夢紡ぎ
@Pirotan40
序章
東京から遥か遠く離れたアマゾンの奥地には、文明の手が届かない場所に古代からの伝承を守り続ける部族が存在した。
その名は「シャウリ族」。
彼らは自然と共生し、精霊たちと共に暮らしてきた。
シャウリ族には「ウィリコ」を受け取る特別な力を受け取る者たちが存在した。
ウィリコとは、神々からのメッセージのことであり、部族のある一部の者たちの「夢」として発現した。
ウィリコは部族の未来を導く重要な指針となる。
この力を持つ者たちは、子供の頃から特別な訓練を受け、夢の中で神々の声を聞く術を学んでいた。
「見たか?」村の長老であるカナウは、自分と同じくウィリコを受け取る力を持つ若い女性、リナに声をかけた。
「はい、見ました」リナは少しうつむきながら答えた。
ウィリコを受け取る力を持つものは、みな同じ夜に似た夢を見る。
その夢の内容は何らかのメッセージ性を含んでおり、ウィリコを経験する内に通常の夢との区別が自然とつくようになる。
「ティポも見たそうだ。どう感じた?」カナウはリナに問いかける。
「最初の印象は不吉。何か部族に試練が襲い掛かるでしょう。ただ、その後は芽吹き。倒れた者の下から若い息吹が立ち上がり、さらに我らを発展させるでしょう」
「ウム」カナウは頷いた。
ウィリコが見せる夢の内容は個人差がある。
ヴィジョンの見え方、鮮明さ、記憶への定着度。
ただ、感じ取れるメッセージはみな同じ。
歓喜、怒り、悲しみ、愛、不安、憎悪など人間にもなじみ深い感情が多かった。
ウィリコの内容をより詳細に説明できる者ほど部族の中では敬われ、権力を得た。
複数人が同じ日に同じような夢を見るのだから、偽ることはできなかった。
カナウのウィリコでは、緑に生い茂っていた大きな木がたちまち枯れ倒壊してしまうが、その周りに4本の新木が現れ互いが競うように成長し、それぞれが大木を超える立派な大樹となった。
古き存在が倒れ、新しいものが現れる。
それは我が部族のことなのか、それとも別の何かなのかまではカナウは断定できなかったが、これまでのようにウィリコに従って部族を導いていくだけだ。
「部族の若者を集めるのだ」カナウはリコに指示した。
リコもウィリコを見ている。カナウの意図を確認する必要はなかった。
部族のものたちはカナウとリナの言葉に従い、新たな時代に向けての準備を始めた。
彼らはウィリコの力を信じ、神々からのメッセージに従って行動し、未来を切り拓く決意を新たにした。
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