝手に詮索するのもよくないか。
一人のお昼なんて今まで何度も過ごしてきたのに、一度優しい人の暖かさに触れてしまうと存外寂しくなってしまうもので今日のお弁当はやけにしょっぱく思えた。
「“また”……か」
もう一度会えるのかなんて思うと、尚更に。
『ねぇ〜なんかまたジロジロこっち見てたよねアイツ』
『それな。ワンチャンあるかもとか思ってんのかな』
『うーわ無理すぎ。さっさと脈ナシって自覚してほしいわ』
いや、私なんか「サボり中に鉢合わせた生徒」にしか思われていない。扉の外から聞こえる女子生徒たちの声で現実に引き戻された。こんな自分とクラスのカースト上位に思える不良生徒の彼、話せたことが奇跡なくらいに釣り合っていないから。また彼が来たとしてもこの気持ちは秘めておこう。舞い上がらないように。
恋心なんかに、浮かれないように。
そう決意して日々を過ごしていった数日後。いつも通りの時間に私がボッチ部屋へ向かうと、この前とは打って変わって生気の失せている彼がいた。髪の色も相まってか、萎れた花のようになっている。
「――――という感じなんだが、いいか?」
「はい」
そんな彼の眼前に居座っているのは熱血教師として名高い初老の男性教員。若人の教育にかけるその情熱っぷりは目を見張るものがあるけれど、それゆえ空回りして生徒の半数からは嫌われている。そして私も、その半数の一人。
「今まで通りのペースで提出してくれればいいから。ああ、それとだな。男の化粧は良く思われないからな。髪も服飾品も、少しは抑えるように。いつも忠告してやってるんだから、少しくらいは聞く耳持てよ?」
「分かり、ました」
「お前の将来を思って言ってやっているんだからな」
熱血教師を前にした彼は逆らえないとでもいうように、「弱々しい」の言葉が似合ってしまう様になっていた。教師に絡まれると面倒、と彼が呟いた理由が微かに分かった気がする。
「じゃあ俺はこれで――――ああお前、使うのか」
「はい」
何事もなかったかのように扉を引き、私に一言呟いたあとでその男性教員はこの部屋を後にした。男性教員の言っていることは的を射ているし、男性が化粧をする文化が広まっていないのも事実。けれど私には彼の個性を否定しているように聞こえて、それが嫌で、睨むように言葉を返した。
「聞いてた?」
そして遠ざかっていく背中さえも睨んでいたらしい私を引き戻すように、彼の声は真っ直ぐ響いた。慌ててその声がした方へ視線をやると、苦虫を噛み潰したような顔のまま彼も私を見つめている。
「途中から、ですけど。入るタイミングを伺っていたら結局先生が出られるまで動けなくて」
「嫌なとこ聞かせたな、ごめん」
「勝手に聞き続けたこっちが悪いですから。それに、あなた自身は何も悪くなんてないと思いますよ」
彼のキョトンとした顔を見て一瞬、他人のくせに出しゃばりすぎたかと思った。けれど私の話を待ってくれている様子から言葉を再開する。ここまで自分の意見を伝えたのなんていつぶりだろうと、考えながら。
「この高校、頭髪とかアクセサリーに関する校則ないじゃないですか。制服の着方もあんまりに酷い着崩しでないなら指導しないって」
「まあ、確かに」
「だからあの先生、個人の主観をあなたにぶつけているだけなんですよ。その癖自分が不利になる状況になったら“多様性”って言葉を盾にして掌を返すような……いけすかない教師です」
彼を励ます人になりたかったのに、ただ愚痴をぶつくさ話す人になってしまったなと自分の表情も彼みたく苦いものになっていく。でも言いたいことは言えたかと生暖かいその椅子に腰掛けて、若干の気まずさを抱えながら正面の彼へ視線を移すと。
「……くふふっ」
堪えるように、彼は笑っていた。
「なぁ、名前なんていうの?」
「名前ですか?」
「こんな不良相手の味方についてくれる人、覚えておきたいじゃん」
きっとまた会うことにもなるだろうし、と付け加えて彼はさらに口角をあげる。名前を尋ねるならまずは自分から名乗れ、なんて言葉が浮かんだけれど、その笑顔につられてしまい気づいた時にはもう音を発していた。
「
「アキな。俺は
「二年生?」
「おう」
学年一緒、の言葉につられて事実か確かめるべく彼の上靴を見ると、それに刻まれていたラインは確かに私の学年色と同じ青色。どこか大人びている雰囲気を纏っているが故に三年生だろうと思っていたのだが。そんな意外な事実に驚いていると彼がまた言葉を紡いだ。
「ついでに敬語もナシな。距離感じて話しにくいから」
「……うん、分かった」
「ははっ。よろしくな、アキ」
ぎこちない自己紹介の後、私は彼……澪と、この間のように時間を過ごしていった。けれどその時とは少し違くて、それは流石に一日に二回も話には来ないだろうと男性教員の動きを読んだ彼とともに昼食をとり、時々駄弁りながら午後の課題を進めたこと。そしてそんな時の中で、澪はお洒落と小説が好きであること、大人数の環境が嫌いでよくサボっていることを知った。
「アキは、なんでいじめられるようになったの」
今は反対に、私が質問される番。予想はしていたけれど、やっぱりか。
「気になる?」
「ただの傍観者でいたくないから」
質問の内容は想像通りだった。でも、聞いた動機は意外だった。私がいじめられている瞬間を偶然目撃していて、そこからの興味だけで聞いてきたのだと思っていたから。話したからといって何かをしてくれるかなんて分からない。むしろ第三者に振り撒くかもしれない。一種の賭けだと分かっているけれど、でも、彼には言いたい。
過ぎ去った春のように暖かい、初恋の相手には。
「小さい頃からずっとオシャレやメイクが好きで、それへの興味は成長していっても消えることはなかったの」
今でも鮮明に覚えている、好きなインフルエンサーの真似をしたメイクで入学式に臨んだ一年前の春の日。両親には苦笑いされたけど、せっかくの新天地だからとより入念に準備をして春の暖かい陽気のもと学校に向かったのだ。式の最中もその後のホームルームでもメイクが上手い人を目で追って仲良くなれたらいいなと心を躍らせた。しかし、その約一ヶ月後のこと。
「嫌で嫌で詳細は忘れたけど、きっかけは本当に些細なものだったと思う。きっと人をいじめて鬱憤を晴らさなきゃやっていけない人たちの気まぐれだったんだろうね――――自分の、化粧品をさ、全部粉々にして遊ばれたんだ」
「何、それ」
「藤城暁って存在が、ターゲットに丁度良かっただけだよ」
自分でも、よく平気で語れるなと思う。一番情熱を注いだ大好きなものを一瞬にして壊された思い出だというのに。
「担任は助けてくれなかったの」
「あの教師だし」
続けられた質問に私は視線を職員室の方向に向けて呟いた。先ほどの熱血教師が歩いていった、方向に。
「……酷ぇ話だな。あのセンコーのこと愚痴ってたのもそういうことか」
私の一言と動かした視線から澪は全てを汲んでくれたらしく、呆れたようにこちらを見つめた。そう、あの熱血教師という存在は先ほどの澪に対しての態度からもわかるように、どのような状況でも「自分なりの正解」を「社会の正解」と捉えてぶつけてくるのだ。
私がいじめられていることを告げた日、あの教師はいとも簡単にその一言を口にした。絶対に忘れない、忘れてやらない一言。
「いじめられるようなことをしたお前が悪いんだろう?――――って」
喉に抑えていた、「助けて」の一言が一瞬にして打ち砕かれた。あまりに冷酷な言葉を放ってきたその男の顔は、ただなんてことない言葉を呟いたという表情をしていて、ただ、私は。
「やっぱりそうですよね。って言うことしかできなくて」
「……」
「これが現実かって、諦めて」
いじめというものは、された側は一生忘れる事ができないというのに、した側は冗談の延長だったなんて呟いて、何事もなかったかのように毎日を過ごしていく。だからタチが悪くて、許せない。男性教員の一言も、きっとそれと同じだ。
「それで」
「……っごめん。もう話さなくていいよ」
過去を振り返り再度言葉を紡ごうとした私を、苦し紛れとでもいうような表情で澪が遮った。まだ話せることは、あるというのに。
「なんで?」
「だってアキ、泣いてるから」
「え」
そんなに辛い顔させてまで話してもらうつもりじゃなかったと、澪が焦ったようにこちらを覗いている。その光景が僅かにぼやけていて、表情はうまく読み取れない。そしてその光景を見てようやく澪の言葉の意味を理解できた。
「……他人の俺が言うことじゃないかも知んないけどさ、アキは凄ぇよ。そんな辛い事があったのにこうやって学校来て」
「教室には全然行けてないよ?」
「俺だったら学校自体来てねぇって。アキは凄ぇの、本当に」
頬を伝っていく涙の感触を覚えながら真っ直ぐな眼差しを向ける彼を見つめる。私を馬鹿にしない生徒が居てくれるのだと思い、胸のつかえがほぐれていく気がした。
「なぁアキ、顔貸して」
「?」
そうして安堵した私に、澪は優しく呟いた。促されるままに正面へ頭を動かすと顎に彼の手が添えられて、その顔も私に近づいてくる。先ほどと変わらない真っ直ぐな視線から目が離せなくなっていると、不意に涙が拭われた後に、唇に何かが触れた。その感触を辿ると小さな筒を持ちながら手を動かす彼が見えて。
「……口紅?」
「おう。これで見てみ、似合ってるから」
塗り終えたらしく私から離れた澪に呟き、その返答とともに渡された手鏡を恐る恐る覗くと。
「……っ!」
淡い紅色に彩られた唇の、ずっと心の奥にしまい込んでいた、理想の私が居た。
「この口紅、アキにあげるよ」
「え!? いや、いいよこんな高そうなもの……」
「もともとオマケで付いてきたやつなの。俺が使いやすい色味じゃないしさ、本当はずっとメイクしたかったんだろ?」
「……それは」
「ではお受け取りく〜ださい」
澪が発した一言に驚き断るも、使わず終いよりよっぽど良いからと押し切られ結局私はその口紅を受け取ってしまった。もう涙の消えた瞳に映る久々の化粧品は窓に映る夏の夕暮れよりももっとずっと輝いていて「なりたい私」になるための一歩が、前に進んだ気がした。
◆
澪に過去の話を打ち明け、出会って間もないくせに泣き顔を晒し口紅まで貰ってしまったあの日から日数は経ち、十分に秋といえる季節になった。そしてその出来事以来、毎日をボッチ部屋で過ごすようになった澪から少しづつ化粧を教わり私は「なりたい私」を徐々に取り戻していった。本当に澪には感謝してもしきれない……なんてまだ澪が来ておらず一人きりなこの部屋で思い耽っていると。
――――コンコン
澪が来た? いや、彼がドアをノックして教室に入ってきたことはないな。そうなると……教師陣のうちの誰かが来たのか。今日は化粧をしていて、それを落とす間もないから小言を言われそうで気が沈む。
「失礼しまーす。藤城〜?居る〜?」
「……へ!? っはい!」
そうやってノックされた音にうんざりしかけたものの、聞こえた声に心が躍った。返事の声が裏返ったような気がして恥ずかしくなるけれど、関係ない。だって。
「三品先生、どうされたんですか」
私の、恩師が来てくれたのだから。
「特に用もないんだけどさ、藤城ここで何してんのかなーって。ほら、藤城全然
「……すみません」
「あー謝んないで謝んないで!事情はちゃんとわかってるからさ」
三品先生は去年赴任してきたばかりの若い女性教員。そして一年前当時の生気を失っていた私に寄り添ってくれた、命の恩人だ。今年はその様々な事情を汲んで担任になってくれている。
「いやーにしても」
「?」
「校長に掛け合ってここ使わせてもらったの正解だったね。あんなに荒れてたのに整理整頓されて生き返ってるし」
二脚のうち空いている一脚に腰掛け、室内を見回しながら三品先生は呟く。彼女のいう通り、「いじめられっ子の避難所」として使わせてもらえる事になった一年前のこの部屋は物置にしか思えないほどに荒れていた。
「二人で片付けたの、懐かしいですね」
当時は担任を持っておらず、私に時間を割ける余裕があった先生と二人で荒れに荒れたこの部屋を一生懸命整えたのだ。そしてその間、私は先生に少しずつ自分の境遇を話していった。些細な事がきっかけでいじめられるようになったこと、あの男性教員に寄り添って貰えなかったこと、それでも少しは抗ったこと。晩夏から中秋を跨ぐ半月という期間の中で、私は辛い四ヶ月の記録を語った。
「本当懐かしいよ。あーでも、私片付け苦手だから余計手こずらせちゃってたよね」
「あの時は誰かと話しながら何かをするのが久々でしたから。凄く楽しかったですよ」
「そーお? じゃあ良かった」
三品先生の笑顔は周りを照らす眩しさがある。そして私は、その太陽のような笑顔に救われたのだ。居場所のない事実に堪えることができなかった涙を流したまま帰ろうとした私を引き留め、何の見返りもなく話を聞いてくれた暑さの厳しい日。自分の所持品が汚れることも厭わずにハンカチまで貸してくれて。そうしてその後に、こうして居場所までもを作ってくれたのだ。
「あそうだ。特に用はないと言ったんだけどさ、良かったらこれやってみない?」
「……?」
あの日と変わらぬ優しい笑顔に見惚れていた私をよそに、先生は一枚のプリントを机に置いた。よく見るモノクロコピーのその紙には「作文コンクール出品作品募集」という題が刻まれている。
「作文、ですか」
「そうそう。藤城文章読むの好きじゃん? ワンチャン書くのも興味あるかなぁと思って持ってきたんだけど」
題が記された欄の下には出品規定やら期日やらが記されており、太字で強調されている箇所には。
「今年のテーマは『繋がり』で、それに基づいた体験を作文に書き起こすんだって。藤城は良い意味でも悪い意味でも多くのことを経験しているから、目立つ作品をかけるんじゃないかなって思うの」
「目立つ、作品……?」
「うん。まぁ実際審査員の目に留まっても留まらなくても、書くこと自体に大きな意味が生まれるんじゃないかなって私は思ってる。自分の気持ちを文章に起こして語るのは、結構楽しいよ?」
「――――っ」
キーンコーンカーンコーン
返答を紡ごうとした瞬間、無情にもチャイムに遮られてしまった。音に驚いた反動で考えていた言葉も忘れてしまい、何も話せない口がただパクパクと動いている。
「あ、やだ私次の時間授業あるじゃん。教室向かわないといけないから、ここら辺で失礼するね」
「っはい!」
三品先生はせっせと椅子をしまい、扉の方に歩いていってしまった。わざわざ来て頂いてありがとうございますとか、また沢山お話ししましょうとか、言いたい言葉は浮かんでくるのに上手く音になってくれない。そうやって、何も言い出せぬまま外へ出ていく先生を見つめていると。
「藤城、今日のメイクめっちゃ似合ってるよ」
「……!」
見てくれていたんだ。
「ありがとう、ございます」
「うん。それじゃあね」
廊下へと消えていく柔らかな黒髪を見つめながら、反射的にではあるものの言葉を発する事ができた自分に安堵していた。そして少しずつ自分らしくなっていく私を先生はしっかりと見てくれていたんだと知って、ちょっとは元気になれたんだと伝わっていたらいいなとも思った。
「失礼しまーす」
「こんにちは、澪」
「ど〜も〜」
先生と会話をしたその約一時間後、昼休みの時間帯に案の定ノックはせず澪が教室に入ってきた。彼の持っている通学カバンに目をやると今から食べるらしいコンビニのサンドイッチが顔を出している。
「澪はお昼ご飯これから?」
「おう。アキは流石に食った?」
「うん。やっぱりお腹すいちゃって」
こんなに何気ない会話すらも一年前の私はすることができなかった。そんな目の前にある幸せを噛み締めていると、ふと疑問が浮かんで、躊躇う前にそれは口から出てしまった。
「澪って、他の人とご飯食べたりしないの?」
「アキ以外に友達って呼べるやついねぇし」
「え!?」
思いもしなかった事実に驚いて瞬きする私に、そんなに驚くかと澪が笑いかけてきた。いや驚くでしょうよ。いくらサボり魔とはいえこんなに煌びやか格好をしているカースト上位にしか思えない生徒なのだから……ああでも、そっか。
「大人数苦手、なんだっけ」
「そー。周りに合わせるのとか無理に自分を作るのが嫌になってさ。そしたらアキ以外の友達なんて生まれなかった訳」
当たり前のことだよな、なんて呟きつつ彼はもぐもぐとサンドイッチを頬張った。以前、澪は自身のことを「こんな格好の不良」なんて言っていたけれど、何事も所作が綺麗で姿勢の崩し方すらどこか優等生を思わせる節がある。盗み聞きをしてしまったあの男性教師との会話にはしっかりと課題をこなしているように聞こえる場面もあったし、澪はなんだか「不良らしくない不良」に見える。
「アキ、今日の放課後よかったら一緒にコスメ買いに行かない?」
そう最近思うようになったことを反芻していると、しっかりと口元を手で隠した澪がモゴモゴと私に問いかけてきた。
「良いけど……どうして急に?」
「アキに似合いそうなヤツ見っけたの。本人の反応見たくてさ」
「ふふ、わかった。楽しみにしてる」
この部屋で毎日を過ごして来たものの、澪と二人で出かける約束なんて初めてで、誘いを受けた瞬間に心が踊った。だって二人で出かけるなんて、まるで、デートみたいじゃないか。
澪からの誘いを承諾した後、私は今日までの提出物があることを思い出してその課題を提出しに行った。そして無事に渡すべきものを渡して、きっと気が緩んでいたのだと思う。後に待っている約束に、浮かれていたせいで。だから。
「藤城、お前……」
「っ!」
目の前の男性教員に、気が付かなかった。
「また化粧をしだしたっていうのか? 前に言っただろう、化粧をしたお前を気色悪がってあいつらがいじめをしたんじゃないのかって」
思い出したくなかった。思い出されてしまった記憶。いじめをされているんですと話した一年前の夏の日、この男はいじめっ子たちの非を認めずに私に全ての非を持たせた。確かに全ていじめっ子たちが悪いわけではないかもしれない。でも、人の大切なものを壊したというのに、あの生徒たちは何も悪くないと言うの?
「この前に見かけた時は全く化粧っ気がなかったから安心していたと言うのになぁ。全く、どうしてわざわざお前のような生徒が」
――――男が、化粧をするんだ?
今の場面で。私にとって。一番言われたくない言葉。この男は人の表情や空気が読めないのか、むしろ敢えて読んでいないのか。あまりに無責任な発言に呆れる。
「もう一度いじめられるなんてしたくないだろう」
「……それは」
この顔面に叫んでやりたい言葉がいくらでもあるのに、大人の圧に封じ込まれて動けない。やっぱり、私って弱いままなんだな。そう、自分を卑下したけれど。
「今すぐ化粧はやめた方がいい。朝霧のような孤立した人間になる前にな」
「……は?」
その男から澪の名前が出された瞬間。ずっと私の中を渦巻いていた思いが一気に怒りの熱を持ち出した。確かに澪は一匹狼なところがあって私以外の友人はいない。けれどそれは澪が自身で選んだ答えであって、化粧をする男子生徒だったから孤立した訳じゃない。彼が選んだ道と外野の勝手な偏見を、結びつけるなよ。
「……っ」
大切な人のことを罵倒されたというのに、このまま動くことができないなんて嫌に決まってる。ここでまた思うだけの自分になってしまったら、もう一生立ち向かっていくことができない気がしたから。
「あの男はなぁ何度も注意してやったって言うのに聞く耳を持たなくて……」
――――うるッせェんだよ、クソ野郎!!!!!
「っな!?」
燃え上がる意志に押されて、自身のものと思えない怒号が狭く長い廊下を響き揺らした。
『え、なになに』
『あんな可愛い生徒うちにいたっけ。キレててめちゃ怖いけど』
『声的に男じゃないの? てかアレあのジジィ教師じゃん』
『地雷踏んだ的な? ヤ〜バ』
『他の先生に伝える?』
『いや怖すぎて動けないって……』
『なんかバズるかも知んねーし動画撮る?』
『拡散したらワンチャンあの教師飛ばせんじゃね』
男性教員も、過ぎゆく生徒たちも、皆が私を見ている。けど、もう関係ない。抱えてきた葛藤が生んだ原動力はとどまることを知らず、私が私でいたいその想いにただ真っ直ぐに蠢いているから。
「人の“
「うぐっ……」
「化粧をした男が気持ち悪いって? まぁ分かりますよその気持ちも。あなたが青春を過ごした時代にこんな女々しい存在は白々しい目で見られていたんでしょうから。でもそんなあなたのただの主観を、私に、澪に、押し付けないでください!!!」
その原動力に動かされた手は、正面の男の胸ぐらを掴んでいた。溢れ出した思いによって変貌した私を映すその瞳は、今までに見てきた卑劣なものなどではなくただ目の前の生徒に怯える黒い円で、この人間にも恐怖はあるのだと僅かに冷静になった、けれど。
――――ドン
「え」
体に衝撃が走って、宿った冷静さも虚しくその衝撃が思考を占拠した。私は何もしていないというのに、体が頭から倒れていく。胸ぐらを掴んでいた手もいつの間にか離れていて、正面を見ようとするもついに足の踏ん張りさえ効かなくなり。
「……っ!」
私は、受け身を取ることさえできずにその場に倒れ込んだ。そして床に当たった衝撃で失っていく意識の中で向こうが暴力で無理矢理解決しようとしてきたことを悟り、悔しさと共に私は暗闇に引きずり込まれていった。
『……え、生徒突き飛ばした?』
『あの子意識失ってない……?』
『これヤバい映像だろ。教育委員会とかに渡すか』
『お前映像より倒された生徒本人心配しろよ』
『保健室、連れて行かないとまずいよね』
『運ぶ人とかって』
『すいません、俺運びます』
『あのジジィ、自分が突き飛ばしたってのになんもしないの』
『自力で起きるの待ってるとかだったら……存在が怖すぎるんだけど』
『アキ、姫抱っこすんの許してな』
『朝霧』
『……ふざけんなよ、クソジジィ。俺に言ってきたことは水に流してやるにしても、今回のことは絶対許さねぇ。遠くから動画撮ってた生徒の映像が立派な証拠になるからな。体格差ある相手……それも生徒を突き飛ばしたりしやがって。教壇に戻りてぇって言うなら、勘違いだらけ暴力だらけの熱血キャラを捨ててからにしろよ』
『……ッ!!!』
『それじゃ』
――――アキ。結局ただの傍観者にしかなれなくて、ごめん。
「……ん」
緩やかに明転した視界に飛び込んだのは白く殺風景な天井と、淡い暖色のカーテン。次に身にかかる布の重みと枕の感触を脳が処理したところでようやく自身が保健室に運ばれたのだと理解できた。
「……アキ!!!」
「?」
突如降ってきた声に反応し、聞こえてきた方向へ顔を向けた。まだ完璧に働いていない脳でも、その声の主はすぐに分かったから。
「澪?」
「頭、痛くないか」
見た事のない慌てっぷりで椅子から立ち上がった彼は、ずい、とこちらに身を近づけて私の顔を凝視し始めた。
「痛いは痛いけど……そこまでしんどくないし、寝てれば大丈夫」
「そっか……良かった」
私の返答に対してこれまた大袈裟にも見える安堵の表情を浮かべた。けれど私は一つの疑問が浮かんで、椅子に腰掛け直した澪に尋ねた。
「澪、なんでここにいるの?」
「ああ……教員に突き飛ばされた後のアキを、俺が運んだから」
「そうだったんだ。ありがとうね」
感謝の言葉を述べたのに、澪の表情はまだ影が見えている。どうかしたのだろうかと彼の様子を伺っていると。
「ごめん。アキ」
突然、澪が頭を下げてきた。
「俺、アキがあの教員に叫んだ瞬間見てて。それで、もう少し俺が早く動いていたらアキは突き飛ばされずに済んだかもしれなかったのに……ただの傍観者でいたくないって、言ったのにさ」
「澪」
言葉を続けようとする彼を遮って、私は名前を呼んだ。顔を床に向け続けているその姿からでも、今の澪に起こっていることがはっきりと分かったから。
「顔あげて。泣かなくていいよ?」
「……っ。うっ、うぅ……」
ただ数ヶ月を同じ部屋で過ごしてきただけの存在だというのに、澪は私を思って泣いてくれている。それが不謹慎ながらに嬉しくて、私は呟いた。
「ちょっと仲が良いだけの他人に、泣いてくれてありがとうね」
「他人なんかじゃ無いよ」
「――――アキは、俺の救世主」
その言葉の意味を理解できず、呆けたまま澪に視線を送ると。
「一年生の時、俺とアキ同じクラスだったんだぜ?」
「……え」
「見た目がすげぇ変わったから、やっぱ忘れてるよな」
流す涙を拭いつつ、私に見えないものを全て見ている顔つきで澪は私に笑いかけてくる。同じクラス? 見た目が変わっているから忘れた? もう頭は冴え切っているのにずっと思考が絡んでいく。
「ぽっちゃりした体型のビン底眼鏡かけた地味な男子生徒、記憶にない?」
言葉に戸惑い続ける私を察してか、澪は私に思考を解いていくヒントをくれた。しっかりと教室にいた時間はごく僅かで、あまり生徒たちの顔は覚えられていないけれど。
「窓辺の席の――――自分より前に、いじめられていた子?」
一人だけ、鮮明に思い出せる人物がいた。
「うん。正解」
そう言って穏やかに、申し訳なさそうに微笑む彼はまるで「思い出せた?」とでも私に語りかけているようだった。ああ、思い出したよ。入学して早々にも関わらず中学時代からの同級生たちに嫌がらせを受けていた男子生徒が居て、私がそれを止めたのだ。それで今までいじめてきた存在が庇われるようになったことと私が可愛らしい化粧をした男子であったことが重なって、いじめのターゲットが私に移った。嫌で嫌で忘れたいじめの詳細……それが、澪につながっていたんだ。
「あの時の、男の子だったんだね」
思い返してみれば“今の姿の”澪にボッチ部屋で初めて会った日、澪はサラッと私がいじめられている事を口にしていた。私がいじめられていたのは教室の中でだけで、他クラスの生徒であれば気づく隙もなかったというのに……節穴だったな。
「ずっと謝りたいと思ってたんだ。けどもう一度いじめられることが怖かった俺は結局不登校になっちまって、タイミング逃して。それで」
「資料室でばったり会ってからも、気まずかった?」
「……ごめん」
先ほどの微笑みは無理した作り笑いだったのか、澪はまた翳りに翳った表情をしてしまった。確かにいじめられた思い出は決して良いものではないし、心に負った傷は一生癒えることはない。けれど。
「澪が笑顔で今を生きられるなら、身代わりになって良かったよ」
「っ!」
嘘偽りのない笑みで澪に笑いかけ、私はあの日の男子生徒がこうして今を生きている事をただ純粋に喜んだ。
「言ってくれて、ありがとうね」
感謝の言葉を呟きつつ、私は澪が不良らしくない不良である所以が僅かに分かった気がした。所作が綺麗なのも課題をしっかりとこなしているのも、元は彼が優等生で自身の行動に気を遣う癖が抜けていないから。他者に真剣に寄り添おうとするのも、経験してきたの過去があるから……ただ、そうなると。
「澪はどうして、今の格好をするようになったの?」
この理由だけはわからなくて、私は質問をした。
「ああ、これは」
「これは?」
「……アキに、憧れて」
「……え!? って……あいだだだ!」
まさかの返答に驚いて飛び起きそうになるも、動くんじゃないと伝えるかのように激しい頭痛が襲ってきた。
「大丈夫か!?」
「ごめんごめん、ちゃんと安静にしてないとね」
そんな私を心配そうに覗く顔も、ふわりと揺れる長めの派手髪も、私があの日助けた澪とは全く違う姿。そして澪がこんなにも変わった理由が、私?
「……自分の好きを貫いて過ごすアキが凄いカッコいいなと思って。不登校になってた間に飯あんまり食えなくなって体重がだいぶ落ちてさ、それを機にアキみたく変わろうとしたんだ。特に髪の色なんて、アキの影響受けまくってるよ」
澪の過去に触れて感傷に浸りつつ、髪の色の部分がやはり心に引っかかった。私は今も昔も特に染めていない黒髪なのだが、彼の髪色はあのボッチ部屋で出会った時から変わらず眩しく淡い、藤のような、色をしている。
「まさか」
「藤城の藤、憧れの人の色にずっと染めてた」
あの日見た輝くばかりの色が、私の名前から来ていたなんて。理由を聞いてしまえばこんなにも分かりやすかったのに、と思っていると。
「いや、憧れだけじゃないな」
「?」
「アキのこと、ずっと好きだった。こんな俺だけど、男だけど……付き合ってくれませんか!」
「……ふふっ!」
返事がはいでもいいえでもなかったせいで驚く彼を見て、更に笑いが込み上げてきてしまった。私の憧れの人、初恋の人からまさか告白をされたというのにどうしても笑ってしまう。だって。
「ベッドに横たわってる時に告白されたら、嬉しいよりも面白いが勝っちゃうよ」
「……あ」
やらかした、いつも感情豊かな澪だけど今彼が浮かべている表情は思っていることが筒抜けなくらいにあからさまなものだった。視線を泳がせて赤らんでいく彼はほんの少し、可愛く見える。けれどそんな仕草を見たからには、私が抱えていた想いもより大きくなっていった。
「……面白いが勝っちゃうけど、でも。私も澪が好きだよ。こっちこそこんな男でいいの?」
「本当に?」
「こんなところで嘘つかないよ」
カーテンで仕切られた保健室のベッドスペース。そこにとこたわっている最中に私はあまりにも面白い告白を受けた。教師に突き飛ばされて頭を打ったせいで放課後に約束していた買い物は無くなってしまったけれど、私は今、片思いが実った幸せな時間を過ごしている。
◆
澪からのなんとも奇妙な告白を受け、後に医師に診察してもらった甲斐あってか少しずつ頭の痛みも引いてきた一週間後。私は付き合った記念に一つお願いをしても良いかなといつものボッチ部屋で澪に問いかけた。
「俺に出来そうなことなら。一年前に庇ってもらったお礼もそれらしいことができてないし」
「ふふ。それじゃあ早速」
「……原稿用紙?」
そう。机上に置いたものを見ての通り、私が澪にお願いをしたかったのは以前三品先生から話を貰っていた作文に関わること。
「作文コンクールに出品するんだけどね、私と澪の話を書いて提出しようかなって。それで澪にも見てもらいたいなと思ってさ」
呟いて澪に手渡したのは本番用ではないラフ書き用のもの。一度自身で完成させたものを小説が好きだという彼に添削してもらうことにしたのだ。そして澪の反応を待っていると意外にもあまり表情を変えず、しかもかなり速いスピードで読み進めていった。
「思ったこと、そのまんま伝えてもいい?」
読み終わったらしく紙を机に置き、澪がこちらに問いかけた。
「うん」
「ちゃんとまとまってるし、きっと俺たちのことを知らない人でも心動かされる人がいるよ。だからより細かいところを詰めたらもっと良くなると思って。例えば四枚目の……こことか。若干文章が冗長になってるからセリフか何かで区切るのが良いんじゃないか」
澪が指差してくれた箇所を目で追い、なるほどと相槌を打つ。一人で書いているだけでは分からない他者目線のアドバイスをそれも的確に澪は伝えてくれた。やはり見た目とのギャップは否めないけれど、読書好きは伊達じゃないんだな。
「あとは、これとか? 時々砕けた言葉を挟むと良いんじゃないかと思うし……」
「あーそっか。ってことは、こことかも……」
そうして、私は澪のアドバイスのもと作品を完成に近づけていった。ヤンキーのような格好をした元・優等生と自分らしくあることを決めた男子生徒、二人で進めていく執筆作業は昼休みから始めたのにも関わらず、結局終礼開始のチャイムがなるまで続いてしまった。
「凄く良くなったんじゃね」
「うん。諦めずにこだわってよかった」
「あーアキ、これ題名どうすんの」
題名か。本文を完成させることに重きを置きすぎて、澪に言われるまですっかり忘れてしまっていた。それを書くために空白にしていたスペースは沈みかけた夕陽に照らされて橙に輝いて、いて……あ。
「澪、これどうかな」
「……俺は、めっちゃいいと思う。元から考えてた?」
「ううん。外の夕陽見て、思いついた」
自分でもよくパッと思いついたと思う。けれどそれは確かに私たちを飾るに相応しい言葉で、その証拠に私も澪も朝焼けのように晴れた顔をしている。コンクールで賞を取れるかなんて分からない。でもきっと書いたことに意味が生まれるから。
題【黎明の色彩】
「そんじゃ、これで完成だな。よしよし、よく頑張りました」
「……ちょ、急に頭撫でないでよ!」
「いいじゃんいいじゃん恋人らしいことしようや」
「澪……っ!!!」
辛い過去を切り開いて鮮やかな未来の夜明けを望む物語とともに、これからの人生も歩んで行けたらいいな。
【黎明の色彩】 結原シオン @yu1_
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