第55話 嘘のつきかた

キンコンカンコーン。

チャイムが鳴った。

そして


カオルくん、職員室まで来なさい。


「遂にか」


「悪い人は呼び出し食らうからね?そのランクまでいったんだよ!」


「嬉しくはないな。」


「にしし。何聞かれるのかな?」


「ワクワクはしないな。してるのお前だけだぞ?」


職員室に入るとゴリゴリのマッチョが現れた。生徒指導のヤハタだ。

ヤハタは空きクラスに俺を連れていって話し出す。


「さっきキミのお父さんが来たけど。凄い剣幕で。」


「あ、その件なら大丈夫っす。解決したんで。」


「金がどうとか言ってたぞ?」


「それも金で解決したんで。大丈夫っす。」


「金で解決?どういうことだ?」


「あの親父が俺にしてきたことを言わない代わりに金で解決しました。」


「してきたこと………っていうのは?」


「金で買ったんで言えないっす。だから何も言えないっすよ。帰りますね。」


「ちょっと待ちたまえ。キミ、数週間前まで目立たない生徒だったよな?」


「そうっすね。自他共に認める空気でしたね。」


「この頃キミは授業には参加せずたまに出る程度。幼なじみのサキくんから助けてあげてくださいの声もかかってる。」


「チッ」


あの野郎。また余計なことを。


「助けられることがあるなら私たちが助け」


「大丈夫です。無いです。助けられるようなことは無いです。だからさような」


「待ってくれ。」


「何ですか?」


「キミが動きを始めた瞬間からこの学校で事件が勃発した…………カオルくん。キミ、関わってないよね?」


マッチョのその言葉に。


「関わってる訳ないでしょ。全部ヤンキーどもの仕業でしょ?俺にそんなこと出来る勇気はないですよ。では。」


息を吐くように嘘をついて教室を出た。

嘘をつくのにも嘘のつきかたも上手くなったな。俺。

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