第52話 縁切り

「カオル………何言って………」


「てめえは黙ってろ。喋るな。クソが!」


「カオル………」



「どうなんだよ?親父?お前が死ねば、お前の命と引き換えにリンが助かる。助かるんだよ。てめえにその覚悟があるか?あるならぶち殺してやるよ!どうすんだよ!」


「し、し、死にたくない………」


さっきの勢いは何処へやら死にたくないと小さな声で呟く親父。


「やっぱりそうだ。てめえはクソだ。口だけだ。何にも出来ねークソ野郎だ。」


果物ナイフを自分の首につけきりつける。

もう少し強く引っかけば死ねた。


「お前………」

「カオル!」


血をダラダラと流しながらカオルは言う。


「俺にはあんだよ。てめえと違う覚悟が!てめえと違って死ねるくらいの覚悟が!」


「………………」


親父がひいている。だが続ける。


「お前はただ俺をバカにしたくて的にしたくて言ってただけだろ?リン、リンって?リンを愛してた?ふざけんな!俺の方が愛してたんだよ!だから死ねる、殺せる、何でも出来る!てめえとは覚悟がちげーんだよ。」


「……………」


「縁切りだ。お前との縁はここで終わりだ。お前の虐待も言わずにいてやる。その代わり金を寄越せ。金を貰えれば俺はお前を糾弾しない。お前を何も言わない。だからさっさと金をおいてどっか行きやがれ!この偽善者が!」


「わ、分かった、分かった、分かったからもう止めてくれ。俺に危害を加えないでくれ!危害を、危害を、危害を………加えないで………助けて………」


「助けてほしいなら金だよ。金。お前はATMだよ。だからさっさと出して持ってこい!クソが!じゃねーとお前をここでぶち殺してリンを助けてやる。てめえの汚い身体と引き換えにリンを助けてやる。だから早く選べ!クソが!」


「金、金、金渡す!縁も切る!だから!殺さないで!殺さないで!すぐに行ってくるから!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る