クソ神サイコロゲーを芸術スキルで逃げ切りたい男の話

べいくどもちょちょ

第1話 プロローグ

 自分で最近勘づいてきたことがある。、まず一つは、顔と声が可愛ければ男でも女でもどっちでも貪れるような気がしてきたこと。こほん、貪るはいけないな。堪能することができるかも知れないという事。


 二つ目は、そんな俺に春が来たんじゃないかという事。隣の席の神河かみかわさんと、最近良好な会話を築くことに成功しているのだ。自分からしゃべりかけているわけではなく、というか喋りかけられないから授業中の話し合いで頑張っていたところ、面白いねという評価をくださった。いやはや、なんとも身に余る光栄……


 そして三つ目。そんなクラス内でも可愛いほうの神河さんと仲良くなりかけて分かったことなのだが、俺は天邪鬼だということ。向こうが俺のこと好きなんじゃないかと思い出してから、若干の嫌悪感が募っている。我ながら身勝手な男だ。顔も平凡で、運動も人並みくらいにしかできない俺。得意なことと言えば将棋が若干できるほうだということと、授業を聴きながらしっかり落書きを仕上げることができる程度。



 おっと、語り過ぎてしまった。何が言いたいのかというと、俺の友達はそんなひねくれたやつが多いという事だ。






「おいっす天美。お前これやってみん?」


 突然だが、こいつは俺の友達の一人。サブカル好きの山下君だ。俺と同じく、皆が好いている物にとんでもない抵抗が生まれ、逆に皆が知らないような物をあほみたいに好む習性を持っている。そんな彼から飛び出した予想だにしない発言。



「これだよ。ダンジョンダイスワールド!今回ばかりは俺も認めざるを得ないようだ。間違いなく神ゲーだぜ。お前ならそういうと思うんだ」


「キモイわ。人の思考を先に予想してくんな」


「それプレゼントとかサプライズとか全否定してるからな?」



 ちなみに俺たちは高校二年生。理系クラスに足を進めてしまった愚かな生徒だ。自分でも後悔している。まぁ、クラスはばか楽しいんだけどさ。


 一年生の頃から同じクラスだった山下君とはこういった会話は日常茶飯事である。何しろこの子は先生の対応も二極化するくらい突拍子もないことする。授業中に資料集立ててパン食べた挙句、注意されたときについでにトイレに行く報告をしてそれからチャイムが鳴るまで帰ってこなかったことがある。もはや伝説。これのせいで英語教師の女から極度に嫌われている。自業自得だが、少々可哀そう。


「このゲームさ、TRPGなんだよ」


「なんだ、野生のパクリか」


「馬鹿野郎。TRPGがゲームとしてできるんだぜ?しかもオンラインでVRでMMOで世界がオープンと来た」


「なんだただの神ゲーか」



 TRPGとは、テーブルロールプレイングゲームの略であり、俺がこよなく愛するゲームの一つだ。最初にキャラメイクをして、誰かが作ったシナリオ(短編ゲームの中身みたいなもの)を用意して、そのシナリオをクリアするためにキャラを動かす。動かすと言っても画面無きテーブル上、行動は随時自分が宣言して、それが成功するかダイスを振って決める。


 シナリオを進めるにあたって一人がキーパー……ルール役となって、プレイする人たちを取り締まる。最高裁判所みたいなもんだ。この人がいう事は絶対。ゲームそのものと言ってもいい。そんなKPのもと、自由に行動して自由な方法でゲームをクリアして、その都度いろんなエンドを見ることができるため、オープンワールドで自由に行動したい!という方には、そこらのオープンワールドのゲームよりおすすめする。



「定価なんぼや。言うてみ?」


「ずばり7980円(税込み)だ」


「話をしよう」


「これは僕にとっては昨日のことだが、君にとっては明日の出来事だ」


「おう、明日買ってくるわ」


「まじか、初めてこの構文筋通ったんだが」



 とは言ってもどうしたものか……帰り道にビデオゲーム屋はあるのだが、俺の家庭は小遣いがない。何か儲け話はないものか……





 と考えながら迎えた帰りのホームルーム。


「昨日ワシパチンコ大勝ちしたんや」



「来たぜ儲け話!」


「どうした天美……金に困ってるんか」


「先生。俺のこの落書き買いませんか。将来億超えまっせ」


「ワシは将来には賭けない主義でな。はいこれ反省文の紙」


「辛辣ですねぇ先生!!」




 とまぁ、帰宅時間が遅くなり、放課後の教室。いまここに残っているのは努力の塊田中君と、堕落の天才俺。対照的な生徒像に、芸術評論家も賛美を送ることだろう。くそったれが。俺は、金が欲しいだけなんだ!


 と、1時間半かけて何を反省したらいいのか分かんない反省文を原稿用紙4枚書き上げて、時刻は午後7時半。部活やってそのまま逃げ帰ったろうかと思ったけど、担任に見つかったために一緒にさらに居残った。田中君がいたのは、彼が「先生がいる間、勉強しててもいいですか?」と頼んでいたからだ。



 あーもう、4月舐めちゃいかんぜよ。もうまっくらじゃねぇか。


「店開いてるかな。せめてキープしとかねーと」



 住みやすい街には毎回上位ランクインする癖に人口はあまり増えない挙句、俺の通学路はあまり人通りも多くないため、街灯があっても、道路全面を明るく照らしているわけではない。





「ちょ、やだ!やめてください!」



「おいおい、この道で、しかもこんな場所で叫んでも誰も来ねぇよ。周り見ろ。田んぼだけだろ?」



 おっしゃる通り、今自転車で通っている道は左手に公園、それ以外は散村のように田んぼが広がっているところに家がぽつんぽつんとある。なんでこんなところに公園があるかというと、家を建てようとした人が急遽取りやめて、余った土地に公園を立てたのがきっかけだ。豆知識どや。


 と、さっき聞こえてきた声の方に目を見やる。


「しまった、視力が悪かった」



「ちょっと、やめてくださいってば!!」


「へ、大人しくしてろよ。気持ちいからさ」



 皆さん。最低なこと言ってもいいですか。


「鑑賞してぇ……動画撮りてぇ……」


 皆凌辱物ってどう思う?俺はね。大歓迎。痛くないんならされる側でも大歓迎。いや、やっぱされるのは無理かも。


「ん?あの制服……うちの学校じゃん」


 状況が一変した。今日の反省文で俺は今学校に関係することならなんでも真面目にやってしまわないといけないという使命感が募っている。


「さて、正義のヒーロー……違うな。狡猾な一般人味を見せてやるとするか」



 さて、スマホのビデオ機能をつける。流石最新型だ、暗視性がえげつねぇ。おうおういいぞ、そのまま胸でも揉んでズボン下げろや。


 ちらりと女子生徒のお腹が見える。公衆トイレの中で男は片手で両手を塞いで、壁際に追い込んで結束バンドを縛り付けていく。よかった。田舎特有の外から見える公衆トイレだった。あれ、住んでる町田舎説出てきたんだが……


「さあ、見せろ、その汚い棒を出せや」



「もういやだぁ……おうちかえしてよぉ……」



「若干、若干罪悪感が……うぅ、これでもう証拠はそろってるよな。これ以上は俺の性癖か」


 筆箱から一番固いものをとりだす。そう、金属製定規二本だ。一本はアルミ製。もう一本はしなる演奏用だが、古い奴なのか角がとても鋭利なやつ。



 俺はそろりそろり近づく……え、


「え、え!?」



「うわっ誰だ!」


「きゃぁ!!不審者がもう一人!」



 女子生徒……神河さんじゃん。もうこれプロローグじゃん。助けてからぐいぐいくるやつじゃん。将来と現在露出している神河さんのお腹に鼻の下を伸ばしながら、冷静にたじろいで隙を見せた男に定規で攻撃する……前に必要事項をやっておく。



「ぐおぉぉあああぁぁああ!!!」


金的。金的金的。なんなら無いなったんじゃないか?いや、まだ痛がってるからだいじょぶそうだね。


「念のため……えい」


「あ”----!!」


「お、恐ろしい……」



 助けた側だけど引かれている気がする。


「てか、天美君!?び、びっくりしたよ。結構やるときはやるんだね」


 彼女はほっとしたような顔で俺にお礼を言ってくる。が、いまだに手は結束バンドで縛られている。しかもトイレの金具につながれているため、身動きが出来てない。


「そのー……これ、ほどいてくれない?その切れ味すごそうな定規で」


「俺さ、やるときはやる漢なんだよね」


「待って?字が違うってば!そういうことじゃないってば!」


「安心しな。ジャパニーズブラックジョークだ」


「私には恐怖でしかないんだけど!?」




 俺の愛用定規で一刀両断。まじで切れ味凄いなこれ。


「さっきはありがとう……?どうしたの?お腹なんかついてる?」


「いえ、私の視界がどうやらぼやけているようだ。気にするな」


「大丈夫?もしかして実は無理してたんじゃ!」



 男はちなみに警察に突き出した。俺がしばいて伸びていて、神河さんの証言と俺の目撃もあり、この辺に上がっていた不審者の特徴とも合致していたため、現行でそのまま逮捕された。あれ、俺もしかして犯罪者?動画消した方がいいのかな。PCの秘蔵ファイルに入れてからだけど。



「ごめんね!今日のことは絶対お礼するから。なんかできることがあったら言ってね!」



 やっぱりこれ俺が主人公のラブコメでも始まったんじゃねーの?この展開腐るほど見てきたんだけど。


「んーでも神河さんには申し訳ないし……」


「そこをなんとか!なんでもするからさ」


「え、今何でもって……」



「うん。私ができることなら全力でやるからさ!」




 健全な人なら、ここでごめん!お礼とかそういうの良いから!というのだろう。でも、ここで俺は毎回思っていたことが爆発する。


 もらえるときに貰わんでいつ何を得るんやと……関西出身の両親に育てられたからだろうか。俺も若干その気質がある。そこに加えて元来の天邪鬼ときた。


「じゃあ……」


「うん……」


「付き合ってよ」







「へ……へ?、え!!!???!?!?」








――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


プロローグを読んでくれた方に再度警告です。


このお話の主人公はとってもひねくれています。そして大体歪んでます。ともすれば悪役になりかねない男です。


犯罪ぎりぎりのこととかやったりしますが、リアルとはなんの関係もありませんので、許してください。


あと、基本思いついた時の衝動投稿なので、進むかどうかはきまぐれです。(多分明日は上げると思う)


二作品同時で書いてるので、よければもう一個の方もみてほしいです。


せっかく書いてるので私の各小説は世界線がすべて同じです。別々の場所で起こってるだけです。ですが、全部読まないと無理とかなじゃないです。繋がってるだけです。毎回新しいこと思いつくより作ったものを生かした方がやりやすいってだけです。


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