第4話 デート?②

ショッピングモールの中を歩きながら、太郎は妙な緊張感に包まれている。


「可愛い服いっぱい!どのお店行く?」花子が目を輝かせる。


美咲も嬉しそうに頷く。「本当だね。どの店から見ていこうか?」


太郎は少し緊張気味に二人の後ろをついて歩く。突然、花子が立ち止まり、慌てた様子で言う。


「あ!ごめん、急に思い出しちゃった。お母さんに頼まれてた物、買い忘れちゃって...」


「え?大丈夫?」美咲が心配そうに尋ねる。


「うん、ごめんね。30分くらいで戻ってくるから、二人で先に見ていてくれない?」


花子はウインクしながら太郎に目配せし、足早に立ち去っていく。


「え?ちょ、花子...」太郎が慌てて声をかけるが、既に花子の姿は見えない。


突然二人きりになった太郎と美咲。気まずい空気が流れる。


「あの...」太郎が緊張した様子で切り出す。「じゃあ、どこか行きたいところある?」


「そうですね...」美咲が考え込む。「実は、本屋に寄りたかったんです。いいですか?」


「う、うん!もちろん」太郎は少し安堵しながら答える。


二人で本屋に向かう。店内に入ると、美咲は真剣な表情で本棚を眺め始める。


「何か探してるの?」太郎が尋ねる。


「はい、最近読んだ小説の続編なんです」美咲が答える。「『月光のささやき』って知ってますか?」


太郎は驚いて声を上げる。「え!?あの『月光のささやき』?」


「えっ、鳴海くんも知ってるの?」美咲が目を丸くする。


「ああ、読んだよ。すごく面白かった」太郎は興奮気味に答える。「まさか神崎も...」


「うん!」美咲の目が輝く。「私、あの作家のファンなんです。特に主人公の心理描写がよくて...」


「わかる!」太郎も思わず熱くなる。「あと、伏線の張り方も絶妙だよね」


二人は本の話で盛り上がり、気がつけば30分近く経っていた。


「あ、もうこんな時間...」美咲が驚く。「結城さん、戻ってきてるかな」


「そうだね、確認してみよう」


太郎がスマートフォンを取り出すと、花子から新しいメッセージが届いていた。


『ごめーん!まだ終わらなくて...二人で楽しんでて!』


(やっぱり...わざとなのか?)


太郎の頭の中で、様々な思いが駆け巡る。花子の行動、美咲との二人きり、思いがけない共通の趣味...。


「花子、まだみたいだ」太郎が少し戸惑いながら伝える。


「そうなんだ...」美咲も少し困ったような表情を見せる。


「あの...」太郎が勇気を振り絞って話し始める。「神崎、もしよかったら...」


その瞬間、後ろから声がする。


「お待たせ~!どうだった?」


振り返ると、満面の笑みを浮かべた花子が立っている。


「花子...」太郎は複雑な表情を浮かべる。


「えへへ」花子がいたずらっぽく笑う。「ごめんね、ちょっと用事が長引いちゃって」


美咲は安堵の表情を見せる。「大丈夫だよ。私たち、本の話で盛り上がってたから」


「へぇ~」花子が意味ありげな笑みを浮かべる。「二人とも意外と本好きなんだ?」


太郎は少し照れながら頷く。「ま、まあね...」


「じゃあ、せっかくだし、カフェでゆっくり本の話でもしない?」花子が提案する。


三人は楽しそうに歩き出す。太郎は少し複雑な表情を浮かべながらも、美咲との思いがけない共通点に心躍らせていた。


(なんだか色々あったけど...これはこれで楽しいかも)


太郎の心に、新しい何かが芽生え始めているようだった。

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