第20話 やっていいこと、やったらダメなこと

冬のコンビニ。夜になると真っ暗で一気に寒くなる。そんなコンビニの端っこでココアを飲む男。


「今日は帰らないの?」


「別に帰っても意味ないしな。なら野宿でもいいか、って。」


人がいないこのコンビニは独り言を話していようと誰も気にしない。


「それよりさ。ニンゲン。1日でかなりクズになったんじゃない?」


「褒め言葉でいいのか」


「褒めてるよ。1日で悪行に対して抵抗が無くなったでしょ?」


「ガラス割った時からもう罪の意識はねーよ。」


「にしし!それに可愛い女のニンゲンにもあんな暴言吐いて!」


「口から出たのが本音だ。本音がクズだっただけだろ。」


「まぁ、そのクズのおかげでポイント。」


69ポイント。


「少し上がったね?」


「こんなんでも上がるんだな。」


「あまりにも言い過ぎ判定だったんじゃない?」


「へ~、意外と死神ってのも心あるんだな。」


「今のニンゲンの方が心無いかもよ?」


「うんなことない。」


「まぁ、徐々にね。」


ニヤニヤと笑う死神が何を企んでいるのか、それが俺にとって不利な事なのか何なのか、考えるだけ無駄だな。と感じた。別に不利な事でもポイントがたまればそれでいい。

妹が生き返ればそれで良かった。



「なぁ、死神。」


「なんだい。ニンゲン。」


「お前俺に取り憑くことって出来る訳?」


「出来るよ。」


「ちなみにその状態での悪行は?」


「ポイントにならないよ。」


「甘くないか。」


「にしし!けどいざって時は使えばいいよ。私たちはパートナーなんだから。助けはするよ?どんな助け方かは蓋を開けてからのお楽しみだけどね。」


「なるべく使わないようにするな。あと死神、」


「なぁに?」


「今未成年飲酒したらポイント上がるか?」


「ちょっとだけかな?」


「なら買うか。」


「買える?」


「大人びて見えるって言われるから大丈夫」



そう言ってコンビニに入りビールを手にする。店の人は欠伸をしたダラっとした金髪の若い男で、160円で~す、と言うだけで年齢確認すらしなかった。

初めて買った酒。初めて飲んだビール。

それは予想以上に不味かった。よく父はこれで神経をイカれさせてるな、と改めて父の壊れっぷりを感じた。


ポイントもきりよく70ポイントで止まった。



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