孤高な超絶美少女が居候にやってきました。

緩音

美少女が居候にやってきました。

 ピンポーン。と家のチャイムが鳴る。今日は来客の予定はないがどうしたのだろうか。読んでいた本をテーブルに置いてインターホンの画面で確認するとそこには一人の少女、いや美少女が映っていた。少女は大きな荷物を背中に背負っている。

「はい。」

 とりあえず返事をしてみるとその美少女は荷物を背負ったまま口を開いた。

「居候しに来ました。」

「なんで⁉」


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 私の名前は弓弦葉ゆづるは那月なつき、ちょっと勉強が得意で最近おしゃれに目覚めつつあるごく普通の高校1年生だ。今は学校近くのマンションの一室で一人暮らしをしている。

 

 朝登校してから荷物を机の中に入れていると教室の入り口の方が騒がしくなった。視線を向けるとそこには青みがかったロングヘアーをなびかせている少女が教室に入って来たところだった。

叢雲むらくもさんだ。」

「今日もお美しい。」

「綺麗.........」

 彼女はクラス中の視線を受けながら自分の席までまっすぐ歩いて席に着いた。


 彼女は叢雲むらくもすいさんだ。彼女は青みがかった黒いロングヘアーと深い青の瞳を持つ、まるでお人形さんみたいな子だ。

 人気がある彼女だがいつも近寄りがたい雰囲気を纏っていて学校で誰かと一緒に居るところを見たことはない。男子からモテるようだが告白してきた男子をすべて一言だけで断っているという噂女子ともなかなか話さないけど。それでも人気があるようで男女ともにお近づきになりたい人が多いようだ。

「叢雲さん今日も可愛いよな。」

「昨日も告白してきた男子を振ったらしいぜ。」

「まぁ高嶺過ぎてどっちかと言ったらアイドル的な感じがするよ。」

「間違いない。」

 クラス中の男子が叢雲さんの虜になっているがクラスの男子は叢雲さんが高嶺の花だと理解しているせいで告白に来る男子は他クラスか先輩がほとんどだ。

 話してみたい気もするが人と話すのが苦手な人なんだろうな。私の叢雲さんへのイメージはそれくらいだった。




「ただいま~。」

 家に帰ってきてドアを開けると蒸し暑い空気が流れてきた。もう夏も本格的に始まってきてエアコンが無いと厳しくなってきたので手を洗う前にエアコンを起動させておく。


(ご飯作る気力もわかない。)

 エアコンが効いてくる前にお弁当は洗ったが一度座ってしまうとやる気がなくなって来た。今日の献立はそぼろ丼の予定だったけど少し先送りにして今日はうどんでいいや。うんそうしよう。

 晩御飯も決まったのでお腹が空いてくるまで本を読んで時間を潰すことにした。最近は時間を持て余しているので学校の図書館で本を借りてくるのだ。

 

 本も終盤に入りかけたころ、ピンポーンとインターホンの音が部屋に響いた。

 今日は来客の予定もないけどどうしたのだろうかと本を置いて立ち上がって確認する。うちのマンションはエントランスのところでも鍵が必要なタイプでカメラが置かれているので家からでも確認ができる。

「はい。」

 返事をしながら画面を見るとそこにはリュックを背負っているうちの制服を着た少女が立っていた。顔は良く見えないが髪はロングなのはわかった。身長も少し小さめだ。

「どちら様ですか?」

 私がそう聞くと少女はきょろきょろと顔を動かしてカメラを見つけてカメラを見つめてきた。カメラ越しに目が合った。あれ?見覚えのある顔だ。

「もしかして叢雲さん?」

「はい。」

 返事が返って来た。叢雲さんの声を聞いたのは入学式の日の自己紹介以来だ。よく見ると髪も黒じゃなくて少し青みがかった紺色っぽい色だった。

「えーと、叢雲さん?私になにか用事?」

「連絡が行っていると思っていたのですが。」

「え、何も聞いてないけど。」

「そうでしたか。今日からこちらで居候させていただく叢雲 彗と申します。」

「へ?なんて?」

 居候って単語が聞こえたけど。幻聴かな。

「居候に来ました。」

 今度ははっきり聞こえた。

「ええええええええええええええええ。」



 とりあえず叢雲さんを部屋に上げた。叢雲さんはリュックだけだけじゃなくて両手にも大きな荷物を持っていた。叢雲さんは部屋に上がったあとも荷物を持ったまま立ち尽くしていた。

「えと.....荷物降ろせば?」

「ありがとうございます。」

 叢雲さんはその場に荷物を下ろして額を拭った。よく見ると汗をかいている。この暑さの中で荷物を担いでくるのは大変だっただろう。

「とりあえずシャワー浴びておいで。着替えは持ってる?」

 尋ねると叢雲さんは縦に頷いたのでお風呂場の場所を教えた。

「タオル積まれてるの使っていいからね。」

「.....ありがとうございます。」

 しばらくした後にリビングにシャワーの音が聞こえてきた。私はその間に夕食の準備をすることにした。手を抜くのはやめてしっかりそぼろ丼を作る。夜ご飯には少し早いけどお腹がすき始めてたからちょうどいい。


「シャワーいただきました。」

 いきなり横から声をかけられた。料理の音でドライヤーの音に気が付かなかったらしい。

「今ご飯作ってるからちょっと待っててね。」

「え、いや....」

「え、もしかしてお腹空いてない?」

「そういうわけでは......」

「じゃあ作っちゃうね。座ってて待ってて。」

 私はお茶碗にご飯をよそってから炒めたひき肉と玉子を盛り付けた。あとはサラダを作って冷やしておいたコーンスープを冷蔵庫から取り出した。

「お待たせ。」

 料理をダイニングテーブルに並べた。

「さ、食べよっか。」

「.........」

「叢雲さん?」

「食べれません。」

「え?」

 何かアレルギーとか苦手な食べ物があったのだろうか。

「なんで会ったばかりの私にこんなによくしてくれるのですか.......」

 叢雲さんはいきなり泣き出した。

「えっ、えっ。」

 どうしよう。泣かせちゃった。こんなことがばれたら学校中のファンからヘイトを買って指名手配になって学校中に私の顔写真が貼られるんだ。それで捕まったら拷問の後打ち首.......って違う違う。まずは叢雲さんをどうにかしないと。

「えっとその。いろいろ大変だよね。」

違う。私のバカ。慰めるの下手か。

「えっと、なにかあったの?」

「なんでもないです。ご飯ありがとうございます。いただきます。」

叢雲さんは手を合わせてからご飯を食べ始めた。まぁ話はご飯食べてからでいいか。あっ、美味しくできてる。スープもコクが出てて美味しい。

「ごちそうさまでした。」

「お粗末様です。」

少し早い夕飯を食べ終えた。さて話を聞こうかな。

「えっと。居候したいんだよね?」

「.....はい。」

「私何も聞いてないから事情聴いてもいい?」

叢雲さんはうつむいて黙ってしまった。うーむ聞き方が悪かったのだろうか。


『ピピピピ』

私のスマホに電話がかかって来た。お母さんからだ。

「もしもし?お母さん?」

「もしもし。ごめんねいきなり電話して。」

「大丈夫。それでどうしたの?」

「今そこに彗ちゃんいるでしょう?」

「なんで知ってるの?」

「私が伝えるのを忘れてたから。」

叢雲さんが連絡が行っているはずだと言っていたのはお母さんの連絡ミスだったのか。

「もっと事前に言ってよ。」

「ごめんね。でも追い返したりしてなくてよかったわ。」

「流石に事情ありげだったからね。」

「とりあえず彗ちゃんを半年くらい預かるからよろしくね。」

「雑過ぎない!?!?」

「あなたを信頼してるからよ。」

「とりま了解。」

「あ、彗ちゃんに変わってもらっていい?少し話したいことあるから。」

「はーい。」


「叢雲さん。変わってもらっていい?」

 叢雲さんにスマホを渡した。叢雲さんはしきりに感謝の言葉を述べていたけど何の内容かはさっぱりだった。


 

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